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かつての祈りはいつかの君へ~狂王と呼ばれた少女~  作者: 白野大兎
女王が下す裁断
132/138

第110話 忘れられた名前(2)

 初めて語られる名前。

 傍らにいるシリウスたちは、オスカーの口から語られる真実を静かに待っていた。

「———どうしてその名を」

 どうしてその名を知っているのか。

目線は揺らぎ、手元は震え落ち着かない様子のディックに、オスカーは確信する。

今まで彼の中で止まっていた時が動いたように、オスカーには見えた。長い間、自分でさえも忘れていた傷に再び触れようとしているのだ。

トリシャ・クリスタル。それが全ての事件に帰結する名前なのだと。

「ずっと引っかかっていたんです。この国では家名に鉱石の名を持つ者はそれを身に着ける。けれどあなたのブローチはクリスタル。家名に縁がないのに何故、と。ですが、クリスタル家を調べてもあなたの名前は出てこなかった」

 水晶(クリスタル)

「あなたが祈っていた像に、その名がありました。だから、特別な思いがそのブローチにはあったのではないですか?」

 アカシア神殿の数百もある像にはそれぞれ名前が刻まれている。

 トリシャ・クリスタル。

 レイニー・ディックが熱心に祈っていたという場所を再び訪れたオスカーは、飾られた像の名を一つ一つ見て確信したのだ。決して偶然ではないことに。

「その名を、他の人間から聞くことなど、もうないと思っていたのに………」

 ディックは震える声で深くため息を吐き、両手で顔を覆うように俯いた。

「オスカー殿。あなたの言う通り、トリシャは私の娘です」


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