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第2話 いだ君「以遠、易化、遺戒」
「俺か。
ある人の死んだ親からの遺言、教え、遺戒というのか?
それがどうにも小難しい内容で、ご飯の食べ方の順番とか、墓参りの順番とか?
その子供はもっと簡単に易化しろってよく愚痴ってたんだ。
その子は墓参りは毎年行ってたけど、転勤になってより遠く以遠な場所に住むと、墓参りもあまりできなくなっちまった。
で、その子供が大きくなって子供が出来て、老人になって死ぬだろう。
葬式も終えて、火葬してだ。
遺骨を受け取ろうって時に、どこにも見当たらないの。皆、探したんだが、どこにも見つからない。
盗まれた? 誰が何の為にって、騒動になった。
そういや、その葬式で夫婦と思われる男女が来てたんだが、その二人の事を知っている人が誰もいなかったんだよ。その人たちが盗んだんじゃないかって親族が話し合ってたんだ。
それでたまたま、参列者の一人がその人の独り言を聞いたらしい。
『あんたも墓や遺骨が無い方が、簡単でいいだろ?』って。」