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「…それで、どうしてスライムのシノちゃんが人の姿で旅をしてるのかな?」
「うっ!」
「…もし、何か事情があるんだったら、…勿論、君たちさえ良ければだけれど、ずっとここに居てくれてもいいんだよ?」
「チャールズさん…」
どういう想像をしたのか、眉尻をヘチョンと下げて心配顔をするチャールズさん。マディさんは、その横でうんうん頷いてるし─
(これは、困った…)
流石に、前世うんぬんからの、「実は元美少女です」なんて話までするわけにはいかない。言ったら、ユージーにバレた時、滅茶苦茶怒られそうだし。
(あ、いや、もう既に激怒されるのは確定だけど。)
せめて、これ以上は、と冷や汗流して考える。苦手なオブラードで、何とかこう、いい感じに─
「…えーっと、実は私、こう見えて『ご主人様』がいまして。」
「…ご主人、様。…雇用主とか、そういう?」
「あーっと、いえ、あの、私、モンスターなので、雇用主というより、もっとこう、バリバリな感じの、身も心も捧げちゃう、従っちゃう系な?」
「…」
まあ、実際は、従わずにこんなとこ居るわけですが。
「えっと、で、そのご主人様が凄い人で、凄い先輩モンスターとかも従えてたりして、その先輩にまあ、人の姿に変えてもらった、感じです。」
「…シノちゃんは、人の姿に成りたかったの?その姿は、無理矢理とかではなく、自分の意思?望んだ姿なの?」
「え?あ、はい、…あー、えっと、望んだ姿、ではないですけど、まあ、一応、…納得はしてます。」
「…」
本来なら、きっと自分は成人していただろうという感覚。どうしても、子どもだったとは思えない自意識から、多少、ブラウに無茶されたとは思っているけど、そこは許容範囲。
「シノちゃんは…」
「?」
「…逃げてるの?その、ご主人様から。」
「!?」
(ビ、ックリしたー…)
まさか家出娘なのがバレたのかと一瞬思ったけれど、良く考えれば、マスターの居ないテイムモンスターなんて、「逃げた」としか考えられないだろう。
「逃げる、まではいかないんですけど、ちょっと、一人、…ヒナちゃんと二人で、旅したいなーって気分でして…」
「旅、…それはまた、どうして…?」
「えーっと…」
そこまで突っ込まれると困るなーと思いながら、家出する直前のことを考えてみる。あの時は確か─
「…ちょっと、道ならぬ恋、と言いますか。好きになっちゃいけない人を好きになっちゃいまして。」
「…」
ていうか、スライムな時点で人全般、好きになっちゃいけないんだろうけど、まあ、その辺は?ノア以外を好きになれる予定もありませんし?
なんて、自虐的に考えてたら、チャールズさんとマディさんが、なんか、いつの間にかスッゴい悲壮な表情を浮かべてた。
(え?え?道ならぬ恋は言い過ぎた?盛り過ぎ?)
お二人とも、冷静に考えてみて下さい!所詮スライムですよ?ローティーンですよ?そんな思い悩むほどのことじゃないですよ!って心の中で言い訳してたら、チャールズさんの視線がヒナちゃんを向いて、
「…じゃあ、ヒナちゃんは、君の…?」
って聞いてきたから、
「家族です。」
って、正直なところ答えて、それから、マディさんのお腹が見えたから、ニッコリ笑って、
「私の天使です。」
って、親バカ発言もしといた。




