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26 新しいペア

その日の夕食には1人1本の合成ソーセージが出た。どういう意味だよ?全く誰の指示なんだ?僕は心の中で毒づいたけど久しぶりの合成ソーセージは美味しくて、そんな自分が少しイヤになった。

特に何を話すでもなく、アウラの隣で食べる最後の夕食はあっというまに終わってしまう。


カウンターにトレイを返しに行くと「では新しいペアを作ってください」というヤコブの声を待たずにアウラはもう何人かから話しかけられていて、僕はというと誰かに不意に片手を掴まれた。

僕の手を捕らえたのはリザリィだった。「ジェイミィ、ペアになりましょ」そう言って僕を引きずるようにヤコブの方へ歩いていく。


リザリィは背が高い。ここにいる12人の女の子の中で一番高いんじゃないかな。そして僕は、当時の男性の平均よりほんのちょっと、まあ5センチぐらい背が低かったから、僕とリザリィの身長はほとんど同じだった。

「はーい、ペアになりました」リザリィはヤコブから1番の番号が付いた鍵を受け取った。


自分のバスケットを抱えてスタスタ歩くリザリィに僕も自分のバスケットを抱えてやっと追いついた。「ちょっと待って」という僕に振り向いたリザリィは真顔で聞いた。

イヤなの?えっと、その、イヤとかそういうんじゃないけど心の準備が、、、僕は情けないことをぼそぼそ口にする。

「全員と1回はペアになるんだから今回が私でも問題ないと思うけど」「あ、はい、そうですね」納得させられてしまった。

未練たらしく食堂の入り口を振り返ると、新しくペアになった2人組がゾロゾロと出てくるところで、華やいだ雰囲気。僕はまだこの世界に慣れることができないでいる。


1番のコテージは食堂の南東、畑に近いところにあった。

玄関のドアを開けると自動で灯りが灯るところは12番のコテージと同じだけれど、なんとなく空気の匂いが違う気がした。


リビングに入って気が付く。あ、ソファの色が違うんだね。リザリィは自分のバスケットをベッドルームに作り付けのクローゼットに入れながら、

ジェイミィもバスケットをもってくれば?と言って、ベッドルームに入った僕はカーテンの色も違うんだと気が付く。

細かいことをするものねぇ、とリザリィが言って、僕がどうして色を変えたりするんだろう。リザリィは少し考えてから

「間違えて以前のペアの名前を呼ばないようにするためじゃない」と言った。


外はもうすっかり暗くなっていたので僕はベッドルームのグレーに白い幾何学模様が入ったカーテンを閉める。

リビングに戻って、12番のコテージのソファより少し濃い茶色のソファに座る。本当にこれが以前のペアにこだわらないようにという心配りなら、

B計画はヘンなところで人間らしくて肝心なところで実験動物扱いだ。


僕は、アウラのことは忘れられるようなことではないけれど、リザリィの前でアウラのことを考えるのはよそうと思った。


荷物の整理をしていたのか、遅れてリビングに来たリザリィに「コーヒー飲む?」と聞くと、

ありがとう、でもコーヒーはあまり好きではないの。ソーダを入れてくるね、と言うから、

じゃあ僕もコーラにするよ、と連れ立って食堂に向かった。


食堂ではケイトが独り、カウンターにもたれてソーダを飲んでいた。

こんばんはー、挨拶だけかわして、僕たちはソーダとコーラを入れてすぐにコテージに戻ったけれど、帰り道でリザリィが言う。

ケイトは仕事熱心ね。え?僕は単にケイトはソーダが好きなんだと思っていた。

あれ、見回っているのよ。夜になってみんなコテージに戻ってそこでもしペアの片方とケンカとかしちゃったら、一人になりたくても行くところは食堂ぐらいしかないから。

あー、そっかぁ。僕はそういうことを考えられるリザリィがすごいと思った。他人の言葉や行動の裏側の意味を考えるとか、そういうのは僕は得意ではない。


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