6話 領地のために 妹、弟のために その1
庭を眺めながら、昨日の外出で発覚した、ゴミ、糞尿問題について思いにふけっていた。
やっぱりトイレはあった方がいいよね。あとゴミ捨て場が無いとダメだ。ただその処理をどうするか。
纏めて家で焼いてもいいけどかなりの量だから結局匂いがきつくなるんだよな。
んーー。
かなり長い間考えていてそんな俺をキーラは少し怪訝そうにみていた。
ふと、庭の手入れをしている庭師が目に入る。
「あっ!?」
「どうかされましたか?アレン様」
これなら行けるかもしれない。
「昨日買ったプレゼントをお父様に渡したいから明日にでも都合をつけて貰えるよう伝えてほしい。」
「プレゼントでしたら私たち使用人が届けて起きますが。」
「直接渡したいんだ!頼むよ!」
「かしこまりました。ではそのようにお伝えして起きます。」
よし、まぁ3歳児の言うことにどれだけ耳を傾けてくれるかは分からんが言うだけ言ってみよう。
じゃあ今度は妹たちにおもちゃでも作るか。
「キーラ、昨日買った布と羽毛、あと書けるものと紙、ハサミと糸と裁縫用の針を持ってきてよ。」
「あぁ、昨日の。なにかお作りになられるのですか?申し付けていただければこちらでお作りしますが……?」
「手作りしたいの!可愛いアリスとキースのためにね!」
「ですが、失礼ながらアレン様。道具から察するにお縫い物をなさるようですが、確かアレン様は教わっていないはずでは?」
あ、しくった。そうだったよ。
「この前、誰かがやってたところを見た事あるから大丈夫だよ!」
なんという苦し紛れだろうか。
「ですが、もしお怪我などをされては……」
「大丈夫だから!早く持ってきて!」
「作用ですか、かしこまりました。」
キースはしぶしぶと言った感じで使いを呼んで取りに行かせた。
これから作るのは羽毛を詰めたボールである。この世界この時代にはこれといった遊び道具は少ない。昨日もちらっと見て見たが一般の子供の遊びといえば粗雑、下品なものでとても貴族の子供が出来たものでは無い。ボールもありはするが硬かったり重かったりするものが多く、とても赤ちゃんが遊ぶには危険である。実際俺も習い事が始まるまでめっちゃ暇だった。かといって、俺に作れるものも限られてるので無難に布製のふわふわボールを作ることにした。縫い物は家庭科の時間とかでやった事あるのでなんとかなるはずだ。
まず針と糸とを駆使しての円を描き、円周から同じ半径でもう1つ円を書く。交点同士と円の中心同士をそれぞれせんで結びその交点から円を書いた糸を半分にして中心を結んだ線に印をつける。そのしるしと円の交点を通るようにレモン型を書いていく。さらに、縫い代を余分にとって型が完成だ。この大きさで8枚布を切り取り、縫い付けていく。最後の1枚だけ返し口を少し開けておく。裏返したら穴から羽毛を詰め最後に口を閉じる。
羽毛が飛び出さないように縫い目を細かくしたし、腕も家庭科レベルのテクなのでかなり時間が切ったが何とか完成した。
「素晴らしいです!アレン様!まさかこんな球体を作ってしまわれるなんて!これを投げたり転がしたりして遊ぶのですね!確かにこれなら柔らかいのでアリス様やキース様でも安心して遊べます!」
「そう?苦労した甲斐があったよ。明日、お父様にお会いしたあとこれで2人に渡しに行くよ。」
結構頑張ったので褒められると素直に嬉しい。これであとはアリスとキースに喜んで貰えるといいな。
「それはようございますね!それにしてもアレン様は多才でいらっしゃいますね!これはまだまだ、色々な才能をお持ちかも知れません。これから色んなことを試していきましょうね!」
まじかよ……。
想定外の過大評価に内心苦笑いするしかない。
ただ、明日のことを思うと自然と頬が緩むのであった。