60 低きに流れる
ケイトは悩めばいいと言った。B計画の任期はまだ半年以上残っている。まだ時間はあるとも言えるけど、ここにいると事件に巻き込まれたり、次々考えなければならないことが起きる。
だからあんまりのんびりしているわけにもいかないだろう。
全く、どうしてこんなことになってしまったんだろう。僕は普通に暮らしたかっただけなのに。
ここに来てアウラに出会った。彼女は僕の想像もできない人生を送ってきた。アウラには幸せになって欲しいと思う。
リザリィは優しかった。多分僕はリザリィのことが好きだ。リザリィがカイルと仲がよさそうに話しているのを見て面白くなかったし。でも今はリザリィが今のパートナーの世話を焼いているのをみても「あ、いいなぁ」と思うぐらいだ。だからリザリィのことはちょっと好き、ぐらいなのだろう。
ユウミは、そういうことをするならユウミは魅力的だけれど、彼女のことは好きというわけじゃない。ただ、見ていて危なっかしいところがあるから、うまくやってくれたらいいと思うぐらいだ。
フランはかわいいとは思うけれど、考え方なんかは僕と違う部分も多い。彼女にはタキタがいるから恋愛対象にはならないけど。タキタとフランは故郷に惑星に帰ったら結婚するんだろう。
そういえばエリナは、まだ僕の事を好きでいてくれるんだろうか?
僕は最近エリナのことを思い出すことが少なくなっていた。だったら、エリナが今でも僕の事を待っていてくれるなんていうのは僕にとって都合のいい考えなのかもしれない。
僕がちょっとやそっとで結論が出ないことを考えながら、昼食後にコーラを飲んでいるとフランがやってきて、
それを飲んだらちょっとコテージに来てくれる?
と言った。なんだろう?
リザリィとペアになったときにやり始めた掃除当番を決めるというやつは、フランとも実行している。フランと一緒にいる間はこういう事務的なことはちゃんと決めておいたほうがいいと思ったからなんだけど。今週はフランが掃除をするはずだったから、ソファを動かして欲しいとかそういうことなんだろうか?
どうせたいしたことじゃないだろうと思いながらコテージに行くと、そこにいたのはユウミだった。
はぁい、ジェイミィ。そろそろしたくなるころだと思ったから来たわ。
またあいつらにハメられた。
「はぁあ」僕はため息をついた。
ジェイミィがフランを襲わないように、ジェイミィは私とすればいいのよ。
ユウミはベタベタと僕に触れてくる。
力ずくで迫られたらフランも逃げられないかもだしー。
「僕はイヤだと言ってる相手とそういうことはしない、って言っただろ」
うん、ジェイミィを信じてないわけじゃないけどさ。
ということは今まで危なかったこともあったのか?あったんだろうな。そういうことをしたいからB計画に応募したと言ってるヤツもいるし。
そういうことだけしたいんなら夢の国に行けばいいのに。
だから私とそういうことをすればフランも安心だしさぁ。
「それ、自分がしたいだけなんじゃないの?」
そう聞いたらユウミはうふふと笑った。
でもそれがフランの安心材料になるなら。
結局僕は流されてしまった。




