表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/149

4-3



――さーん、――ちゃんのプレゼントって決まりましたー?


えー?プール一杯は、流石に…


ああ、ビニールプールの方ですね。ビックリした、お庭のプールの方かと思いました。


いやいやいや、私は入りませんよ。水着も買いません、要りません。――さんこそ、水着用意しといた方がいいんじゃないですか?――ちゃんきっと、「おばあちゃまも一緒にー」って言いますよ?


あー。でも、スライムって、下水に流して良かったんですっけ?詰まっちゃわないかなー?大丈夫かどうか、調べときますね?


色、ピンクでいいですか?――ちゃん、すっごく喜んでくれそう!私も、楽しみです!


だから―


だから、――さん、絶対、絶対、一緒にお祝いしましょうね?――ちゃんの…











『…』


目が覚めた。見慣れた土壁だ。


見慣れてるし、天井ですら無かった。あれー?私、どうしたんだっけなー?と思って、反対側、グリンと振り向いてみたら、


『ッ!?ギャァァァァアアアアアア!!!』


『…うっせぇよ。寝起きでそのテンション。』


眼が!?眼がぁぁああ!!


『こっちの台詞ーーーー!!寝起きから、何てもの見せてくれてんの!?グロ注意!!グロ注意ーーー!!』


『…お前、人の眼に対して、なんちゅう失礼な。あと、いい加減慣れろ。』


『まずはそいつを閉じろ!話はそれからだ!!』


『はぁ…』


ため息と共に閉じられた閲覧注意。ユージーが見慣れたチョコプリンに戻った。良かった。けど、


『いかん、今の衝撃で、なんか、全部、吹き飛んだ。大切な何かを忘れてしまった気がする。』


『…自分が何でぶっ倒れたかは、覚えてんのか?』


ユージーの言葉に、気づけば寝ていた―どうやら倒れていた―らしい理由を、頑張って思い出してみる。確か、


『…うーんと、海で泳いでたら、スッゴく深いところから、でっかいサメみたいなのが、デーデン、デーデンしてきて、』


『よし、そいつは夢だ。それじゃねえ。』


『ええ?』


速攻で否定されて、もう一度、頑張り直す。確か、


『あ!洞窟に人間が!』


ヤバイ!


そうだった。何で直ぐに思い出せなかったのか。ヒナちゃんに危険が、


『ヒナちゃんはっ!?』


『…無事だ。何も問題ねぇよ。今は寝てるけど、マリカが側についてる。』


『っ良かったー。』


一気に脱力。と、同時に、色々と思い出してきた。


洞窟に来た人間、私を焼き殺そうとしたアイツは、あの金髪イケメンが凍らせて、それで、イケメンは私のこと、助けてくれようとした?拾ってくれて、それで―


『あの、最初ここに来た人間、二人組が居たでしょう?あれの片割れの金髪が、何か、助けてくれた?っぽい?んだよね。』


『…何があった?』


『えーっと、最初、知らない人間が洞窟に入って来そうになって、ユージー達が出掛けて直ぐだったから、仕方ねーやったらーと思って洞窟出て…』


『…』


『森のとこまでは逃げられたんだけど、そこでちょっと炙られて、って!?』


ハッとして、確かめた。私、起き上がってるのに、ユージーがいつもの倍くらい大きく見えてる!


『私!?私!?縮んでる!?』


『ああ。いつもの半分以下、だな。』


『っ!?何てことっ!私の魅惑の低反発ボディが!!』


『…「炙られた」ってのは、焼かれたってことか?』


『うん、魔法で。あ、でも大丈夫だよ?その後直ぐに、金髪イケメンが冷やして?凍らせて?くれたから…』


まあ、それで爆発からの大炎上は免れた。そこは、うん、間違いなく助けられた。


『…気ぃ失ってた理由は?覚えてるか?』


『えっとね、何か、その後、イケメンがスッゴくいい顔してね?あれ?コイツ、私に惚れてるんじゃね?くらいの優しーい目で、』


『…』


『地獄に突き落としやがった…、あの野郎…』


『…』


『そう!それがさ!本当に、恐くて!真っ暗な空間を泳いでるんだけど、確実に何か居るのよ!足下の方に!』


思い出してもトラウマものの恐怖。


『それが、こう!一気に浮上して、襲いかかってくるわけ!そこまでしか覚えてないけど、もう二度と海水浴には行けないと思う!!』


泳ぐの、嫌いじゃなかったのに、最悪だ。涙の訴えに、ユージーが頷いて、


『…まあ、何となくは、わかった。』


『え?わかったの?今ので?』


ユージー、ヤバイな。本人も良くわからん体験を、今の訴えで理解するとか。


『…ヒナコによると、あの金髪はお前を「テイム」しようとして、失敗したってことらしい。』


『「テイム」?』


『ああ。…まあ、ゲームとかで言うと、動物やモンスターを、自分の手駒にする、手懐ける、ってところだな。』


『…ペットにする、ってこと?』


『愛玩用ってのも、もちろんあるが、敵と戦わせたり、場合によっちゃ、何かの素材にされることもある。』


『!?何それ、恐い!』


身の危険を、感じるわ!


『まあ、そうだけどよ。お前の場合は、どう考えても愛玩用だろう?スライムだし、…あと、あいつ、お前のことずっと撫で回してたし…』


『…』


身の危険を感じるわ…


『…で、だ。お前のテイムが失敗した理由ってのが、これじゃないかってのがある。』


『どれ?』


『これ。』


ユージーの言う、「これ」を見た。ユージーの足下、見覚えのない本が置かれている。なるほど、さっきの「眼」はこれを読んでいたらしい。けど、


『なに?この本』


『「モンスターテイマー入門書」』


『…』


最弱モンスターである我々が?他のモンスターをテイムとか?出来るの?


『…金髪が、置いてったんだよ。』


『…何で?』


『ヒナコ曰く「興味あるだろう?」って、ことらしいが、まあ、よくわからん。』


うん、本当に。色々と行動理由のよくわからない男だ。


『…まだ大して読めてないが、最初の、「注意事項」ってのに、「入手済みモンスターとの種族差、レベル差によっては、他種族モンスターの入手不可」ってのがあんだよ。』


『…先住ペットに慣れない新入りもいる、みたいな話?』


『まあ…、そんなとこか?だとすりゃ、お前がわけのわからん生き物に脅えたってのも、説明がつく気がするんだよな。』


『なるほど。あのイケメン、とんでもないモンスターを飼ってるってことか。』


『そうなる、な。』


確かに、暗闇の底に居たあれ、あれは犬だとか、猫だとか、そんなカワイイもんじゃあ、断じてなかった、うん。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