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第二幕 サタン


 第二幕 サタン


 天は……無慈悲である。何者の想いに……その祈りにすら応える事はない。


 人間は……いつかに姿形ある地上の楽園にいた人間という存在の者たちは……天の生まれし刻よりも遥か以前まえから……その文明創造を満たすようにある。そんな……人間なりの都合にった天の存在を生み出していた。


 それは様々な形態かたちの文化を経ていては繰り返す……。人間の人間による世界統制においてみても文明のなか大きな役割を持つようにもなっていた。然して出来上がったその天……人間の性質上に因った文明のみちなりしときの狭間にあってはその転換期に人間という生命体は互いに争乱あらそい合う。そんなような天……人間の創造的発想をして生み出した。それに存在するだけの事のようにもあるだけの天……人間の想う天……。人間の創造つくり出した文明維持の役割を担うだけの天のようだった。


 それは時に集団的な力を持ち、然して幾つにも解離した天というようでもある。然し魄の祈りの力……その糧を得る天は生まれた。人間という生命体にしてもそれは遥か遠き時間も経ていたような刻だったに違いないだろう。でもありそれも魄の祈りの力の糧を求めていた超時空間にある天にしては刹那の刻。それだけでしかない。


 天は生まれた。然してまだ楽園の残っていた地上の生命体……人間をも含む凡ての生命体の刹那の刻を見守り続けていた。


「おい……聞こえるか? オレの声は」


 何かを思い出せばそれに憂い思い。

 然して幾千年という刻に凍りに閉ざされた暗黒の幽閉の地で永き睡眠ねむりから醒めたばかり。そんなようにいたミカエルは誰と分からない声によって突然に問いを話しかけられた。


「随分と永き刻を睡眠ねむり就いていたな。オマエがこの場所に堕ちてきた刻は……まだその身体も焔炎ほむらに包まれていては……多分……二千年はそのまま燃え続けていたからな」


 どこかで……。

 それもいつかの遠き刻を経過すぎて……。

 何か……記憶のどこかで聞いたようでもある声に思った。


「誰だ汝は……我の事を…知っているのか……? 」


 凍る暗黒の幽閉の地。

 そこに何故か不思議な空気が流れた。

 幾千年という永き刻を睡眠ねむりから醒めたばかりでもあった。渇いて凍る氷柱に繋がれた侭にあるミカエルの聞いた声。


 何か……それのせいなのだろうか……。


 すると暗闇のなかに照らされた暗黒の彩色いろをした光。永久に溶ける事はないだろう氷柱。然して目の前に暗く揺れているような黒檀の耀きの如く見える鋭い光を放つ凍壁。それは鈍くもどこか妖美なる陰影を反射している。ミカエルの繋がれた氷柱の見えるその向こう側のほうからだろうか? 暗黒の彩色いろの凍壁に反響して鳴っている声がいつからかある。そんな事にも思うようにもいたミカエルの問い返した声に応えるもう一つの暗闇からの声は……然してミカエルの問いになども構わずに話しを続けた。


「ううん……? ふふっ……。汝は我を知る? そんな遥か旧き遠き記憶の片隅に置き去りにされたような事を……。んん……それはそうとしてもいい。これにあるオレをオマエは永き刻に睡眠ねむりありながらにいては、燃える焔炎ほむらにその身体は包まれながらもいて見ていては……然してオマエは睡眠ねむっていたのだからな」


 その声……。

 どこまでも暗くある暗黒の凍りつく地のなか……。

 何かに思うような…そんな口振りに話しをしていた。


「天の第一天…使徒ミカエル。オレはオマエをただこの場所にいて見ているほど……そんなに暇ではないんだよ。だからよくオマエの記憶の片隅にある何かを……その記憶も辿る何かの糸を手繰たぐれば……すぐに思い出すはずだ」


