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結論から言うと、洞窟はスゴく狭かった。私達が出発した地点から一番奥まで、スライム横並び五個分くらいの幅の洞窟が、スライム徒歩三十秒もかからない距離、真っ直ぐ続いていただけ。


あと、虫はいた。ウジャウジャいた。


『…シノが目ぇ覚ます前に、入口の方は一人で見て来たんだが、そっちは、入口に向かって大きくカーブになってる。それでも、十秒もかからずに外だったけどな。』


『外、見たの?どんなだった?』


『いや、入口見えた時点で引き返したから、実際の外までは見てない。俺らの背丈くらいかな?それくらいある草で、視界が遮られてた。』


そう言って、ユージーがまた、何かを考え出した。


『…後は、俺らのサイズ。スライムが、この世界でどのくらいの大きさなのかって問題だな。』


『サイズ?』


『…俺らが人間の手のりサイズくらいなら、人間がここまで入ってくる可能性は低いと思う。洞窟を崩される心配はあってもな。だから、気を付けるべきは、他のモンスターだけでいい。』


『うん…』


『…もっとデカイサイズなら、人間が入ってくる可能性も考えなきゃいけない。相手がモンスターなら、やりたくはないが、戦うことも出来る。けど、相手が人間の場合、逃げる、しかないだろう、…今んとこ。』


『…』


人間と戦う、究極、殺し合う可能性があるということ。うん、確かに、それは厳しいよなー。人を殺れるか?っていう、精神面で。


でも―


隣で大人しくしてるヒナちゃんを眺める。覚悟を決めるなら、なるべく早い方がいいんだろうし、可能性としてある程度わかっていることは共有しなくちゃいけない、ってことで、


『あくまで、ね?私の、個人的な意見から言うと、私達がそこそこデカイ可能性、考えた方がいいんじゃないかなー?って思うよ?』


『…』


『…具体的に言うと、私達の背って、六歳の女の子がしゃがんだ時くらいの大きさなんじゃないかなー?』


『…』


『もしくは、背伸びした私達二個分が、幼稚園年長さんくらい、とか?』


『…まあ、そう、だな。』


(ユージーも気づいてる?)


ヒナちゃんはユージーの後ろを歩いてたから、直接見たかはわからないけれど、スライムな傘の下から、可愛い(あんよ)が、チラッチラッと。うん。


『…妖精。』


『え?』


マリちゃんが、ポツリと何か可愛らしい単語を、


『…妖精、とか、コロボックルとか、そっち系の生き物かもしれない。』


『!?それだ!妖精さん!妖精さんの可能性!』


『…どうだろうな?』


ユージーの疑問の形をとった否定。うん、わかってる。現実逃避だって。逃避出来なかったけど、ユージーのせいで未遂に終わったけど。


結論、私たちがそこそこ大きい可能性、洞窟に人間が入ってくる可能性は考えておかないとってことだ。


『まあ、今いくら考えても、結局、今の俺達じゃ対処しようが無い問題だからな。これも一旦、保留。』


『うん、了解。』


『じゃあ、ここからは、食料問題についてだ。』


『『『…』』』


ユージーが鬼。


だって、食料問題とは、つまり虫食。洞窟は、ゴツゴツした土やら岩やらで、光が無いせいか、草が生えてなかった。つまり、我々の食料は、


『あそこにいるやつとか、どうだ?』


『無理無理無理!!』


ユージーの言う、あそこにいるやつは、体の下の足が過剰に過ぎる。無理。


『足は六本までにして!当然、蜘蛛は駄目!あと、例の地上最強のGなやつも、その親類縁者っぽいのも駄目!』


『注文多いなぁ、』


『…先に、あんたが食べれば?』


マリちゃんがユージーを口撃してるけど、語尾も身体もプルプル震えてる。


『食うよ。先ずは俺が食うけど、その前に「鑑定」して、毒性が無いかを調べたい。無害だと判断したものしか食わないから、お前らも俺と同じもの食うことになる。だから、お前らでも食べれそうなやつから、調べてくつもりだ。』


『…』


超慎重派、ある意味、過保護なユージーの言葉に、マリちゃんが黙らされた。


『で?どれなら、いけそうだ?』


『…ユージー、あれ…』


『ああ。あそこに集まってるやつか?フナムシみたいな…。まあ、足は確かに六本だな。』


『うん。あれなら、あのサイズと色なら、何とか!』


『んじゃー、あれ、「鑑定」するか。「かいが、」』


『ギャァァァアアア!あっち行って!あっち行ってから、「開眼」して!』


『…お前らが目ぇ閉じてろよ。』


必死に拒絶したら、ブツブツ言いながらも移動していく黄色。途中で立ち止まり、暫く動かなくなったかと思ったら、


『ヒッ!?』


『…うわぁ。ヤバイ。』


ブワリと盛り上がった?ように見えたユージーの身体が、岩の上、ワシャワシャしていたフナムシの集団に、上から覆いかぶさった。


『…ユージー、美味しい?』


『…味とかはしねぇな。感触?はあるか?やっぱ、ちょっと固めの、』


『いやーーーーー!!!そこまで解説しないで!!』


『うるせぇ。まあ、こいつら、毒とかはないから、お前らも食ってみろ。そっちの岩とかもいるんじゃねえか?』


『…』


ユージーの言う、「そっち」に、確かにいる。さっきと同じ、フナムシ的な虫。あそこまでワシャワシャしてないし。小さい。けど、


(食べるの?これを?)


昔の自分の記憶は無くても、虫は普通食べないし、けど、ゲテモノとかで食べる人がいるのも知っている。「虫食は世界を救う!?」とかも、テレビで見た、気がする。けどでも、自分とは関係ない、遠くの出来事、そんな風な立ち位置、だったはずなのに。


ジリッと岩肌に近づいた。食べる、これを―


『…シノちゃん。』


ヒナちゃんが、不安そうにこっちを見てる。でも、ここで、これ、食べなきゃ、食べないと、強くなれないし。強くなれないと、きっとまた()、守れないし―


(…「また」?またって、何だ?)


思い出せそうで思い出せないという、あのイラッとする感覚がしたから、振り払う。今は、目の前の食事に集中して、


『…いただきます。』


(あーいやだ。わかる。わかっちゃう。)


目の前の虫、どうやって食べればいいのか。「口」を開いて、覆いかぶさって、


(うー、嫌だ嫌だ嫌だ。)


暴れてる。身体の中、モゾモゾ暴れる虫たちを溶かして、分解して―


『…シノ、ちゃん…』


(いやー!!!見ないで見ないでヒナちゃん!そんな目で見ないでー!)


頑張って消化してたら、ヒナちゃんに、ジリッと後ずさられてしまった。ぴえん。







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