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第二幕 漆黒の魄


 第二幕 漆黒の魄


 そこは永久に凍りつかせた地にある。

 然し……たった一輪だけの凍花は咲いていた。


「いいか……よく聞けよ。第一天…使徒。オレは同胞……とでもいうような事にある。魄を持たない人間の脱け殻の睡眠り続けている氷壁は崩し破砕こわ割壊くずす事も出来るが……それも幾らかの僅かな力でしかない。オマエのいる場所からも見えている。黒く黒檀のように耀く氷柱に睡眠る者。サタン。不思議と地上にいた刻でも……そんな地上に堕ちた美貌天の話はあったんだ。そこで動けずにいるオマエの事にもな……ふふん。何故か不思議な事だよ」

「……何が……汝は。天の力も既に消失きえかけている我に……何を話しかけている」


 ミカエルの後背せなかにある光の翼羽はねも…その片方が壊折こわ壊失うしなわれていた。


「ふふん……天の光輝なる光の鎖はオマエにでは断ち切る事は……たぶん出来ないだろう。唯……然しているだけなのだからな……」


 確かに身動ぎ一つを……第一天…使徒ミカエルは乾いた氷柱に繋がれている侭にあり、天より投げくだされたその光輝な光の鎖で繋がれている侭……何かにと出来ずにいたりする。


「……そこでだ……」


 何かに思うような含みを意味した話しぶりのようにもあった。


 然して……凍る地の乾いた氷柱に天の投げくだした光輝なる光の鎖に繋がれてもいるミカエルの事が見えているようにも……それは漆黒の暗闇のなかに……ミカエルのいるそこからは見る事は出来ない氷柱よりその後方から話しかけているようにある。


「何を……汝……どこから我に……何を話しかけて……いるのだ」


 何故かその刻……不思議と思うような事がミカエルの意識の片隅で廻った。何かそれは……永久にあるようだという。凍る乾いた氷柱に天より投げくだされた光の鎖。それからも解けるというような期待を一瞬の刹那の刻。ミカエルは思うようだったりした気がする。


「……我に……今のようにある我が……いつかに天の緋き魔石を守護していた刻にあった力もその殆どが消失うしないかけている。残された片方の翼羽はねに宿る光の力ですらも……」

「そうなのさ……オマエに残り、それにある翼羽はねの光の力では……唯それという侭……然しているだけの凍る地の乾いた氷柱にある。そんなオマエに天より造られた光輝なる光の鎖は断ち切る事は出来るか? たぶん……それはオマエもよく分かっているだろう。今のようにあるオマエに……でも……方法は……ある」

「……ん」

「サタンは地上よりこの地……。凍る地の底に堕ちた刻……。それまでは地上の暗闇のなかにうごめき……地の表面を這うだけの姿形のようだったと……オレの意識にいつだったかそう話しかけてきたが……見てみろよ。黒く黒檀のように耀く氷柱に睡眠るサタンを……。地上より更に奥深き場所。爆熱の地……。そこに流れる灼熱の河よりも……もっと地下にあるこんな凍る地。超時空間の天は生まれた刻。それより遥か遠き旧き刻から存在する凍りに閉ざされた地。天はこの地を永久の幽閉の地としたようだったが。サタンは……それまでいた天の楽園。更に地上よりこの凍る地まで堕ちた刻に何があったのかは知れないけどな……。だが……然して睡眠り続けている。地上にあった人間にしては計り知れない刻にあり。そこにあった。確かに存在していた文明のなか……ミカエル……サタン。たぶん他にもそんなような存在を想っていたのか……。それにもあるようにいて、たぶんそれは幾つかその呼称名よびなもあるようだが……何故か不思議と天の楽園でいた。いつからか地上にあった人間たちの文明世界でも知る……。それにある何かのお伽噺に出てくるような。その名もそうだが……人間たちが想っていた姿形をしてもいる」


 それにある話しぶりにいる。

 然してミカエルは唐突にある話しに……それは思いにもよらずにある話の事に驚く様子のようだった。


「地上に……? そんな事があるはずもない」

「……いいや……そんなようにあるんだよ。そういうオマエも天の楽園の第一天…使徒。地の底に堕ちた堕天使。そんなように話は……地上ではまるで……お伽噺のようにもある。それが今……さっきという刻に焔炎に包まれた侭のオマエは目醒めた。話の……地上であったお伽噺はいったい……いつに出来た? 誰が知っていた。何かが変だと思わないか……。オレが唯一人……永久に思うようにこの地でいた。然して地を溶かしてしまうようにある爆熱の吐息を吐き続ける番獣。この凍る地の天を閉ざす灼熱に流れる河を作り出している天の番獣も……オマエが堕ちてくるよりも遥かに以前まえよりいた。見ていたオレがこれを話している。間違いではないさ」


