61 精神的な何か
「ユウミは今幸せ?」
事が終わってさっさと下着を付け始めたユウミに僕はそう聞いた。
うん、まあだいたいは。
ユウミの答えは意外だった。そういうことをしたいからB計画に応募したと言ってたユウミ。だから、今は幸せだと言うと思っていた。
確かにそういうことをするのは楽しいけれど、闇雲にしたって全部が同じように楽しいわけじゃない、ということが判ったから。
何を意外そうな顔をしてるの?私だってちょっとぐらいは考えるわよ。
ユウミにそう言われてしまった。
ジェイミィはさ、そういうことの前とか後に話をしたがるじゃない?
「あ、うん」
それはそういうことをする相手に、うーん、なんというかさ、精神的な何かを、繋がり、みたいなものを求めているんでしょ。
相手との、というよりそれは自分のためという意味合いが強かったけれども、精神的なものを求めているという部分は確かにそうだった。
僕は自分を受け入れてくれる相手とそういうことをしたかった。
最近はさ、そういうことだけじゃなくて、その前後の部分、っていうのは相手によって違うし、ジェイミィみたいに話をするというのもちょっといいなと思ってるの。
もちろんフランみたいにマリア派っていうんじゃないけど、したい相手とするというのは重要だと思うわ。
「それは僕もそう思うよ」
そういう風に思うとフランの考えていることも同じじゃない?誰としたいか、ということじゃなくて、特定の誰か以外としたくない、というところに焦点があるからあの子も生きづらいのよ。
「そっか、そうだよね」
マリア派のことを自分の主義主張を押し付ける頭の古い人たちだと思っていたけど、自分が希望することをしたいだけなんだ。
そう思うと彼女らが悪いわけじゃなくて、今の制度と合っていないだけだと思える。
じゃあまたねー、とコテージを出て行ったユウミを僕は少し尊敬した。
ユウミもフランもちゃんと自分がやりたいことがわかっている。
シャワーを浴びながら、僕は自分が何をしたいのかすらわかっていないことにやっぱり焦りを覚えていた。
それから僕はベッドのシーツを取り替えて、洗濯は、まあ後でもいいや、それより草を摘んで鶏小屋に持っていかなければ。
プランターの草は、摘んでも摘んでも次々に新しい葉を出して繁っている。一応水と肥料は与えているけれど。
僕たちの故郷の惑星も外から見ればこんなものなのだろうか?一応寝起きする場所と飢えない程度の合成パンと強化スープはあるけど、どこに行くこともできずにぎゅうぎゅう詰めで。
僕が鶏に与える1日分の草を摘んで鶏小屋に行くと、その前でアウラとサニアが話していた。なにを話しているのか聞こえなかったけど、2人とも笑っていた。
僕が姿を見せるとサニアはじゃあねと手を振って去っていき、僕はアウラに聞いた。
「サニアと仲がいいの?」
うん、サニアは話をすると面白いわね、とアウラが答える。
この才女2人は、きっと僕なんかには理解できない難しい話をしていたんだろうけど、アウラが笑っていたことに対して、よかったと思えた。




