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最弱魔術学院の麒麟児  作者: 立鳥 跡
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プロローグ


 ――魔力。それはこのイルフェミアの世界において空気のように存在するエネルギー。

 

 当然、そこで生きる生物にも魔力が存在した。 

 そのおかげで人間は古くから魔法を使う事が出来た。

 イルフェミアにおいて魔法はなくてはならない力。


 魔力の量は個人差があるがイルフェミアに存在する人間は皆、魔法を行使出来る可能性がある。

 

 だが、魔法は古くからの先人達の技術の結晶であり、学ばなくては行使する事は出来ない。

 初級魔法までは独学で行使出来る様になるかもしれないが、それ以上の魔法は教えてもらわねば行使する事は難しい。その為、イルフェミアの国々は魔法を教える為の学院を作った。

 イルフェミアに存在する国で魔術学院を持っていない国などない。

 なぜならば魔法はイルフェミアの国々とって、繁栄度を表すステータスだからだ。


 だからこそ、魔術学院はその国の繁栄度の高さを表す判断材料として古くから重宝されてきた。

 国々は他の国よりもよりレベルの高い魔術学院を作る事に重きを置いた。

 それは、イルフェミア東大陸の覇者ーーアルステラ王国も例外ではない。

 アルステラ王国には、王都アルステラ、魔法都市メガロニカ、西部都市フローレンの三都市それぞれに魔術学院が存在する。 


 中でも魔法都市メガロニカの魔術学院は、世界的な魔術の発表の場――マギスフィアに百回連続で出場する程優秀な魔術学院である。しかし、西部都市フローレンの魔術学院も負けてはいない。

 西部都市フローレンの領主――サザーランド公爵家ビクター·サザーランドが当主になってから魔術学院に力を入れ始めたのだ。そのおかげで去年のマギスフィア出場を賭けたアルステラ魔術大会ではメガロニカ魔術学院を後一歩の所まで追い詰めた。今年はマギスフィア出場もあり得ると各国から評価されている程である。

 

 だがメガロニカ、フローレンの二校と違いアルステラ魔術学院は評価が低い。

 国の名を冠し王都に建てられてるにも関わらずだ。


 アルステラ魔術学院は建てられて三百年の歴史を持ち、貴族が多く通う由緒正しき魔術学院である。

 だが、貴族が多く通うという所がアルステラ魔術学院の評価を著しく下げる結果となっている。


 どういう事かと言うと、建てられた当初こそアルステラ魔術学院は素晴らしい実績を上げ、マギスフィアにも何十回も出場し、優勝も五回程している素晴らしい魔術学院だった。

 しかし、百年程前から貴族が魔術師の資格を取りやすくする為に賄賂が横行し、その結果アルステラ魔術学院は貴族が魔術師の資格を取りやすい学院となり、すっかり腐敗してしまった。

 貴族以外はアルステラ魔術学院を忌避し、他の魔術学院を目指すようになった。

 卒業さえすれば魔術師資格はもらえる。しかし、魔術師にもランクがある。一番下がFランク魔術師で一番上はSランク魔術師である。魔術師のランクはイルフェミア西大陸の大国――魔導王国クロウドの首都マジェットに本部がある魔術師協会が決めている。

 

 アルステラ魔術学院は金さえ払えば卒業できる為簡単に魔術師になる事ができる。しかしそのせいで、アルステラ魔術学院の魔法水準は大きく下がり、卒業した魔術師達は低ランク魔術師ばかりという自体に陥っている。

 今では世界で一番最弱な魔術師を生む学院とまで呼ばれている。


 国もこの状況は流石に見過ごせなかった。

 賄賂を受け取っていた学長を辞めさせ、魔導師の称号を与えられた名のある魔術師を新しい学長に挿げ替えた。

 新しく学長になったエアリア·ナーゼは世界に十二人しかいない魔導師の一人であり、世界に三人しかいない大魔導師の一人であるエレメンティア·ハーバイドの唯一の弟子である。

 今までアルステラ魔術学院の学長は全員が男性であり貴族だった。

 だがエアリアは女性で平民だった。

 当然貴族から反対の声が多数上がったが、国王が条件付きでエアリアを学長にした。

 五年以内にマギスフィア出場をする事、これが条件だった。

 

  当初エアリアはマギスフィア出場ぐらいなら楽勝でしょと楽観視していた。

 だがアルステラ魔術学院の腐敗はエアリアの想像を遥かに超えていた。

 賄賂を受け取っていたのは辞めさせられた学長だけじゃなく殆どの教師が巧妙に受け取っていた。

 貴族の学生はそれにあぐらをかき、真剣に授業を受けない。

 数少ない平民の学生も貴族の執拗なイジメで学院を辞めるか目立たない様に生活するかを選ばされていた。


 エアリアは当然この腐敗を取り除こうといくつもの施策を打ち出したが、百年根付いた腐敗はそう簡単に取り除けない。


 そうこうしている内に二年の月日が経った。


 アルステラ魔術学院の現状は変わらない。最弱魔術学院のまま。


 エアリアは残り三年でのマギスフィア出場を諦めかけていた。

 

 エアリアにはどうしてもマギスフィア出場させなくてはいけない願いがあったがそれも無理そうだと毎日深いため息をつく日々。


 それに終止符をうったのは大魔導師エレメンティア·ハーバイドからの一通の手紙だった。


 『面白い奴を見つけたので送る』


 内容はこれだけ。だがこの手紙から最弱魔術学院の下剋上が始まるのである。


 

読んで頂きありがとうございました。

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