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3-2

涙目になっていたら、商人1のおじさんが近づいて来て、困ったような顔をしながら口を開いた。


「…お嬢さん、助けてもらって直ぐにこんなことを言うのはあれなんだが、このサンドワーム、うちで買い取らせてもらえないか?」


「えっ!?」


神、降臨─


勿論、光速で頷いた。多分、商人1()じゃなきゃ、見逃してたね。


「あ!でも、あの、魔石!魔石だけは欲しいんですけど!」


「わかった。それなら魔石抜きで、十万レンで買い取ろう。どうだい?」


「じゅ、…?」


「分かってる。本来なら、五十は下らないような大物だ。けど、申し訳ない。先ほどの襲撃で荷馬車をいくつか飲まれてしまって、これが、うちで出せる限界ギリギリなんだ。」


「…」


五十万レンってマジやばない?な私を置き去りに、商人1さんが頭を下げてくる。それで、後ろを振り返ったら、なるほど確かに荷物が散乱しまくり。売り物だったらしいあれこれが、土に汚れ、真っ黒に焼け焦げて─


(って、あれは私のトルネードのせいではっ!?)


しまった。それどころでは無かったとはいえ、人様にしか気を配っていなかった。荷物まではちゃんと見ていなかった。罪悪感をチクチクと刺激されるので、聞いてみる。


「…あのー、そもそも、アレってそんなにお高く買ってもらえるもんなんですか?」


「なんだ、お嬢さんはサンドワームを知らないのかい?」


「はい…」


多分、図鑑には載ってたとは思うけど、グロページは自主規制する(見ない)主義だから!もの知らずなスライムに、商人1さんは懇切丁寧に教えてくれた。ミミズの有効活用法を。


「サンドワームの体表を覆う被膜はかなり丈夫だからな。魔法防具や靴なんかになるし、鞄を作ったりも出来る。」


「…」


なかなかに知りたくなかった情報に、思わず自分の鞄を確認してしまう。


「あとは、勿論、食用だな。陸上モンスターとしては珍しく、生食も可能だから人気が高い。」


「…」


「今回は、輸送に時間がかかるから干物にでもするしかないだろうが、それでも、買い取らせて貰えれば、当分の間、食べるものには困らなくなる。」


「…」


「我々の命の恩人である君に、これ以上無理を言うことがどれだけ非常識かは分かっているつもりだ。だが、それでも、隊の者達を救うと思って、どうか!」


勢いよく頭を下げた商人1さんに、ちょっと、焦る。


「え、あー、いや、あの、全然。全然、譲って問題無いんで、はい。売ります売ります。」


「本当かっ!?」


ガバッと顔を上げた商人1さんが、こちらの手を掴んできた。縋るみたいに。


「えーっと、あの、私、コレの魔石がどの辺にあるとか、そういうのを知らないので、代わりに取って貰えるんだったら、こちらも非常に助かります。はい…」


「っ!いや、ありがとう!ありがとう!言ってはみたが、こんな取引、突っぱねられても、当然だろうと思っていたんだ!それを、こんなに快く!」


「いえいえいえ。私じゃコレ、もて甘しちゃうだけなんで。」


面の皮が分厚いことに定評のある美少女スライムでも、面と向かってのガチ感謝は居たたまれない。


「ありがとう!ありがとう!」


「いや、もう、本当…」


五体投地しそうな勢いの商人1さんから、何とか自分の手を救出して、頭を上げて貰う。


それから、商人1さん主導の元、ミミズの解体ショーが始まりそうな雰囲気になったので、シレッと魔石だけを先に回収してもらった。


(ウグッ…あんなとこにあったのか…)


商人2さんだか3さんだかが、巨体をかっ捌いて魔石を取り出してくれたのは、サンドワームの胴体部分。魔石が心臓や脳の近くにあるということは、何となく分かるようになってきていたけれど、ミミズの心臓の位置なんて全然知らなかったから、これは本当に助かった。


(最悪、頭からあの部分まで食べないといけないとこだったのか…)


ミミズ、二メートル食べるのはきつい。


渡された魔石は、摘出元を考えなければ、凄くキレイな赤色で、模様のようなものが入っていた。


(…私には分かる。お前もきっと、高級品。)


経験から、この模様?のような何かが入っている魔石はお高い。大事にしまって、商人1から6さんにお礼とお別れを告げた。


「それじゃあ、私達はこれで…」


「ああ。…その、もし良ければだが、最寄りの町まで乗せていくよ?いくら君が強いとはいえ、一人旅では何かと不便だろう?」


「ありがとうございます。けど、心配はご無用、大丈夫ですよ?」


「しかし、君から受けた恩を、何一つ返せないままというのは…」


魔石回収してくれただけでチャラだという私の言葉にはどうにも納得してくれない様子の商人1さん。


仕方ない、ここは私の百ある座右の銘の一つを。


「じゃあですね?もし、皆さんがこれからの旅のどこかで困っている人を見かけたら、その誰かを助けてあげて下さい。」


「…」


「そうして助けた誰かが、また別の誰かを助けて。それが巡り巡って、私のところに返ってくる。って、ちょっと良くありません?」


情けは人のためならず─


ちょっとかっこ良く決めて、高潔な魂持ちの美少女に感心してる様子の商人1さんに爽やかに手を振って、今度こそ本当に別れを告げた。


多分、もう二度と会うことの無い人達、それでもいつか、「そんなこともあったなぁ」って思う、旅の思い出の一つになる出会いだった。






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