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第27話 同じ星を見つめる者(1)

 小評議会に参加してから二日が経過した。

 大雨が続いたことで公務が滞り、その影響あってかオスカーの見張りはなかった。

 部屋から出ることなく、牢屋のような生活をしていたためか、体が強張ってしまい、その上やることがなく、天井にある凹みの数を五回数え終わる程に持て余していた。

 昨日の夕方にようやく雨がやみ、朝は清々しい程の快晴になり、シジュウカラとヒバリの合唱がけたたましくてオスカーは強制的に起こされた。

 いい加減、次の見張り役くらいは教えて欲しいものだ。

「…………」

 リゲルとリャンの会話を盗み聞きしてからオスカーは一人きりの部屋で何度もため息をついて

―――せめて体を動かしたり誰かと話したりしていれば考えなくて済むんだけれどな。

 楽しんでいるように見えたのはリゲルの演技、だったのだろうか?

 悶々と悩むオスカーは頭だけを寝具からはみ出して逆さまに部屋を眺めていた。

 そろそろ起きねばと体を反転させたその時、ノックもなしに突然扉が開いた。

「やあ、オスカー! いい朝だね!」

「いった!」

 オスカーは驚いた勢いで頭から床に落ちた。そんなオスカーを見下ろしていたのは、闇夜色(ミッドナイトブルー)の髪に大きな紫の目の少年。溌剌とした足取りに思わずオスカーは再確認した。

「え、カルマ?」

「そうだよ、今日は僕が当番なんだ。オスカーの護衛は任せてよ!」

 ふふん、と胸を張る少年にオスカーは一抹の不安を覚えた。

 確かに数日見ない間に随分と頼もしくなっている。王都に運ばれた時の衰弱しきっていたことが嘘のようだ。

 カルマはダンスを踊るように床で仰向けのままのオスカーの周りを回った。

「テオに聞いたんだけれど、城の外に出てもいいんでしょう?」

「いいっていうよりは―――」

 テオは無理矢理連れ出してそれも隠密に外出したから、許可出ているとは言い難い。テオが早朝を選んだことと人目に触れなかっただけなのだ。

「外はダメだ、カルマ」

「何で何で? 今日は最高の晴天だよ! 雲一つない空なんて何日ぶりだろう! どこの家もシーツを干しているから王都は石鹸のニオイがして、白い花が咲いているみたいだよ! 見に行きたいでしょ?」

 オスカーが答えるより前にカルマは次々に問いかける。

「でねでね、今日が何の日か知ってる?」

「―――ごめん、知らない」

「ふふふ、じゃあ着いてからのお楽しみにしようかな、どうしようかな?」

 カルマは振り子のように頭をグラグラさせた。ここまで意気揚々としたカルマは初めて見る。

「それでは、オスカー姫。僕が騎士としてエスコートいたします。ドレスの裾にお気をつけて」

「待って、誰に教わったの? 適当なことを言うもんじゃないよ! 使い方違う! 誰が姫? 姫は女性に使うものだよ! 分かってる?」

「分かってる、分かってる」

「誰にそんな冗談を吹き込まれたの?」

「アリスタだよ。お城の大事なところに『ゆうへい』されているのは宝物かお姫様って相場が決まっているって」

「…………」

 何となく予想はついていたが、無垢な子どもに適当なことを吹き込む悪戯心のある者は消去法などしなくともおのずと分かる。緊張感や疎外感などアリスタの好奇心や気分を前にしては無意味なのだろう。

「ささ、どうぞどうぞ」

「カルマ、その話し方本当にやめて」

 話し方が気持ち悪い、と嫌厭していたリゲルの気持ちが分かった気がした。

「さあ、こちらをお持ちください」

「………」

 渋々カルマから手渡されたものを受け取った。

 少し重みのあるそれは鎌。草や穀物を刈るための、鎌だ。

「さあ、大麦刈りだよ、オスカー!」

 大冒険に旅立つ勇者のように、カルマは両手を広げた。

―――………え?


カルマの回始まります。

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