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3-4

「本当にすみません。荷物増やしちゃって、おまけに私達までお世話になっちゃって。」


「いやいや。こちらも、あなたみたいな腕の立つ冒険者に同行してもらえるなら、願ったり叶ったり。安心して旅が出来るからね。」


「隊長さん…」


結局、恥を忍んで舞い戻ったキャラバン。ことの経緯を説明して頭を下げれば、こっちが気を遣わないでいいよう優しいことを言ってくれちゃう商人1さん、改め隊長さん。マジ、性格イケメン。


道端で爆睡していた盗賊もどきの回収に付き合ってくれて、おまけに近くの街に寄り道までしてくれるという。


(有難いなぁ、本当。)


ミミズに襲われて馬車と馬を失って、それでも通りすがりのスライムに親切にしてくれるなんて。相手が命の恩人とはいえ、結構、苦しい経済状況のはずなのに。荷馬車に乗り切れず歩いている大人も居る中、ヒナちゃんと一緒に荷馬車に乗せてもらって、心中、居たたまれないくらいの思いで手を合わせておいた。


荷馬車でガタゴト―マジでガタゴトだった。スライムじゃなきゃ、お尻ヤバかったと思うくらい―揺られて、日が暮れ始めたところで、キャラバンが動きを止めた。「今夜はここで夜を明かす」という皆さんの言葉に頷いて、馬車から降りれば、同時に、他の荷台からも子どもたちがワラワラ出てくる。


(って言っても、十人くらい?かな?)


日がな一日、馬車に揺られてエネルギーが有り余っているんだろう。年長の子達が野営の準備をする大人達の手伝いを始めた横で、小さな子達が鬼ごっこ?的なよく分からない遊びを初めた。


(…いいなぁ。あーいうの。)


隣のヒナちゃんを盗み見る。どうやら、ヒナちゃんの視線も子ども集団に向けられているようで、走り回る子ども達の動きに合わせて、身体が動いている。


(ヒナちゃんも…)


人化、子どもの姿になったら一緒に遊べるのに―


私の三大欲求の一つ、「ヒナちゃんに同年代のお友達を!」欲求が昂ってきた。


(くっ!沈まれ!私の口!)


闇に飲まれ、ついうっかり、「ヒナちゃんも人化してみなーい?」と口走りそうになる自分の口を必死に閉じる。その代わりに、


『ヒナちゃん、お風呂入る?身体、今の内に洗っとこうか?』


『シャボン玉する!』


『おっけー!じゃあ、ちょっと、端っこ行こうか?』


荷台を降りて、キャラバンの皆様のお邪魔にならないよう、開けた場所にヒナちゃんを連れていく。ご心配をおかけしないよう、キャラバンからも見える位置で、スキルを使った。レベル15で習得した四つのスキルの内、私的ナンバーワンスキルを―


洗浄(お風呂入ってー)


『キャアー!!』


スキルを唱えると同時、発生したのは大量の泡。シャボン玉というより、バブルバスに近いフワフワモコモコの泡に、ヒナちゃんが包まれる。「ひゃー」だか「きゃー」だか分からない歓声を上げて泡に埋もれて遊ぶヒナちゃんに、してやったりの気持ちになった。


(ククク。流石、私。やれば出来るスライム。)


当初、水洗浄のみだったスキルをヒナちゃんが嫌がったため、水をお湯に、ただの流れる水をシャワーのように改良し、最終的に、現在のバブルバスに落ち着いた。ヒナちゃんの食いつきが桁違い。


そのまま、キャッキャするヒナちゃんをニヤニヤ眺めていたら、トコトコトコーっと近づいて来た小さな人影、三歳くらいの男の子が、一瞬の躊躇もなくアワアワに突っ込んできた。


(おー。流石、シャボン玉。)


子どもの吸引力が違うと、一瞬呆けてしまう。


「ジンガ!」


「勝手にダメ!」


(ん?)


三歳児を追ってきたらしき小学校低学年くらいの少年少女が、アワアワの中のジンガちゃんを連れ戻そうとして、手を伸ばすのを躊躇ってから、こちらを向いた。不安そうな、すみません、みたいな顔で。


「あー、うん、大丈夫だよ?視覚だけ、…うーん、えっと、本当の泡じゃないから、息も出来るし、目に入ったりもしないから、危なくはないよ?」


「…」


こちらの言葉に、顔を見合せた少年少女、納得してくれたのか、泡の中でキャッキャしてるジンガちゃんを見守ることにしたみたい。ジーッと、ジーッと見てる。


「…二人も、入る?」


「!いいの!?」


「うん、いいよ。どうぞどうぞ。」


「やった!」


嬉しそうに叫んだ男の子が、服を脱ぎ出した。


(おっとー?)


それも、真っ裸に。


どうやら、服が泡だらけになっちゃいけない?という配慮のようで、女の子の方も服を脱いでから、アワアワに見事なダイブを決めた。実際には、服が濡れたり泡だらけになることはないんだけど。


(むしろ、『洗浄』だから、服着てた方が一緒に洗えて便利なんだけどね?)


それでもまあ、現代日本ではお目にかかれない感じの夏の雰囲気が楽しそうだから、まあいいかと、黙ってアワアワを増量しておく。


三人のキャッキャに惹かれたらしい他の子ども達もワラワラと集まってきて、オズオズ許可を求めてきた。


「…私達も入っていいですか?」


「いいよいいよー。皆で入りなー。ちっちゃい子とスライムの子、踏まないようにねー。」


「うん!」


「分かりました!」


これまた服を脱いでアワアワに飛び込んでいった子ども達。


(凄い。イモ洗い。)


アワアワの範囲を広げながら、改めてシャボン玉パイセンのカリスマ性に感じ入る。


(…楽しそう。)


いつの間にか、子ども達に囲まれることになっちゃったヒナちゃんも。怖がる様子はなく、むしろ、他の子達に泡を乗っけられたり抱きつかれたり、一緒に遊んでる?みたいな光景になってる。






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