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4-1 強くなりたい思いの、動機づけ



油断を、していたわけではなかった―


けど、タイミングは最悪。ユージーとマリちゃんが出掛けて直ぐ、でも、必死に呼び掛けた意識共有には既に反応がない。それくらい、バッドなタイミングで現れた人間。前回の、見た目派手な、中身ガクブルな二人と比べたら、全然普通の、ボツ個性な男だったけど、私にとっては明らかな脅威。


男が近づいてくる気配は、ガサガサ鳴らしてる草むらの音でわかっていたから、男が洞窟に入ってくる直前、こっちから飛び出してやった。ヒナちゃんを、男に視認さえさせたくなくて。


『うー!最悪最悪!』


ユージーとマリちゃんの二人を、「速度強化(遅刻するよ)」「物理防御強化(いってらっしゃい)」って送り出した直後だったから、残されたMPじゃ、物理防御しか上げられない。後は、必死に自前の脚で走る。男がついてきてるのを確かめて、森の方へ。


ヒナちゃんから遠く、ユージーとマリちゃんに声が届く距離を目指す。


『ユージー!ユージー!ユージー!』


走りながらも、ずっと呼び続けてる。けど、まあ、そう簡単には届かないみたい。森に入る直前、背後から襲ってきた衝撃に転がった。


振り向けば、剣を構えてる男。斬られた?でも、痛くはないし、削られてもいない。大丈夫、まだ、大丈夫。時間を稼いで、二人の帰りを待つ。ここで私がやられちゃったら、ヒナちゃんが危ない。


「スライムのくせにチョコマカ逃げやがって!」


『!』


男が、剣を振りかぶる。転がって避けるけど、避けきれない。衝撃がして、剣を弾いた。


「しかも、何でこんなに硬ぇんだよ!」


『!』


恐い恐い恐い―


刃は通らない。大丈夫って、わかっていても。金属、刃物を向けられて、平然となんてしていられない。


『っ!マリちゃん!マリちゃん!マリちゃん!ユージー!ユージー!ユージー!』


「あ!待て、くそっ!逃げるな!」


二人を呼びながら、森に逃げ込んだ。私じゃ奥までは行けないから、これ以上は進めない。何処か、隠れるところ。必死に探して、木の裏、逃げ込もうとしたら、


「ファイヤーボール!」


『!』


(熱い!)


痛い!熱い!


今度は、衝撃だけじゃなかった。背中に張り付いた熱が、全身に回って、


(火!燃えてる!?)


視界に映った炎、溶け出した身体を丸めて、地面を転がる。


(消えろ!消えろ!消えろ!)


地に身体をこすりつけても、火の勢いが衰えない。


(ヤバい…、そうだ、空気!)


身体を思いっきり薄く広げる。核だけは、火に触れないよう、そこだけは厚みを残して。広げた身体で、火を包む。熱い、痛い、けど。包んだ火、逃さないよう、隙間なく閉じ込めた。


(これで、ダメだったら…!)


ジュルジュルと溶けていく内側。火が、核に近い。


(ああ、でも…)


収まっていく。勢いを失った火が最後の足掻きを見せて消えた。


「はぁっ!?何だよ、こいつ!何でファイヤーボールが効かない!?」


『…』


(まずいなー…)


核が、ほとんど剥き出し。身体の中、まだアッツイから、バックドラフト決めてやりたいけど、自爆しそう。でも、このままでもやられちゃいそうだし、そうしたら、ヒナちゃんが危ないし。やっちゃう?やっちゃう?って自問自答。


(…やるか。)


答えは直ぐに出た。閉じた身体、男に向けて開こうとしたところで、


「ヒッ!?」


『…』


なんか、凍った。辺り一面、全部。男も、森も、若干、私も。


「…ねぇ?」


「…」


『…』


なんか、聞き覚えのある声が、男の向こうから。確かめたい、けど、恐怖で身体が動かない。


「君さ、新米?駆け出し?Fランクか何か?ここは入っちゃダメだって、ギルドで言われなかった?」


「…」


聞いたことのある男の声が、超氷点下。物理的にも凍えてるから、今すぐ心臓、じゃなくて核が止まりそう。いや、これは私に言ってるんじゃない。襲って来たやつに、アイツに言ってるんだ、多分そう。動け!諦めるな!私の核!


「あーあ、結構やられちゃったね?」


『!』


頭上から降ってきた声とともに、ヒョイって持ち上げられた。温かい。身体が相当、芯まで冷えてたみたい。


(って、え?あれ?)


私、いつの間にやら、抱っこ可能サイズ?男の片腕に収まる私のサイズ感に軽く絶望した。あんなに頑張って虫食べて、ちょっとは大きくなってたのに。


「…これ、結構危ないなー。核が出てきちゃいそう。」


『…』


抱き上げた男、いつぞやの金髪男と目があった。じーっと観察されて、悩む。これは、ユージー達に救援を要請していいものか。でも、この人、なんか危ないからな。二人を呼ぶのはやめとこう。自力で逃げる。逃げる…。逃げられる、か…?


「テイムしちゃえば、回復魔法もかけられるんだけどなぁ。ブラウがいるから、ちょっとしんどいかもしれないけど…」


『…』


何か、金髪男の視線がちょっと柔らかい?優しい?慈しみ?


「…やってみてもいい?」


(あ、れ…?)


何だ?なんか、目付きが、一瞬で。さっきのアレはどこ行った?


氷点下、興味津々、慈しみの流れから、まさかのマッド。ヤバイ、これはヤバイ。


「あははは!逃げようとしてるの?」


『っ!』


「ウネウネして、可愛いなー。よし、『テイム』!」


『!』


男の言葉に、いきなり視界が真っ暗になった。だけじゃない、身体も。真っ暗な空間に放り込まれて、上も下も無い空間、無重力?初めて経験する場所、そこを、フワフワ漂ってたら、


(っ!ナニか、居る!?)


暗闇の、更に深い底の底。何か、大きくて恐い生き物が、潜んで―


『っ!?』


碧い瞳。碧なのに、燃えるような、ギラギラした瞳が、こちらを見上げている。その碧い瞳の怪物が、暗闇の底から、モゾリと這い出して―


『っ!イヤッ!イヤだ!来ないで!』


恐い恐い恐い!


足元から襲われる、耐えられないほどの恐怖。私の意識は、そこであっさり途絶えた。







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