 何かに思う。不可思議なようにある話。

 ミカエルがそれに思い考える間もなく暗闇に響いて聞こえてくる声は話しを続けている。


「それから……たぶんオマエは分からない事なのかも知れないが。……でも……そこでだ……一つ提案がある。きっとそれはオマエにしても損ではない話のはずだ」


「……いったい……汝……我に何を……」


 戸惑いも確かに。ミカエルは己自身の思いにある事を感じてもいた。すると……その漆黒の暗闇から話しかけている声は……ミカエルのいる場所からは見えているようにもない事にも……そんなようにある話も続いた言葉に話しかけている。


「オマエも見た通りにある。この凍る地の天を閉ざしている。それにある地も天の番獣が吐く吐息で爆熱に溶かし続けている灼熱の河……。それを突き抜けて焔炎に包まれたオマエはこの凍る地に堕ちてきた。今…然している乾いた氷柱と天の光輝なる光の鎖に繋がれてな……。最初から氷柱と一緒にこの地の底に堕ちてきたんだよ」

「…………」


 突然の言葉。それは狐擬こぎにでもなるような。そんな思いにもなるようにある話だった。然している漆黒の暗闇からの声のあった事に……ミカエルはその言葉を詰まらせたようにして発止とめた。


「何を……ふふん。地上にいつかにいた狐のように見える。そうだな……天の者は……それを知らぬか……使徒がゆえに。疑り深いと逡巡する……いつかの地上にいたそういう生命体への皮肉な言葉のようだよ」


 それは何かに思う。

 超時空間の天という事も。

 それにあった美貌天…第一天…使徒ミカエル。


 瞬間のような刹那の刻……。


 永久に流れている刻にあるように思えた。


「……何を……話しているのだ。そんなようにあるはずなどでは……」

「それが……そうでもあるんだよ。今からでは……たぶん二千年ほど以前まえの事だけどな……。その刻に……サタンがオレの意識に話しかけてきた。然してオレは何故……同胞たる人間の魄の脱け殻を……こんなように天を閉ざす吐息を吐く。超時空間だという天……その天に飼われているという番獣に投げ入れてやっていたりしているのか……こんな凍る地の底に何故いるのか……。凡ては……ほら……オマエの目の前に……そこにある黒く黒檀のように耀く氷柱に睡眠り続けている者。サタンがその凡てを……オレに教えてくれた」


 まだ……どこか燃え続けている焔炎に包まれた睡夢ゆめでも見ている。そんなように思うミカエルがいた。


「然し……汝の……信じろというほうが……」

「気がつけばこんな凍る地の底……その刻に……あぁ……その後にサタンはある話の事をオレに伝えてから……ずっと……そこで睡眠り続けているが……だが……それにあったオレに……いつだったか……不意にあるように天から……ふふん。オマエたちのいう超時空間の天は……オレにこの凍る地の天を溶かし、その爆熱に溶ける地も灼熱に流れる河を作り出している番獣の世話をするように伝えられた。オレは何故か……それに不思議と疑問や錯覚だとは思えなかった。現実にそれはオマエも知っているだろう。それよりオレは何故……唯一人……この場所から離れる事も出来ずにいる……。だが……然して不思議とそれもいつしか……オレは知っている」

「……そんな事はない……。我は姿形ある刻にいた地上の生命体を見守りながら……然して緋き魔石といたのだから……。それは……たぶん超時空間の天からすれば……瞬きにもある刹那の刻にあった。そんな天が生まれた刻に……地上にいた凡ての生命体は……」


