第106話 真実の告白(2)
シリウスのモノローグです。
全ての大人が善人ではないことを、私は物心ついた頃から知っていた。
裏切る大人、子どもを利用する大人、踏みにじる大人。
血が繋がった我が子でさえも利用の道具にする者さえいた。
中には善人もいたけれど、それは指の数もいない。
それでも、この国の礎になる大人たちはきっと善人なのだろうと、心の奥底では安堵していた。
そして私を玉座に近づけるために奔走した男を、私は疑いもしなかった。
もし疑い、裏切られたなら、玉座に就いた後はその連鎖が続いていくのではないか。
七星卿、そしていつかはオスカーも私の元を離れていくかもしれない。
傍らに誰もいなくなっても、ただ一人で君臨する日が来ても私は平静でいられるだろうか。
初めから何も信じず、何も持たない方がきっと楽なのではないか。
漠然とした不安だけが広がる道に
―――形ばかりの覚悟だった。結局、私は王に相応しくない。
審議の間でフィオーレの目が見抜いた事実が決定打となった。
―――やはりあの方が、全ての首謀者だったようです。
審議の間に集まった諸侯たちの中で、唯一動揺していなかった者がいた。
レイニー・ディック。
先王の代から小評議会の一員として取り立てられた彼が何故…………。
未だ払拭できない疑念の中、シリウスは庭園に佇む男に声を掛けた。
「———ディック候」
少女は女王への一歩を踏み出した。
―――ここで覚悟を決めなければ、私の未来は続かない。