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「シノ!?シノ!?」
呼ばれる名前。痛みに、意識が無理矢理に覚醒する。熱が引いた身体、だけど、痛い。すごく痛い。
「落ち着け、ノア。契約の無いモンスターに癒しの神の祝福は届かない。」
「…テイムする。」
「…死ぬぞ?」
「このままでも死んじゃうからね。やらないより、マシ。」
「…」
あの人の声が聞こえる。助けに来てくれた?間に合った?ヒナちゃんは?
『…ヒナちゃん、ヒナちゃん、ヒナちゃん…』
聞こえない。返事が聞こえない。ああ、嫌だ。だめ、そんなのだめ。
「…ごめんね?苦しいとは思うけど、頑張ってみて?」
『っ!?』
(何!?イヤ!!)
突然、放り込まれた暗闇。
恐い恐い恐い恐い恐い。
(嫌だ嫌だ嫌だ!)
這い上がってくる恐怖。死ぬのも、熱いのも、痛いのも、恐かったけど。だけど、同じくらいもっと、恐いものがいる。暗闇の底、こちらを見ている何か。アイツだ。アレだ。前と同じ―
(恐い、嫌だ、恐い、ああ、けど、だけど…)
ヒナちゃんが、ヒナちゃんが待ってる。ヒナちゃんのとこ、行かなくちゃ。ヒナちゃん、どこ?ここじゃない?違う、ここじゃない。
出ていかなくちゃ。こんなとこ、出ていかなくちゃ。
あそこ?あの、下?何かいる、あそこが出口?あそこから、出られる?ああ、なら、
(行かなくちゃ…)
暗闇に潜る。
あの地の底から、ヒナちゃんの場所へ。浮上してくる巨体、近づいてきた生き物が、こちらを見ている。碧い瞳が、私の何かを確かめ、そして、通りすぎていった。
地の底、金色に光る穴を潜り抜けて―
「やった!」
「…?」
(やった?何が?)
「シノ!僕の言葉わかる?ああ!でも、その前に『回復』!」
「!?」
温かい、身体が、元に戻って―?
「ああ!ごめんね?また無理にテイムしちゃったね?」
「テイム…」
「うん、そう、ごめん。回復してあげたかったからさ。ちょっと強引にやっちゃったけど、間に合って良かった。」
「…ヒナ、ちゃん…」
痛みも苦しみも、もう無い。だけど、まだ朦朧としてる頭で、必死に探す繋がり。ユージー、マリちゃんも、皆の意識。消えかけてる、でも―
「あー、他の子はちょっと無理そうかな?もうほとんど、核も止まりかけてるみたい。シノは何とか間に合ったけど…」
「…助けて、くれた?」
あなたが?
「ああ、うん、そうだね。僕が君を助けたよ?」
「…」
(助けて、くれた…)
この人が。この人のおかげで、助かった―
「っ!ありがとう!ありがとうありがとう!」
間に合った。間に合ってくれた―
嬉しくて、本当に嬉しくて、目の前の身体に必死に抱きつく。
「うわ!こんなに喜んでもらえるなんて、何か、感慨深いなぁ。」
「ありがとう!ありがとう!ありがとう!」
「うんうん。わかった、わかった。」
(ありがとう!)
伝えきれないくらいの感謝、あなたのおかげ。本当に、本当に、ありがとう。言葉にし尽くせない感謝を、もっとたくさん伝えたい、伝えたかった。だけど、全部伝える時間が足りない。
「本当に、ありがとう!」
それから―
「ごめんなさい。」
「え?」
戻ってきた視界、転がる皆の、動かない身体。はっきりと自覚する。
今なら、わかる、
私は、
この子のためなら死ねる―