 どこかそれは自信に満ち溢れている。

 そんなようにもある声に聞こえた。


「汝は我を……それにあったという様子の我を……二千年? 汝の知る刻にただそうしただけにいたというのか」


 ただそこに瞬く間すら一瞬の刹那の刻にもあるような……。

 そんな刻の流れただけの乾いた空気が二つの交差する声の隙間を通り抜けた。


 すると……そこにいると思ったようだった。

 そのどこか暗い光の陰影にもある姿形をした暗闇の陰影からの声は、ミカエルのいる場所からも少しだけ離れていた凍りつく地の凍壁も磨かれた黒檀の耀きのようにも見えた。


 然し……そんなようにある事は、永久に溶け崩れる事にもない凍りついた地の凍壁に反映した己自身……ミカエルだった事に気がつく。


「汝は……どこから我に……その話しかけている声は……」


 ……何かそれは幻声のようにもあるのかも知れないと思ったりもした……。


 ……我は……睡眠ねむり続けていた永き刻により何かが……。


 そんな一瞬の刻の間。


 どこかそれに思うミカエル。

 然しまた不意に聞こえた声はした。


「オマエは……ふふん。そうだな……。その双瞼まぶたのなかにあろう白銀に輝く瞳は……いったい何を見ているのか? それに見える姿形は何物だと解らない。ただぼやけた陰影だという事も知りながらでもいるのに……」


 どこか皮肉粧いていた。

 そんな口ような口振りでもある。


「オマエの見ている先……その先に見えているのは……。ふふっ……何かに思えば謎のように動いてはいる。然して黒い彩色いろをした凍りつく地の底にある凍壁。そんなようにもあるだけの暗黒の闇にチラチラと動いて見えた陰影だった事だろうよ」

「ん……それにいう汝は……我を愚鈍なる者だと? 知慧も痴愚の者である事だとでも? 汝は我をそう呼びたいか」


 暗黒の暗闇に包まれた場所。

 永久に溶け崩れる事にない凍りの地。

 どこまでも深遠なる地の底。


 そんなようにもある場所の黒い彩色いろをした凍壁を前にしている。天の投げくだした光輝なる光の鎖に繋がれた。それはいつかの刻にいた天の第一天…使徒ミカエル。


 闇を裂いてゆく声は……うっすらとしたように響いた。


 すると……そこにいるのだと思ったようだった。その……どこか暗い陰影にもある姿形をした陰。凍りし地にいたそんなようにも思う陰影からの声……。


「何だ……見渡した先に反映し移り込んでいたオマエの姿形の陰影に話しかけている。そんな事をしている。ふふん。天の楽園。その第一天…使徒という者は少しだけその意識の欠片は永き刻の睡眠りにまだどこかいたりするのかい? オレはオマエを見ていた。その氷柱の反対側から話しかけてているんだよ」


 どこからか話しかけている声……。


「誰だ……汝……我は……」


 ミカエルの思いからの声なのか……。それという何かにある事に思い問い返そうとして発した。ミカエルのその声はただ暗い陰影の光に反響しているばかり。


 するとそんなミカエルの声にも構わずのようにどこからか話しかけているその声は…暗闇に反響する幾つもに遅く追い越すようにも揺れる声は……その話を続けていた。


「オマエは……サタンという。いつかにある天の楽園の守護者ガーディアンだった者を知っているか……」


 不意な問いかけにある暗闇の声は……凍りし地の凍壁を幾つも通り抜けては反響し聞こえてくる。


「どこだ……汝……何故そうして話しかけていながも姿を見せない。然し……どうしてその者を……そんなようにいたその者の名を知っているのだ」


 ほんの僅な刻に冷たく乾いた一迅の風が二つの交差する会話の間を通り抜けた。


「オレはこんなようにある場所の存在なんて……知る事にもなかったよ。今じゃぁどうだか……それは分からないが……。今になってそれに思えばだかな……どれだけに過ぎていった刻にこうしている。然し……オレは……もとは地上にいた……人間なんだよ」

