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2-9

「…それで、どうしてスライムのシノちゃんが人の姿で旅をしてるのかな?」


「うっ!」


「…もし、何か事情があるんだったら、…勿論、君たちさえ良ければだけれど、ずっとここに居てくれてもいいんだよ?」


「チャールズさん…」


どういう想像をしたのか、眉尻をヘチョンと下げて心配顔をするチャールズさん。マディさんは、その横でうんうん頷いてるし─


(これは、困った…)


流石に、前世うんぬんからの、「実は元美少女です」なんて話までするわけにはいかない。言ったら、ユージーにバレた時、滅茶苦茶怒られそうだし。


(あ、いや、もう既に激怒されるのは確定だけど。)


せめて、これ以上は、と冷や汗流して考える。苦手なオブラードで、何とかこう、いい感じに─


「…えーっと、実は私、こう見えて『ご主人様』がいまして。」


「…ご主人、様。…雇用主とか、そういう?」


「あーっと、いえ、あの、私、モンスターなので、雇用主というより、もっとこう、バリバリな感じの、身も心も捧げちゃう、従っちゃう系な?」


「…」


まあ、実際は、従わずにこんなとこ居るわけですが。


「えっと、で、そのご主人様が凄い人で、凄い先輩モンスターとかも従えてたりして、その先輩にまあ、人の姿に変えてもらった、感じです。」


「…シノちゃんは、人の姿に成りたかったの?その姿は、無理矢理とかではなく、自分の意思?望んだ姿なの?」


「え?あ、はい、…あー、えっと、望んだ姿、ではないですけど、まあ、一応、…納得はしてます。」


「…」


本来なら、きっと自分は成人していただろうという感覚。どうしても、子どもだったとは思えない自意識から、多少、ブラウに無茶されたとは思っているけど、そこは許容範囲。


「シノちゃんは…」


「?」


「…逃げてるの?その、ご主人様から。」


「!?」


(ビ、ックリしたー…)


まさか家出娘なのがバレたのかと一瞬思ったけれど、良く考えれば、マスターの居ないテイムモンスターなんて、「逃げた」としか考えられないだろう。


「逃げる、まではいかないんですけど、ちょっと、一人、…ヒナちゃんと二人で、旅したいなーって気分でして…」


「旅、…それはまた、どうして…?」


「えーっと…」


そこまで突っ込まれると困るなーと思いながら、家出する直前のことを考えてみる。あの時は確か─


「…ちょっと、道ならぬ恋、と言いますか。好きになっちゃいけない人を好きになっちゃいまして。」


「…」


ていうか、スライムな時点で人全般、好きになっちゃいけないんだろうけど、まあ、その辺は?ノア以外を好きになれる予定もありませんし?


なんて、自虐的に考えてたら、チャールズさんとマディさんが、なんか、いつの間にかスッゴい悲壮な表情を浮かべてた。


(え?え?道ならぬ恋は言い過ぎた?盛り過ぎ?)


お二人とも、冷静に考えてみて下さい!所詮スライムですよ?ローティーンですよ?そんな思い悩むほどのことじゃないですよ!って心の中で言い訳してたら、チャールズさんの視線がヒナちゃんを向いて、


「…じゃあ、ヒナちゃんは、君の…?」


って聞いてきたから、


「家族です。」


って、正直なところ答えて、それから、マディさんのお腹が見えたから、ニッコリ笑って、


「私の天使です。」


って、親バカ発言もしといた。






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