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第3話 囚われの美少女

頭が微かに痛む……薄っすらと開いた視界はまだぼやけて居る、だが自身が仰向けになり、真っ白な天井を眺めて居ると言う事は把握出来た。



両手両足は固定され動けない、これはふざける気にもなれなかった。



「お目覚めかな」



男性の優しい声色が聞こえてくる、声がした方向に辛うじて動く首を動かすと視界に眼鏡を掛け白衣を着た笑顔のモジャモジャ頭が立っていた。



見た目は優しそうな青年だがこう言うやつに限ってヤバイ奴が多い……どうせマッドサイエンティストで人体実験でもして居るのだろう。



「あ、あのー……此処って何処ですか?」



「あぁ、此処?説明しても良いけどその前に、君は武姫と言う存在を知ってる?」



カルテの様な物を片手にボールペンを回しながら尋ねる男、医者に聞いたには聞いたが詳しい事は正直さっぱりだった。



「分からないです」



「だと思った、先ずは其処からの説明だね」



忍の答えに男は嬉しそうに微笑むとカルテを置いた。



「武姫、通称ウェープイン達は簡単に言うとそうだね……戦争兵器と同じ立ち位置かな」



「戦争兵器?」



「そう、核兵器とかあの類い、一人で街を簡単に壊滅させる程の力を持つからね、だから核兵器扱い……故に人権は無いんだ」



笑顔で衝撃的な言葉を言い放つ彼に忍は驚きを隠せなかった、人権が無い……悪い冗談では済まないレベルだった。



「じ、人権が無いってどう言う事だよ!?」



「もう君は人間では無いからね、常人離れした力、特殊な武器……どう考えても兵器だよね?」



そう笑顔で微笑みかける男、訳が分からなかった、朝起きて女になり……そして武姫と伝えられ挙げ句の果てには人権は無いと言われる……散々だった。



「そ、それじゃあ俺はどうなるんだよ?」



「運が良ければ……一人前の兵器として生きれますよ」



「おい!?どう言う……」



男の言葉に怒りを露わにし、怒鳴りつけ手枷を壊し状態を起こす忍、その瞬間鋭い頭痛が走ると共に体全身が痺れ、身体が動かなくなった。



「観念して下さい、ウェープインに選ばれた以上、我々WQTOから逃れる事は出来ません……明日から忙しいです、今日は休んで下さい」



そう言い男は何らかの薬剤を忍に注入する、すると意識が一瞬にして遠退いて行った。



『忍……それが君の名か』



気が付けば俺は真っ白な空間に立っていた、何も無くただひたすら真っ白な空間が続く謎の場所、そして其処に一人の少女が座っていた。



『全くだらしないな』



そこまで長く無い金色のふわふわした髪、少し鋭い目付き、長いまつ毛……見た事も無い少女だった。



「君は……誰だ?」



『誰だ……か、まだ分からないか……それも仕方ないな』



忍の問い掛けに腕を組み一人で何かを納得する、訳が分からなかった。



恐らくこれは夢なのだろうが今朝見た夢と同じ……現実の様に感じるリアリティだった。



床を歩けばコツコツと音がする、だが幾ら歩こうとも少女に近付く事は無かった。



『まだ時じゃない見たいだ……その時が来れば自ずと私が誰か分かる』



その言葉を残し何処かへ歩き去って行く少女、その瞬間忍は目を覚ました。



「此処……は?」



咄嗟に起き上がり辺りを見回すが六畳ほどの部屋にふかふかのベッド、カーペットが引かれその上に置かれた中規模の机、そしてテレビ……この部屋が何なのか理解できなかった。



先ほどの男の言動から予測すると独房の様な場所に入れられて居てもおかしくは無い……だが此処は一般的な一人暮らしにピッタリの部屋、人権を無くした者の部屋とは思えなかった。



一先ずベットから立ち上がると扉を開ける、扉の先は数メートルの廊下にキッチンとシャワー付きトイレがあり、その先に玄関がある……一般的な部屋だった。



だが玄関の扉に手を掛け開けようとしても扉は開かない……ふと部屋の隅を見ると監視カメラが設置されていた。



「一応監視されてるって訳か……」



逃げる事は不可能……今は大人しくするしかなさそうだった。



忍はリビングに戻るとベットに座りテレビを付ける、今日1日であり得ない体験をいくつも経験し、理解が追いついて居なかった。



自分が武姫と呼ばれる核兵器的存在になったやら人権が無いやら……意味が分からない、それに夢の中で話した謎の少女も気になった。



「分かんねぇ……だがそれにしてもあの力……」



手枷を破壊した時の馬鹿力を思い出し手を握る、もう普通の人間では無いと言う事は何となくだが理解した。



本当は理解したく無い……理解すれば自分が武姫になったと認めてしまう、そうすれば人権は無くなり、妹や母とも会えなくなるかも知れ無い……無論友達にも……そんなのは嫌だった。



まだ沢山遊びたい、女の子と付き合ったり……青春したり……こんな得体の知れない場所で閉じ込められる日々では無く……自由に青春を謳歌したかった。



溢れる涙が止まらない……だが諦める他なさそうだった。



この場所が何処なのか分からない……それに加えて脳に妙な物を埋め込まれ完全にWQTOの支配下……美少女になれたと喜んで居たのもつかの間、あっと言う間に最悪の事態、やはり神は信じるものじゃ無かった。



「明日忙しいって言ってたな……もう寝るか」



男の言葉を不意に思い出すと忍は半分ふて寝でベットに転がり目を閉じた。

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