「……消失きえたのだろう? 」


 漆黒の暗闇より不意にあったそんな言葉……。


 ミカエルは思うようにいた天の楽園の凡てを……何故かその暗闇より響いてくる声は……それだけの言葉で……凡てを語っている。


 そんな気がした。


「オレは唯一人ただひとりこの地の底……それは何者と知れない奇妙な天より生まれし番獣に……。最初から気分の悪い。気がつけば……そんな悪夢を見ていると思ったよ」


「汝……は……何者なんだ……」


 ほんの僅かの刻……妖暗な風が……。

 漆黒の暗闇のなかを通り過ぎてゆく。


「……ふふん。さっきも言ったように……オレは……唯一人いる。……人間さ……」


 凍えた空気に流れた一迅かずはやの風。

 それはミカエルも含んだ凡ての想いを伝えている。


「然し……汝……それならば……何故……そこに睡眠るサタンを……」

「いつか……オマエにも解る刻がくるだろう。こんな凍る地の底にいては……それもその侭だ。天の第一天…使徒ミカエル。緋き魔石の守護者ガーディアン。オマエは……地上の生命体。それを見守りながら緋き魔石と天の楽園より深き聖なる場所に共にあったのではないか? 」


 それはミカエルの想い。

 何かそんな凡てを見透かした声の響音のようだった。


「天の……超時空間の天に……我は……抗えようがない。汝の言った言葉では……我は……」

「……ではオマエでは断ち切る事が出来ない天の光輝なる光の鎖。その侭にいては……たぶん。永久に凍りつかせている事だろう。然し……オマエに残っている天の光。壊失った翼羽。もう片方の壊折れた翼羽に幽かに宿る光の力。それをオレにくれないか? 」


 躊躇…だったのだろうか……。

 その刻……。


 ミカエルの想いに……それにある何かが揺れ動いた。


 暗闇のなかでの会話も……それは不思議な空気と淀んだようになり、然して……その空間にある辺りも動いてはいない風があるようだった。


「だけどな……サタンはオレの意識に話しかけてきた刻に……こうにも言っていた。天の光……天の力は……超時空間の天によって産み出された者に宿る……と。それにある者でなら……オマエならその目の前に聳え建っている氷柱も破砕くだく事が出来ると。だからオマエに今ではまだ出来ない……それと繋がれている。凍る光輝なる光の鎖は……天の力を持ち今も黒く黒檀のような耀きに睡眠る。氷柱より解き放たれたサタンならそれは断ち切る事が出来るだろう。サタンは天の楽園の守護者ガーディアンだったのだからな。天により投げくだされた天の鎖。それは天の第一天…使徒だった者でなら……きっと出来るだろう」


 自信に溢れた。

 そんな言葉のようでもある。


「もし……我が汝の話すように……然して……汝は言う。サタンはその刻に我をこの乾いた氷柱にある天の光輝なる光の鎖より解放すると……でも……そう言えるのか? 何を話したか。我に汝は何を話しかけているのか……よく分かっているのだろうな」


 どこかで分からない不思議に思う。

 何かの気持ちの衝動が……ミカエルの意識に廻っている。


 然して何故かその者。

 漆黒のなか見えてはいない暗闇より凍壁に微かに遅く響いて聞こえている声は……ミカエルの意識を通り抜けた思考の片隅を刺激する。


「天の光……第一天…使徒ミカエル。オマエの白銀に白く美しき……まだ残された片方ある翼羽に宿る光の力も……その侭でいるだけではいつかに消失てしまう。そこで……これはどうだ……オマエの持っている光の翼羽……その力で……黒き光を放つ。黒檀の彩色をした目の前に見えるようにある氷柱を破砕してみないか? どうせこの侭では……その翼羽に宿りし光の力も……そのうちに消失てしまうだけだ」

「汝は……我は何者なんだ」


 どこかで見た。

 そんな既視感デジャヴュに感じた。


「ん……思い出せぬ。汝とは……いつかにある記憶の違和感があるように……然し……そんな記憶の錯覚だとは思えないようだった。我も永き睡眠りにあったようだと汝は言う。それにより我は記憶を辿り……いつかにある映像……今ある映像……。それが重なりそうに思うようになる。でも……何かが違うようにも思うが……。もしや……既にどこかで……見ていたのだろうか。既視感デジャヴュ……なのだろうか……? それよりも何か……いつの間にという二千年……焔炎に包まれ燃え続けた刻の流れるその内側で……それに睡眠りながらも既に見慣れた……未視感ジャメヴュ……なのだろうか……」


 そんな話しにあるその刻に……凍りついた地の氷壁が幽かに何度か揺れた。


「さて……超時空間の天は……オマエが目醒めようとしている事に気がついたようだな……。天の持つ粧青き魔石。瑠璃金石……今にその力が解き放たれ地上に向かって降ってくる」


