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2-6 Side Y



マリカのスキル、よりもむしろ、マリカの気持ちを知ってから、外に出るのが格段に楽になった。


嫌われている、仕方ないから指示に従っていると思っていた相手が、「手伝いたい」と思ってくれていたのだ。それだけで、モチベーションは全然違うし、必要かどうか悩んでいた実験にも躊躇なく手を出せるようになった。


その結果、わかったことがいくつか。


俺達の意識共有は、限られた範囲内―今のところ、洞窟から森の手前まで―でしか、使えないということ。それ以上離れると、声が届かなくなる。携帯電話のような使い方を想定していたが、これは無理だった。


マリカのスキル、投稿画像についても、アクセス出来るのは意識共有が出来る範囲。後はレベルアップや―あるのか不明だが―スキルアップによってこの範囲が拡大される可能性に期待するしかない。


そんな中、一番有用だったのは、やはり「印象操作」。改めてマリカのステータス、スキル詳細を見せてもらえば、「対象に任意の印象を与える。消費MP5/対象」の表記。マリカのMPが増えれば、対象を拡大して敵を一掃することも可能になるスキルに、一瞬だけ夢が広がった。


直ぐに、俺達がスライムだということを思い出して夢は諦めたが―


まあ、それでも、目の前の敵一匹相手でも、十分に役に立ってくれているのだから、贅沢は言えない。


スキルを知ってから、マリカが初めて意識して印象操作を行った敵は、蛇の姿をしたモンスター「レッドスネーク」だった。鑑定した結果、レベルは1―レベル1のくせにHPが30もあったから、改めてスライムの不遇に泣いたが―、マリカが印象を操作して「動けない」と思わせたところで、頭を溶かして倒した。


初、肉、だった。


ただし、生肉。毒が無いことを確かめてから、その場で半分を食べ、残り半分をマリカに食わせようとしたが全力の拒否。まあ、蛇はまだ早かったかと、やむを得ずシノへの土産にしたところ、こちらも大不評。「こんな嫌なお土産を貰ったのは生まれて初めてだよ!」と叫ぶシノには、お前まだ生まれ変わって一ヶ月しか経ってないだろ、と突っ込んでおいた。


そんな風にマリカと協力しながら、ヒナコ用の果物の他、蛇や蛙、ネズミみたいな小さなモンスターを狩って過ごし、狩りにもそろそろ慣れてきたかという頃に、とうとう、ソレに出会った。


スライム―


水色のそれは、シノそっくりの見た目をしていた。大きさといい、色といい、正直、見分ける自信が無い。鑑定しなきゃ、わかんなかっただろうと思う。


『…ユージ、この子も、狩るの?』


『一応、同族、なんだよなぁ…』


『攻撃してこないみたいだよ?』


『念のため、話しかけてみるか?』


意識共有を使って話しかけてみたが、やはり返事はない。ただのスライムのようだ。


『…ユージ、私、嫌だ。スライムは無理。』


『…まあ、なぁ。』


シノを彷彿させる、慣れ親しんでしまったフォルム。狩れる気がしない。幸い、今は余裕もあるし、所詮相手はレベル1のスライム。大した栄養にも、脅威にもならないだろうと、襲ってこない限りは放置でいくことにする。


『あ、そうだ。マリカ、こいつ、フォロワー承認できないか?』


『…やってみる。』


頷いたマリカ、少しの沈黙があって、


『出来た。…フォロワー数、4になってる。』


『よし、んじゃ、その状態で話しかけてみろよ。』


『…』


フォロワー状態なら或いはと、マリカに意識共有を試させてみれば、水色スライムが、急に元気溌剌、マリカににじり寄ってきて、


『…おい、マリカ?それ大丈夫なのか?』


『うん、大丈夫。なんか、好かれた?懐かれたみたい。言葉はわからないけど、喜んでくれてるのは何となくわかる。…なんか、犬みたい。』


伸び縮みしながら、水色スライムがマリカにまとわりついている。まあ、シノがよくヒナコやマリカにまとわりついているから、見慣れた光景と言えば、そうなんだが。


『…可愛い。』


『…飼わないからな。連れて帰れねえぞ?』


『…』


『飯食わせたり、守ってやったり、俺らにそういう余裕は無い。わかってるだろうが…』


『…うん、わかってる。』


マリカが意識共有で何か言ったのだろう、ウザいくらいにまとわりついていたスライムが、マリカから離れていく。


『…バイバイ。』


『…』


なんだ、この後味の悪さ。


『…連れては帰れねえけど、またここ来れば会えんだろ…?』


『…うん。』


罪悪感、半端ねぇ。







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