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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
106/149

5-4

「…ヴァンパイア退治?」


灰と化したレティ嬢をギルドに放置し、ノアはウキウキ気分で私達を街に連れ出した。


茶でもしばきながらというノアに連れてこられたお菓子屋さん、いつもは「モンスターお断り」のそのお店に、ドラゴンとスライムをゾロゾロ連れて入店したにも関わらず、ノアを止める者はだれも居なかった。こういうの、本当、どうかなって思うんだけど、ヒナちゃんが美味しいもの食べられるなら、不問に処す。


店の奥、イートインスペースでこっそりケーキを頬張るヒナちゃんの盾になりながら、ノアの「話」とやらを聞いていた。その中に出てきた「ヴァンパイア」という単語に反応したユージーが、ノアに「怪しい」みたいな視線を向けて、


「俺たちも一緒に?」


「そう。ギルド本部からの討伐依頼なんだけどね、良かったら君たちに協力してもらおうかと思って。」


「…それは、俺らが敵う相手なのか?」


「モンスターランクで言うとAランクかな。」


「断る。」


即決したユージー。「だが」の枕詞もなし。まぁ、私も死にたくはないので、ユージーの判断に賛成、文句はない。大体、


「ノアは、私たちに死ねと?」


「え!やだなぁ、僕がシノを殺すわけないでしょう?逆だよ、逆。」


「逆?」


「そう!シノが簡単に死んじゃわないように、シノを育てようと思ってさ!」


「…ほほう?」


にしてもいきなりのランクAとは、スパルタが過ぎるマイマスターの発言に、彼の保護者であるブルードラゴンを見れば、


「…ノアなりの善意だ。穿った見方をするでない。」


「でも、それって、死なない?私たち、死なない?」


「ノアと我がついておる。死ぬことはあるまいよ。そも、ヴァンパイアの得意とするは、吸血による魅了。血の流れぬ魔法生物であるお主達であれば、相性は悪くない。」


「ああ!なるほ、」


「物理攻撃で普通にやられちゃうだろうけどね!」


「…」


結果、スパルタの保護者はスパルタだということが判明しただけだった。


「…レベリング、…レベル上げにしては効率悪くないか?ランクAなんて、俺らじゃ体力削んのも厳しいだろ。シノに(とど)めをやらせるにしても、命がけで一個体ってのは…」


「うん、そうなんだけど。調査報告によると、そのヴァンパイア、ちょっと変わってて、ランウッドっていう町の教会に住み着いてるらしくってね?」


「…教会?」


(そりゃまた、罰当たりなところに…)


十字架とか平気なん?と、マリちゃん検索をかけて『モンスター図鑑』のヴァンパイアのページを探していたら、


「ヴァンパイアは吸血によって人を操るだけでなく、死者を操る能力もあるんだ。」


「…それは、つまり…?」


「墓地に眠る死者を操って自分の身を守らせてるらしいんだよね。それが結構、数が多いらしくって、だから、みんなでこうサクサクっと。」


「…」


来たか。とうとう来てしまったか。それはどう考えても、Zな感じの歩くアレ的な。つまり、効果音としては「サクサク」ではなく、「ビチャドログチャ」的な。


「…だが、お断りいた、」


「あ。シノは強制だからね。僕、もう、シノと離れ離れとか絶対に耐えられないから。シノはこれからはずっと僕と一緒だから。」


「…」


「一日一回はシノに触れないと死んじゃう体になっちゃった責任、とってくれるよね?」


ニッコリと微笑むイケメンの殺し文句に、色んな意味で死んだ。


そんなクローリングデッドと化したスライムをよそに、いつの間にか乗り気になっていたらしいユージーは、ノアと前向きな交渉を始めてしまい、


「…パーティを組むとして、俺らのステータス、そういう情報の開示ってのはどこまで必要だ?」


「ん?まぁ、その辺はあまり難しく考えないでよ。基本、二チームでの共闘、メイン戦力は僕たちだから、君たちは出来る範囲で補助的に動いてもらえば構わないよ。」


「…ノアはこう言うが、お主達の戦力がわかればこちらとしても動きやすいのは確かだ。支援もしやすい。…うっかり死なれでもしては困るからな。」


(…助けてくれるんだ。)


本末転倒なことを言い出したブラウの言葉に、「これは本当の戦力外、ただのお飾りなのでは?」という疑問がわく。同時に、「そこまでして私と一緒にいたいの?」という喜びではなく、恐怖も。戦慄くデッドの横で、ユージーが難しい顔をして、


「…そういう、…他人のステータスを勝手に『見る』ことができる魔法やスキルってのは存在しないのか?」


「うーん、鑑定石みたいな能力ってことかな?それは、聞いたことないかなぁ、…ブラウは知ってる?」


「所謂、伝承という形であれば、古代の聖者が用いたとされるスキルに『鑑定』というものがあるが、あれはあくまで伝説、神話の類いだな。」


「…そう、なのか。」


呟いて、ユージーがサッと顔を伏せた。俯いた顔は、苦汁を滲ませているようにも見えるけど、


(だが、違う。私には分かる。これは、メッチャ喜んどる。喜んでるの必死に隠そうとしてる顔。)


少なくない付き合いの中で、読み取れるようになったユージーの機微、


(…いや、機微ってほど繊細じゃないな、むしろ、バレバレなんじゃ?)


心配する親心をよそに、顔を上げたユージーは表情をキリッとさせて、


「…その、鑑定石ってのは、魔法具みたいなもんなのか?それを使えば、相手のステータスがわかるんだよな?」


「鑑定石は魔法具というより、魔法装置だね。王都や周辺のギルドなんかには設置されているけど、下手をすると馬車一台くらいの大きさはあるから、持ち歩くとかそういう類いのものではないんだ。」


「…馬車。」


想像を遥かに超えるらしい大きさに、ユージーが絶句する。私もとりあえず、「それはもう石ではなく岩では?」と突っ込んでおいた。


(まぁ、でも、これでユージーの懸念、いつ鑑定とかで私たちの正体がバレるかってのは無くなったんだよね。)


そういう意味ではとても良い情報だったので、一安心。したのも束の間、本格的にノアとのお仕事の話を始めたユージーが、自分の使える「魔法」について、鑑定なんかの一部をぼかして話を始めたところで―


「え!ユージ、君、魅了が使えるの!?」


「ふむ。麻痺や石化に加えて魅了まで使えるとは、大したものだ。」


「すごい!いいなー!」


(…これだから、男ってやつは…。)


はしゃぎ始めたノアと感心するブラウに、今度こそ「男ってやつは」の使い時だよね?という視線をマリちゃんに向けた。頷き返すマリちゃんの賛同も得られたので─


「え?あれ?え?何で?何で、シノ、離れてくの!?」


「…」


「え?待って待って!ちょっと待ってよ!?」


「…ケダモノ。」


「何でっ!?」


「…シノ、魅了スキルとは吸血などの固有スキルと違い、永続的な効果は持たぬ。そういう意味で人相手への悪用などはできぬから安心しろ。…魅了は、モンスターテイマーにとって垂涎もののスキルなのだぞ?」


(え?そうなの?)


と思いかけて、


「っ!?って、私、モンスターじゃん!メロメロにされてる内のテイムとか、最低じゃん!」


やはり、そんな年齢制限な魔法を使える(ユージー)も、それを羨ましがる(ノア)も、無いなという結論に達した。






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