 そんな漆黒の暗闇のなかである声。

 すると不思議な空気に揺れ動いた微かな風が見えた。


 それは凍る地の氷壁を伝うようにして少しずつ……沈み込んでゆくような粘りつく。それにあるようにもある凍りついた地にまで……何かにある力の揺らぎを感じさせている。


「……我に残された天の力……天の光。まだ確かに宿る光の力も片方の翼羽……確かにそれにあるのは……話しのように目の前に黒く耀く氷柱を破砕くだく事はできるだろう……。然し……そんな天より生まれ培われし我のその天の力を解放したとしても……それは超時空間の天は……そんな力の揺らぎ……我の持つ揺るぎなき光の翼羽による事だと知れば……」


「それが……狙いだ」


「……サタン……? もしや……汝は」


「ふふん。オレは……唯一人この凍る地の底。それにいるだけの人間だよ。さあ……もう迷う刻も少ないようだ……。オマエの翼羽に宿りし力も……段段とその力強さが弱くなってきているようだ」


 それは見えるようになどとない漆黒の暗闇からのなか……どこからか話しかけている声。然してある話の何かに思いも狐疑逡巡しているようなミカエル。


「惑わすが……疑り深く用心した狐などいない。然し……もはや残された刻も少ない。決めるのはオマエのようだ」

「こんな地の底にまで堕とされても……まだ鼠首両端と何かに決めかねていては……躊躇しているのか? 何者も予期しない。それはこの地を裂割る。それが必ず起こる。そうすれば……オマエはその隙間から窺い見たらいいだけではないか? 暗闇に閉ざされた場所にあった鼠首ではないか」


「汝は……もしや」


「さあ……刻はきた。考えている残りの刻も……ミカエル。オレに……その残された一片ひとひらの翼羽に宿りし最後の光の力をくれ……」


 ……やはり……汝は……。


 ミカエルの思う間もなく……。それは黒く黒檀のように耀く氷柱を目掛けて……キラキラと飛散する。黒く耀く小さな水晶のような結晶にも似た欠片が……漆黒の暗闇を黒き光で明るくしたようだった。


「刻は訪れを待っていた。この刻を……我は復活する。幾千という刻に地上に向かって堕ちてゆけば……忌み嫌われるような姿形に……それよりも奥深き場所。凍る地にいてはどこかそれも地上にいた人間という姿形にすら似ているようにも。然し…凍る地の天を閉ざしていた爆熱の地をも溶かし灼熱に燃える河……それにあるのも……ふふん。天などが造りし……ふふん。番獣だと……? それもそろそろ永久にその役目からも睡眠らせてやろう。我こそは……大魔王。凍る地にまで貶められしその凍る地に君臨すべき者。凍る地の王……大魔王サタン


 ミカエルの壊失した翼羽。


 然して残された壊折れた光の力も宿していた翼羽……。


 それは……黒く黒檀の彩色に耀く一本の氷柱に向けて……ゆっくりとした動きにあるようでも、どこか素早い風光を起こした。


 残された天の力。それにより超時空間の天は……きっとミカエルの光の力の揺らぎによった事だとあるのにもそのうちに超時空間の天は……気がつくだろう。


 永き睡眠りから醒めようとしていたのは……サタン。


 それはどこからか……凍る地にある漆黒の暗闇のなかで、ミカエルに何事となく話しかけてきた者でもあった事に気がつく。


「やはり……汝は……」


 然してミカエルの壊折れた翼羽に残された。僅かな……幽幻に燃えた光の力も……その羽ばたきは疾風となり、そこにあった黒く耀いていた一本の氷柱を破砕くと……その飛散した黒き耀きを帯びた水晶の欠片を何かが突き抜けてゆく。


 すると裂割れた氷柱のなか……そこに睡眠る者。


 ミカエルが朦朧とした意識にいたなか……残された最後の力。超時空間の天により造られし秘宝なる光の力。


 残された。壊折れた翼羽からの疾風なり風は緋き刃となり……。


 永久に凍りつかせた氷柱を破砕いた。


 然して……そこに現れた者。


 さっきまでミカエルに話しかけていた暗闇からの声……。


 それはもう既に聞こえてはこない。


 すると……刻も同じくして。


 そこに吸い込まれるようにして解き放たれた氷柱も魅惑的だというような。そんな黒く輝いている。二つの漆黒の翼羽に包まれた。ミカエルの破砕した氷柱のなかに睡眠るようにもあった姿形に……それは……引き寄せられたようにも永久に離れた何かを求めるが如く……飲み込まれるようにして消失た者がいた。 


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