「人間……? 今……汝は人間と……確かにそう言ったようだが……。そんなようにあるはずがない。地上は……あの刻に……。我の知る限りであっても……それにないはずだ」

「ふふん。そうだな。然し……オレもその凡てを知っていて……オマエに話しかけているわけではない。サタンという天の楽園を守護していた者。その頃……それまでに地上ではどこか想像したようにもあった。それは特に想うようにも知る名でもある。そんな地上での伝説的なお伽噺のなかにある天より堕とされた使徒だと。……地上では……そんな話があるようだった」

「然し……汝は何故……人間でありながら……定められた命の者よ。どうして汝は幾つもの刻にそうしていられるのだ」


 超時空間よりある天。


 それは地上にいた凡ての生命体より遥か永き刻を生きる存在。

 天より瞬きに双瞼を閉じれば消失てしまう。人間。そんなような儚き蜻蛉かげろうのようにも例える事にも出来る定められし命を持つ者たち。


「そうなのか? オレたち人間は…オマエのような存在からすると……その双瞼も瞬きそれは一瞬に消失え去るぐらいにある。そんな儚い命を持つ者だという事なのだろうがな……」

「何故なのだ。そんな事まで知っているか汝……。超時空間より遥か永き刻を……それよりも以前から存在しているのだ。そういう我もその存在より創られし者なのだから……。天はその刻……その都度にある役目の使徒を遣わす。然し……超時空間よりある天。それにあるべき姿形や何かの存在を持たぬ。例えるにも……何かの意識的なその内側とでも……それもどこか違うようにもある。何かのエネルギー体による力の集約した存在とでもいう……。然し……そんな我も……汝は何故かそれを知り呼ぶようにも言う……名。サタン。汝は言う。その名……。確かに……そうだ……いつかにいた天の楽園の守護者ガーディアンの名だ……」


 浮屠……何かの疑問のような思いがミカエルの意識のなかを通り抜けた。


「汝……何故……」

「ふふん。そうだな……天の楽園より奥にある。その場所を守護していた者。第一天…使徒ミカエル。オマエはどうしてこんなように暗く凍る地に人間でありながらもいる。こんなようにいるオレの事に何かが分からない。そんな事も何故……? 使徒ミカエルというオマエを分かっているのかに……それも思いが彷徨うばかりではないか? よく辺りを見てみろ。何かがある。きっと……二千年も焔炎に包まれ燃え続けていても忘れる事にもなかっただろう。漸く目醒めたんだ。オマエは今いる場所の周囲をよくその双瞼に隠された白銀の二つの瞳で見てみたらどうなんだ」


 まだ……どこか睡夢ゆめのなかにあるようなミカエルの意識が……浮屠……とある場所でその視線が留まるようだった。


 暗き凍りついた暗黒の地。

 それにあるようにも永久に溶け崩れる事にもない乾いていた氷柱にある。天の投げくだした光輝なる鎖で繋がれているだけのミカエル。


 そんなミカエルの見たそれは……凍りついた地に幾つも列並びながらもある。その凍壁のなかに……その刻に封じ込められた地上の楽園の凡ての生命体が静かに睡眠っているようにいた。


 然して……それを取り囲んだようにして一本の漆黒の彩色いろに黒き光を放つ柱のような物が見える。どこかそれは小さくも力強い生命の息吹を発しているようにも感じていた。


「……もしや……あれは」

「そうだな。そこにある一際目立った氷柱のように見えるのだろう。よく見てみろ。何故だかそれは分からない謎だが……オマエが天より焔炎に包まれながら燃え堕ちてきた刻より。今もそこにある氷柱にいる天の輝く力を秘めた鎖に繋がれたオマエをずっと見ていた。目の前のそれは氷柱などでもない。二千年より以前にあるオマエの記憶を呼び起こす事だ……」


 黒檀の彩色いろに凍りついた黒き光の耀き。

 氷柱に思えた…それは何者かがそこにある内側に睡眠っているようにもある事にミカエルは気がつく。


 氷柱の内側に二つの腕を前に重ね合わせ抱くような格好にしている。然して見れば……白銀にもそれは黒く耀きながらにある鎧。虹色に鈍くもある彩色いろをした孔雀の羽根で飾られた兜。その腰に幾つもの使徒を斬りし微細な戦跡を残す聖剣。足下はまだ幾らかの光に包まれながらも燃えている戦靴が履れてもいた。


