4-幕間
私の母は女王だった―
私自身は、母の産んだ六人姉妹の一番下に生まれ、他の姉達に比べれば遥かに力の劣る存在だった。多くの仲間たちに囲まれながら、それでもどこかずっと感じていた違和感。
―私の居場所はここではない
同種である彼女たちにそこはかとなく感じる嫌悪も、「人間」を食べるという行為に対する忌避も、どこから来るのかもわからぬまま、ただ、何かが違うのだと感じていた。
肥大化した群れの存続のため、見境なく人間を襲い始めた母や姉たちのやり方が間違っていることにも気づいてはいたが、己の弱さ故、彼女たちの行いを止めることもできぬうち、母の築いた群れは崩壊した。残った少数の同族を連れて逃げ込んだ森の深部、思いがけず出会った人間と、人間とともにあるモンスター。偶然の邂逅が、小さく心を揺らした。
私はそちら側でありたかった―
記憶の底、微かに浮かぶのは誰かの笑顔。
―急いで、――っ!バス出ちゃうよ!
黒い髪を翻し、手を引く少女に、あの時、私は何と答えたのだろうか―
「…アリア様、お時間です。皆にお言葉を」
「…ええ。」
人間の報復により数を減らし、上位種蔓延る森の深部で共に生きることを選んだ仲間たち。私は私のやり方で、彼女たちを守っていかなければならない。
私は今日、女王になる―




