33:リフレイン
目を逸らしたままの彼の頬がみるみる赤く染まっていくのを私は見ていた。そんな私の視線を気にするように、彼は一層目を逸らしたままで「あの……」と呟く。
言い淀みながらそう言うと、彼は語尾を濁して顔を赤く染めたまま、再び口ごもる。
「あの俺、そういう男に見られてた……?」
口元だけではなく顔全体を掌にうずめて彼は小さな声で言った。
「そういう男?」
私の質問に、彼はますます黙ってしまう。しばらく掌に埋めていた顔を上げた彼は、赤く染まった頬のままで顎をあげた。
「あんたを守りたかったから。――それだと、答えにならないか?」
「私を、守りたかった」
咄嗟に彼の言葉をおうむ返しに繰り返すと、彼は一瞬ごくりと喉を鳴らす。そしてゆっくり頷いた。
「抱きしめることであんたを守れるかどうかはわからないけど、ただ、俺があんたを守りたいと思ってるってことを、示したかった。――でもそれ、言葉で言えば良かった。いきなり抱きしめんのは……失礼だよな。ごめん」
そして彼はもう一度、頭を下げる。
私は、彼が今言った言葉を頭の中で繰り返していた。守りたいと思っていることを、伝えたかった――守る。抱きしめる。結衣の言葉も思い出す。親愛の情。あなたを好ましく思っています。
彼がそっと頭をあげた。恥ずかしげに私を見るその表情に、私は無意識に手が伸びていた。
ねえ結衣、親愛の情って――勝手に溢れるものなのかな?
私は彼の首に手をまわし、そしてそっと抱きついて、抱きしめた。胸の中には結衣が言ったような親愛の情と、そして彼が言ったような守りたい気持ち――私は、彼を守ってあげたいというその思いが混ざったあたたかな思いでいっぱいだった。
首に回す腕に力がこもる。彼の耳が私の口元すぐそばにある。そうだ、もうひとつ、伝えたいことを。
「私――嫌じゃなかった」