8話 魔法の練習
「キーラ、魔法の練習の為に庭に行きたいんだけど。」
「かしこまりました。お供します。誰か魔法を使えるものを呼んだ方が宜しいですか?」
「いや、なんとなく使い方わかるからいいよ。」
そうして俺は庭へと向かった。
「よし、始めるか。」
魔法チートでステータスチートを誤魔化すと決めたのだ。自重するつもりはない。
俺の使える魔法はH₂O自由操作とH₂O生成だ。
俺は意識を集中して、空気中のH₂Oに働きかける。
そのまま、それらを手元に集結させる。
すると手元には徐々に水球が出来上がっていく。
「素晴らしいです。アレン様。」
「これくらいどうってことないよ。それに、、、」
それに、液体と気体の体積比は水の場合大体1:1700。周囲の環境に負担をかけるか。こっちにはあまり多用すべきじゃないな。
そこまで考えて水球を霧散させる。
そこから水球の生成を魔力に切り替える。
生成する過程で感じる自身の底無しの魔力量。
INTの高さ故か、はたまた転生による影響か。
そうしている間にもどんどん水球は大きくなる。
「あ、やべ、、、」
気づくと屋敷の高さを超えるほどの水球が出来上がっていた。そばで見ていた使用人はキーラともども目を見開き、口をあんぐり開けた間抜けな顔をしている。屋敷の中も騒ぎになっている。
俺は慌てて水球を小さくしていき、自分の身長ほどにまで縮めた。
魔力で作った水は任意で消せるようだ。
出来た水球を真っ直ぐ真上に打ち上げる。
「よし、」
ある程度行ったところでそのまま直角に右に曲げる。
「曲げれた、」
そのまま螺旋を描かせ手元へ戻した。
「あ、あの、、いまのは、いったい、、、」
「なぁに、ここからだよ。」
俺は水球にあるイメージを送り込む。
すると水球は蠢き、形を変えていく。
やがて、水は犬の形を成していた。
成功だ。
そのまま犬を走っているように動かす。
「なぁ、、」
それを見て俺以外のその場にいたものは驚愕する。
まだまだだぜ。
犬をジャンプさせ、そのまま形を鷹へと変化させる。二、三回羽ばたかせた後、その体を水から氷に。
氷はH₂Oが規則正しく整列した状態。H₂Oを自由に動かせるということはすなわち状態変化もとい、水の体積、温度、圧力などの要素を自由に変化させることができると言うことだ。氷の生成操作は当然可能である。
ある程度、氷の鷹を飛ばせた後、蒸発させ消す。
次はと、、、まぁこれが手軽かな。
俺は草の生えた地面に手を当てる。
目を瞑り、草の水分を感じ取る。そして、、
「わなっ、、」
何度目かもわからない驚嘆の声。
草から水分が抜け、枯れてしまったのだ。若干普通に水を操作するよりも抵抗があったが、これで他者の体内の水分操作の可能だと分かった。
「アレン様。そろそろお勉強のお時間です。」
屋敷内から使用人がきて時間を伝える。
「わかった。じゃあ次で最後だ。」
俺は目を瞑って集中する。水分子を気体として自分を中心に生成していく。その範囲はどんどん広がり感覚的に領地を覆うほどとなる。
すると、予期せず領内の様子を知覚することが出来た。なるほどこれは予想外だが良い発見をした。
棚からぼた餅的な発見に驚きつつ作業を続ける。
俺は右手を天に掲げ、生成した水分子をそのまま上空へと上げていく。どんどんどんどん高度を上げる。空を雲が多い辺りが暗くなる。
ポツ、、ポツ、ポツポツポツポツポツポツツツツツツツザーーー
「あ、雨。これもアレン様が………?」
「うん。そうだよ。」
そう言って屋敷の方向へと身を翻し、歩きながら指を鳴らす。
パチン
その音を合図に雨も雲も一瞬で消え去る。
「さぁ、中へ戻ろうか。」
未だ動けないでいる使用人一同に声をかけて、俺は屋敷の中へと歩いていった。
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