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28 リザリィの朝

次の朝、リザリィの隣で目覚めた僕は思わず、まだ眠っているリザリィの唇にキスをした。

チュっと意外に大きな音がしてそれで目が覚めたリザリィが、何をするのよ!?と上半身を起こして、自分がなにも着ていなかったことに気が付いてあわてて掛け布団を胸の辺りまで引き上げる。

「えっと、キスですが、、、」

朝から任務を遂行するの?と一旦上げた布団を下ろそうとする。

「いや、おはようのちゅーとかしちゃダメ?」アウラとは初めてそういうことをして以来、毎朝していたんだけどな、いやいや、これは考えてはいけない。僕はあわててその考えを振り払う。

うん、まあ、別におはようの、ならいいけどさ。珍しくリザリィの歯切れが悪い、と思ったらそんなことはなかった。

そういうのなら大歓迎よ、と思い切り抱きつかれた。ちょっと痛い。僕は朝から任務が遂行できそうな気分になったけど、残念ながらそんな時間も無かったし、2人同時に起き出した。


リビングで僕は習慣のように電気ポットのフタを開けてから、リザリィはコーヒーの匂いも苦手?そう聞いた。

私がコーヒーがあんまり好きじゃないというだけで、他人が飲んでるものの香りにまでどうのこうの言わないわよ。ま、コーヒーならジェイミィ1人で飲んでね。

僕は遠慮なく1人分の合成インスタントコーヒーを入れた。カフェイン抜きのデカフェだとわかっているのにコーヒーを飲むと目が覚めるような気がするのはどうしてだろう。


リザリィと2人で食堂へ向かいながら、「最初の朝はなんだか照れくさくてどんな顔をしていいのかわからないな」そう言うと「お互い様なんだから普通の顔をしていればいいわよ」

リザリィは答える。リザリィは頼りになるお姉さんみたいだ。


その日の朝食にはまた変わったパンが出た。周囲だけが固くて茶色で真ん中が柔らかくて白い。これはどうなっているんだ?と思っていると、タキタが説明を始めた。「これは大きく焼いたパンをスライスしてあるんだ」

「タキタの家はパン屋さんなの。上流階級の人が買いに来るような本物パンを作ってるのよ」リザリィの反対側の僕の隣に座っていたフランが教えてくれた。

僕の故郷の惑星で国民の80%を占める中流階級のほとんどは工場やマーケットに勤めているけど、個人商店というものも存在する。タキタの家みたいなパン屋や靴修理屋や理髪店などだ。

四角い型に入れてパンを焼いて、それをスライスしてサンドイッチにしたりするんだよ。へぇー。みんなは本物パンの話で盛り上がる。


みんなが今朝はどんな話をしたらいいんだと思っているパートナーチェンジの次の朝を狙ってこの変わったパンを出してくれたのだとしたら、ヤコブは気配りができるいい人なんだなぁと思う。


昼間、鶏小屋の横を通ったのにアウラの姿は見えなくて、豚小屋でリザリィとカイルがなにか作業をしているのが見えた。何がおかしいのか2人で笑っている。そうか、この2人が豚担当だったのか。

ということは先月は夜も昼間もリザリィとカイルは一緒だったんだ。ま、いいけど。いいんだけどね。


その夜は、所長が「今夜は早い時間から雨が降りそうです」そう言うから、僕たちは夕食が終わってコテージに引き上げる時にソーダとコーラを入れてきた。

リザリィはソーダを飲みながら「そうだ、掃除当番を決めましょう」と言って、それはいい考えだね、という僕の返事を聞く間もなく「今週は私がやるから来週はジェィミィね」

あっさり決まってしまった。掃除当番なんてたいしたことじゃないけどどっちかがやらなきゃならないことだから、こんな風にさっさと決めるのはいいと思う。こんな子と結婚したらラクかもしれない。


そしてさっさとシャワーを浴びて任務を遂行する。その後にベッドでいろんな話をした。これはこれでいいなぁ、と思う。僕はリザリィの柔らかい髪がお気に入りだ。

僕はリザリィとは最初からけっこううまくやってると思っていた。だから僕はある夜リザリィに聞いてみた。「どうしてパートナーチェンジの時僕を選んだの?」


それはね、結婚したくなかったからよ。


え?あの、話が繋がりませんけど?

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