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2-2

さて、今回の女子(本物)旅において、重大な問題が一つ。そう、我々にはお金がない。正確に言えば、ユージーから奪ったお小遣いの残り─から更にランチした後の残高─、千三百レンしか。


「というわけで、ヒナちゃん!シノちゃんはお仕事をします!」


「ヒナもお手伝いする!」


「おお!素晴らしい心がけ!流石ヒナちゃん!助かるわー。」


と言いつつ、ランクFの新米モンスターテイマー(偽装)に出来るお仕事は非常に限られているので、


「はい!こちら!こちらのお仕事は、農家の収穫のお手伝いですが、なんと!泊まり込み!一週間の食事と寝床つきという、素晴らしい案件です!」


「やったー?」


「ただし!農家といっても果樹園、しかもどうやらかなりの山奥!登るだけで一苦労ですが、ヒナちゃんは頑張れますか?」


「頑張れる!」


「マジで!?ヒナちゃん、すごい!すごいね!頑張り屋さん!」


ヒナちゃんを全身でグーリグリしてから、ハイキング以上、登山未満な依頼先への移動を開始する。ギルドのお姉さん─普通に親切だった─によると、人里離れたポツン系での作業、おまけにレベルアップに繋がるような戦闘とは乖離しているが故の不人気依頼で、ギルドでももてあまし気味だったらしく、何ならちょっと感謝された。


(私的には非常にラッキー!)


三食寝床つきで報酬もそれなり、今夜の寝床にも事欠く有様の身の上には大変に有難い求人。後は、モンスター同伴を断られさえしなければ─


という私の心配は全くの杞憂に終わった。ゼェゼェ言いながら─ヒナちゃんは割と平気だった─たどり着いた依頼人の家、可愛い山小屋風ハウスの扉を叩くと、出てきたのは二十代くらいの男性。ギルドからの依頼で来たと伝えると、


「えー!?こんな小さい子が冒険者!?君いくつ!?本当に冒険者なの?」


「十五歳です!バリバリのモンスターテイマーです!」


どう見ても十二歳前後の笑顔で職業詐称しておいた。


「ああ!モンスターテイマーか!君が実際に戦闘するわけじゃないんだね。良かった、びっくりしたー。」


と人の良さそうな笑顔で安心して見せたお兄さんの視線が私の足元、そこに居るプリチーピンクスライムに向けられる。


「…」


「…」


「…ま、まぁ、うちでの仕事に危険は無いから!うん!大丈夫!問題ないよね!…あー、えっと、君の名前は?」


「シノと言います!よろしくお願いします!」


異世界での雇用は二度目。今回は会話もお辞儀も禁止されていない。精一杯感じよくご挨拶してから、取り敢えずニコニコしておく。なんせ、私は美少女。これで落ちない男など─


「うーん。こんなに小さいのに、しっかりしてるんだねぇ。苦労したんだろうなぁ…」


「…」


ほらね─?


方向性は違う気がするけれど、懐には入り込めた。


そんなこんなで、心配になるくらい人の好い新上司であるお兄さん、チャールズさんは、私のモンスターテイマーとしての職を尊重し、ピンクスライムヒナちゃんを全く邪険にすることなく家に迎え入れてくれた。


案内された部屋の中、食堂のキッチンにはもう一人、…いや二人?、チャールズさんのご家族が居て─


「僕の奥さん、アディって言うんだ。見ての通り、今は妊娠中で、」


「ごめんなさいね、こんな格好で。」


そう言って、横になっていたカウチから身を起こそうとするお腹の大きな若奥様を慌てて止めた。


「いえいえいえ!もう、お好きな恰好で!楽に!楽にされててください!」


「…そう?本当に、ごめんね?」


フラフラ~って感じでカウチに沈んで、元の態勢に戻ったアディさん。もう、びっくりするくらい、一目でわかるくらい憔悴してるというか、入院!入院をお勧めしたくなる!


「ごめんねー。アディ、悪阻が酷くてさぁ。最近はずっとこの調子で…。こんなとこじゃなく、部屋で寝てればいいのに、嫌がるんだよねぇ。」


「だって、病人じゃないんだから、出来ることは自分でしたいの。…大丈夫よ。ユノ婆だって、大したことないって言ってたじゃない。個人差はあっても、正常の範囲だって。」


(っ!?これで、正常の範囲…!)


恐ろしい情報。そのユノバーとやらがどこの(バー)かは知らないけど、アディさんが信頼してるっぽいことから、金棒くらいのバーだと信じたい。あと、効果があるかは分からないけれど、こっそり、アディさんにご飯(HP)おやつ(MP)食べ(回復)させといた。…体重制限とかにひっかからないと信じたい。


「ああ、えっと、それでね?君、…君たちにお願いしたいのは、果樹園での僕のお手伝いなんだ。いつもはアディと一緒にやってるんだけど、流石に今年は無理だからギルドに依頼を出したんだよね。…ただ、なかなか依頼を受けてくれる人が居なくて困ってたんだけど、」


「微力ながら、誠心誠意努めさせて頂きます!」


「う、うん。助かるよ。けど、あまり無理はしないで、」


「粉骨砕身!身命を賭して、」


「いやいやいや、ただの収穫作業だから。ミムの収穫に命まではかけないで。」


首を振るチャールズさんの背後、小さく笑ってくれるアディさんに安心して欲しくて拳を握って見せる。本当、ご自愛の上、母子共にご健勝していて欲しい。


それから、「早速、案内するよ」っていうチャールズさんについて、お家の裏手の果樹園へと向かうことになった。傾斜を上りながら、ヒナちゃんと内緒話で気合を入れる。


『ヒナちゃん、ミム狩りだよ!ミム狩り!頑張ろうね!おー!』


『おー!』


記憶に無いけど知っている。前世、フルーツ狩りというものが存在したことを。食べちゃだめだ食べちゃだめだ。けど、ミムってどんなのかなー?前世とかけ離れてしまった味覚で、だけど、そういう想像はとっても楽しいから、上がるね!






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