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第15話 女王暗殺計画(1)


 セピア暦一〇一一年、森が新緑に染まり、薫風が吹く季節が訪れた。

 庭園には深紅、ピンク、白のバラが咲き誇り、ツバメが巣を作るために川辺の泥を集める。

 七星卿たちの歓迎と女王の即位を兼ねた、夏を祝う仮面舞踏会がビーネンコルブ城で催される予定だったが、財政の関係で来年に持ち越されることになった。

 グラン・シャル王国初の女王とあってか贈り物を禁じたにも関わらず、シリウスの部屋には何着ものドレスが届けられた。この国の娘たちは夏が始まる前に春の装いを楽しむもので、夏の夜を楽しむための恋人探しの季節とも言われている。バラはそんな恋の象徴でもあった。

 ドレスに全く興味のないシリウスだったが、パールホワイトとアップルグリーンのドレスだけは気に入っており、公務がなく雨風が吹く日はそれを着て城内で過ごした。

 そのドレスを着る日は決まってシリウスはご機嫌で、オスカーも朝起こす手間がなく嬉しいものであった。朝食の準備をする時間が十分に取れたオスカーはシリウスの自室の扉をノックした。

 女王、オスカー、七星卿の九人は朝食を摂るため、それぞれの居館から食堂のある中央の居館へとそれぞれ赴いた。

 オスカーとシリウスの対面側の廊下に声が響いて騒がしい。その声の主が誰かは見ずとも分かった。

「なんっで朝食とるのにわざわざ居館(パラス)を移さなきゃなんねえんだよ」

「仕方ないだろう、女王の命令だ」

 しかしそう言うリゲルも不本意のようだ。彼は棟を渡り歩く労力を愚痴るアリスタと違い、大人数で食事をする習慣が性に合わないらしい。高貴な身分の者には朝食を運ばせるのが慣習であるため、朝を共にすることはない。

「俺はそういうことを言っているんじゃない!」

「食事時が一番無防備で狙われやすいからだろう。一人で食べるより安全だ」

 近からずも遠からずの答えを出したヴェロスに、カルマは分かった風に答えた。

「僕は嬉しい。皆と食べられるのは」

「カルマ、お前は一番近いからいいだろうよ! 俺なんかここから自室に戻るのに一番時間かかるんだからな!」

「その部屋を選んだのはお前だろう、文句を言うな」

 元はヴェロスに用意された部屋だったが、自分の部屋は日当たりが良すぎるから交換しろとアリスタは談判したらしい。

 一足先に食卓の準備をしていたのは、朝の訓練を終えたテオドロス。フィオーレとリャンであった。

「朝から元気だな、アリスタ卿」

「文句を言いつつも、皆様、毎日きちんといらっしゃるではないですか」

「海賊も時間は守るものだな」

「おいおい、いつから毎朝俺に皮肉を言わなきゃならん法ができたんだ、諸君」

「成程、妙案だな」

「あ、ちょっと本気にすんなよ、リゲル」

 女中たちが食事を運び終わり食堂から出て、皆に紅茶が行き渡ったのを確認したオスカーは食堂の扉の近くで待機した。

「オスカー、お前もこちらに座りなさい」

 シリウスはフィオーレとカルマの間の空席に座るように促した。

―――これはまずい。


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