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1話 死ぬ
高校3年の冬。
学校帰りの駅のホーム。
「英語だるいわー、単語マジ覚えらんねぇ。」
佐藤 清。絶賛受験勉強中。理系は難なくこなせるが、どうも英語や、古文漢文は伸びない。単語とか覚えるのが苦手な典型的な理系さんだ。
受験への愚痴を吐きながらホームを歩いている。
階段を降りようとすると後ろから叫び声がしてきた。
「待って!誰か止めて!!」
何事かと振り返ると後ろから赤ちゃんが乗ったベビーカーが転がってくるではないか。階段付近は平坦だがその少し前に下り坂があり、誤ってそこで手を離してしまったのだろう。
急に止めると慣性の法則で赤ちゃんが飛び出てしまいそうなので、少し前に出て後ろに下がりながらベビーカーを止める。
よし上手く止ま…ズリッ
「あ、」
階段との距離感を掴めてなかった…。
俺の体はそのまま勢いよく転がり落ちる。
幸か不幸か殆どの人がエスカレーターを使っていたため階段に人はおらず、誰かにぶつかることなく下まで転げ落ちる。
ドシン!!
最後に誰かにぶつかった気がしたが、すでに意識はほとんどない。
俺はそのまま死んでしまった。