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2-7 Side Y



俺達を仲間と認識したのか、マリカのカリスマ故か。初遭遇以降、森に出かける度に、何処からともなくスライムが現れるようになった。現れるスライムが常に水色だったせいで、当初は全て同一個体だと思っていたのだが、マリカ曰く、現れるのは毎回違う個体ということらしい。おかげで、マリカは順調にフォロワー数を伸ばしていっている。


スライムが現れるようになってから一週間、いつもならこの辺りでスライムが現れるはずという場所まで来ても、スライムが現れる気配がない。


いつもと違う状況に、マリカに警告を出す。


『…マリカ、警戒しろ。』


スライムを脅かす何か、それが近くにいる。


(くそっ…)


やはり、探知で「敵」を認識出来ないのはイタい。接近するまで、相手に気づけないというのは―


『とりあえず、ゆっくり後退。一旦、森から出るぞ。』


マリカが、ゆっくり下がり出したのを確認して、自分も後を追う。静寂の中、音が聞こえた。


鳥の羽ばたき―


『っ!マリカ!隠れろ!』


視界に入った黒い羽根、赤い瞳。小首を傾げるカラスに似たそいつと、視線が合う。


(…少し、遠いか。)


マリカのスキル範囲には僅かに遠く、尚且つ、マリカが印象操作を掛けるためには、敵の動きを一瞬でも止めなくてはいけない。一瞬とはいえ注視の必要な印象操作、動きの速い敵ではマリカが目で追えず、スキルが効かないのだ。


ヤツの動きを止め、安全を確保した上で、マリカが接近出来れば―


『マリカ!俺があいつを押さえ込む!動けないようにするから、近づいて印象操作!』


『でも!』


『ちゃんと核は守る、問題ない!けど急げよ!』


前回より、身体も多少はデカくなっている。いくらかは持っていかれてしまうだろうが、核さえ守ればこちらの勝ち。前回は焦って、何も出来ずに終わったが、今回はこちらも黙ってやられるつもりはない。捕まえて、溶かす。


(!来るっ!)


木の枝を揺らし飛び立ったカラスの羽ばたきが見える。大丈夫だ、油断さえしなければ―


『っ!?マリカ!?』


『ッキャァァア!?』


目の前、分かりやすく転がっていた俺ではなく、背後、木の(うろ)に隠れていたマリカを襲うカラス。


(何っでだよっ!?)


洞から引きずり出される緑の身体、


『っ!マリカ!!』


こちらに背を向けているカラスに飛びかかって覆い被さる。が、覆った膜をあっさりと突き破って逃げられてしまった。


(くそっ!)


枝に止まったカラス、再び飛び立とうとする直前、背後に庇ったマリカに叫ぶ。


『マリカ!印象操作!動きを止めろ!』


『!』


カラスの、広げかけた翼が、ピタリと止まった。


枝から、垂直に落下する黒い塊。ドサリと音を立てて地面に転がった身体、だが―


『…うそ…』


『…』


動きが、鈍くなっているのは間違いない。実際、飛べずにヒョコヒョコと地を跳ねながら、近づいて来ている。それでも、完全には止まらない。着実にこちらに向かってくるカラス、羽根を大きく広げて、


『っ!?』


再び飛び上がった黒い影、咄嗟に身体を限界まで広げた。大きく広げた身体で、マリカを覆い尽くす。


『ユージ!?』


『…』


直後、突き刺さる嘴、刺さったそこから捕まえて、溶かしてやろうとするが、あっさりと避けられ、嘴が離れる。


『ユージ!ユージ!やめて!離れて!』


『うっせぇ。ちょっと、黙ってろ。』


二度、三度と、刺されて身体を抉られる。刺さった一瞬で捕まえるには、かなりの集中力が必要で、身体の下で抵抗しているマリカの話を聞いてる余裕はない。黙らせて、四度目の襲撃に構えた、が、それはなかなか訪れず-


(何だ?何で止まった?)


じっと、探るようにこちらを観察する赤い眼と睨み合う。音の無い空間、唐突に、カラスが羽を広げた。そのまま、こちらへの興味を失った様子で飛び去ろうとするカラス。訳がわからずに、一瞬、呆けてしまったが、見失う寸前で我に返り、慌ててその背に「鑑定」をかけた。







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