「……あれに睡眠るようにもある者は……もしや……」


 それに見たミカエルの記憶はその意識をもどこか凍りつかせるような気がしていた。


 黒檀の耀き。

 暗黒の彩色いろ

 然して……麗しき風貌を残してもいたが醜い姿形。


 然し……その容貌は紛れもなく……美貌天であった。


「あれにあるのは……サタン。かつては我もその楽園より更に奥深き場所にいた。緋き魔石の揺めき浮く場所。それに通じていた天の楽園の地。そこに這うような蔦に千年に一度だけ成る聖なる果実を見ていては……それにある天の楽園の守護者ガーディアンだった。然して我と同じ美貌天でもあった。天の第一天…使徒サタン。然し……何故……」

「いいか……よく聞けよ。天の者よ。オレは何故だか唯一人だけ尽きる事にない生命……いいや……生命その物自体があるのかもそれすら知れないが……。とにかく天はオレをこの凍りつかせる暗黒の地では……ほら……見てみろよあの爆熱に地も溶けては流れている河の空を……。オレは何故か……。それも何かのようにそんな灼熱の河が流れるようになる。この凍りの地に棲む番獣……ふふん。オマエたち……天のいうこの地の守護者ガーディアンとでもいったとこだろうか……ふふ。そいつにいつかの刻に同じようにいた同胞なる者たち……つまりは人間。凍りつく氷壁より何故かオレはそれを一つづつ取り出してはそいつに喰らわしてやっているのさ。オレの意識とは関係もなくな……。然してそいつが脱け殻のような人間を喰らい。その吐息は頭上高い空の地を溶かし続けるのさ。皮肉なもんだ。こんな事をオマエに言ったところで何になるのか……。だが……サタンの棲むようにも睡眠っている氷柱にまでは……オレの持たされた。天は勝手にそんな事にある力をオレに……。然し……己から態態わざわざと地上に続く路をこんな凍る暗黒の地に措かれては然して閉ざしている。天は慈悲も何もかもが偽りのように思える。そんな事と然してある氷壁を砕く力も……サタンの氷柱にまでは届かない。そこで……第一天…使徒ミカエル。オマエに一つ提案したい話の事がある」

「さっきからの汝はいったい誰に……我を何だと。然して何を話しかけているのか分かっているのか」


 ミカエルの話している言葉もどこか苛立ちのあるような意識に……。そんなようでもある話しぶりにでもあったりした。


「永久に思うような……そんな刻を持つ者よ。オマエはいつまでその鈍く……ふふん。こんなようにある場所では……そうにしか見えないと言えばそれまでだが……。そんな光輝だと? 地上にいた凡ての生命体。それは同じようにオレたち人間をも凍る暗黒の地に閉じ込めるだけでは飽き足らずにいる。いつかの刻に唯そこである氷柱の内側で睡眠っているサタンが……オレの意識に語りかけてきた。然してオレは天はもとより地上にいた凡ての生命体はどうなったのかも知った。オレたちもそうだが……そんなオマエはずっとそこで動けずにいるよりも随分といいようだと思う話にある事だと……オレのこれからの話に……たぶんそれに思うようだがな……」

「汝は……我を愚弄するか……。そんなようでは……汝……我はそれも……いいか? よく分かっているのか。その痣とさあるその言葉に我は……汝の事をただではおかないのは……分かっていて話しているのか」


 暗黒の彩色。

 暗闇の光。


 そこにある響く交錯する声。


 凡ては暗闇のなかに……ある。


「然し……汝は……誰なのか……何者なのだ」

「……オレ……か……。この凍りつく地に忘れ去られた者。それはたぶんこの地といては……唯一の永久にも思う刻にいる。そんな……ふふん。……オマエに言ったところでも人間さ……」


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