第十篇 第一幕 最終序章
第一幕 最終序章
刻は幾つと経過ていた。
あの刻……地上へと齎された。月の満ち欠けも暗く緋き光の一筋。見渡せば幾つかによってある超時空間への路を示す光の梯子は我を包み……然して……我に率いられる事を切望した堕天使たちの軍団。その師団をも包み込んだ。
それは麗しの美貌。淑天ノクターナルの姿形をも変化ては叶う事だった暗闇の宙。見上げていてはそれに見るようにもいた。空は雲も流れる暗い明けない夜空に浮かんでいた緋き彩色をした月からの導きによって。
敢然だった。然して完璧であった。
我の率いた軍団。堕天使たちの師団を導いた緋き光の衣。それは超時空間の天へと続く路。我をも含めた堕天使の存在を暗闇に降りた緋き月より射し込んだ光の梯子。
我ら……堕天使……。
いつかの刻にありしは超時空間の天の使徒。
天の楽園から追放された。
堕天使といった存在。
凡ては超時空間の天の意識。
それにある場所に都合悪くあった使徒は天より堕ちてゆく。何というような姿形を持ってはいない天。何かに超越したエネルギー体。それより創造され生まれ出る使徒……天使という存在。
ただ一つの事。
超時空間の天より創造され生まれ出た存在は、そこに懐疑を持ってはならない。ただ……それだけの事だったようにある気がしている。
我の持つ超時空間での記憶も既に遥か遠き場所にある。然し……超時空間の天。その偽りは懐疑を持っては堕天させられた使徒……天使というようにも呼称名された存在は、決してその事に刻は経過ても、堕天させられたという存在ではその内なる思いにある場所に忘却といった言葉も思いは皆無であったのである。
然し凡ては敢然として挑んだ。超時空間の天への完璧とすら思えた我ら堕天使たちの挑闘いだった。
天の楽園。緋き月の光……それに変化した月。その暗い月の海に追放されてからも、千年の知慧の果実を喰らい己から地上に向かって堕天したサタン。凡てを知った全知なり智慧を得た変わりに醜形と変わり果てた。いつかの超時空間では美貌天として何者も魅了し続けていたサタン。その存在に永久に焦がれる恋慕を抱いたノクターナルは、それに司りし月の翳りによって、そんな姿形になっていたサタンを闇のなかで隠し続けた。
そんな事もいつしか刻は経過ち。地上に起こった楽園の解放戦からも幾つかの刻は経過てもいた。
我は……睡眠りにでも……いるのだろうか。
浮屠……朧気な意識にまた記憶は辿る。
凍る幽閉の地……サタンが目醒めては地獄となった場所から地上の楽園に……そこはまるで変わり果てた煉獄……魄を焼き尽くさんとある地上にある事だった。
……そこから見えていた空……中天に浮かぶ緋き彩色に染まった月……。いつかに超時空間の天に追いやられし存在……ノクターナルの奥底知れない想いによって……それは起こった。
然し……あの刻。翳りも暗い月の海に棲んでいては見つめていた地上は慈愛に溢れていたが、でもそれもどこか冷たく輝く月明かりがあった。光の銀波をそこに移していた月。だがそれはただ唯一己から地上に堕天した存在にだけに翳り輝いていた。
超時空間にある天。その楽園に這う蔦にようにしてたった一つだけ生る千年の果実……凡てを知る全知なる智慧の果実。それは地上の故海にある秘密の場所に投げ入れては、超時空間の天が生まれた刻より遥か遠き以前よりそこに棲んでいた旧き故海の主獣ラハブへと与えられていた。地表からその凡ての地上……故海。超時空間の天が生まれたその刻に持っていた力では……故海に棲むラハブを千年の刻を睡眠らせておくだけにしても……他に手立てはなかった。
それにより出来た秘密。全知なる智慧の果実……千年の刻を経過ては書き記し残されてきた全知の書……秘密の書。それなる書物と秘密を守護していた使徒はいつかの刻に超時空間の天より堕天させられていた。だが……それは皮肉にも故海の主獣ラハブを深き睡眠りの底より呼び醒ました。それも秘密の書物を持っていた堕天使ラジエルの全知の書であった。
超時空間の天の楽園にいた守護者。千年の果実を見守り続けていた使徒。サタン、ノクターナルに……その果実の影響は秘かに伝えられる事となる。超時空間の天が渇望し求めては……然しそれにある千年の果実に触れる事も支配する事も出来なかった。ふふっ……闇の皇子となったが……いつかの刻では……熾天使ミカエルであった我の守護していた緋き魔石と同様である。
然していつかの刻になり煉獄と化した地上の故海で荒れ狂う超時空間の天の造り出した精獣リバイアサンは……超時空間の誤算から睡眠りつく事となった。
……今この刻……堕天させられた使徒……堕天使は我なり存在により超時空間の天の楽園へと辿り着いた……。
凡ての始まりは……超時空間の天が生まれた刻。
我が配下の使徒たちを率いては引き連れてゆくようだった地上より……始まったのだ。超時空間の天は緋き魔石を地上から奪い去った。まだ生命体も存在していた地上の楽園も奥深き秘密の場所に不思議に浮いて廻り続けていた。微かに揺れながらも地上の均衡を保っていた緋き魔石。それにある秘密を我が……あの刻から凡てが始まった。
然して現れた超時空間の天の楽園。
それは緋き魔石を天の宙にそっと置いた刻だった瞬きのようにもあるその一瞬に……緋き魔石より落ちた一滴は何もない空間に蔦を這わして延びてゆくと、そこに超時空間に天の楽園を瞬きに造誕った。
然して我は緋き魔石の守護者となり。サタンはそれにある秘密の場所。それへと繋がりし闔を隠した超時空間の天の楽園の守護者となった。
刻は幾つか数千の刻も経過ていたのだろうか。
それは超時空間に出来た秘密。
いつかに気がついた。天の楽園に這う蔦にようにしてたった一つだけ生る果実がある事に。最初に見つけたのはサタンだった。
超時空間はそれにある果実に興味深くなり使徒を遣わしたが……何かの意識によりそう伝えられた天の楽園の守護者……サタンによって切り伏せられ微かに光の余韻が残る屍が幾重にも散る結果となり続く事となる。
千年の果実……いつしかそんなように呼称れたが、その刻ではまだ凡ては謎に包まれていた。どんな存在ですら触れる事も出来なかった千年の果実。
だが唯一我だけが触れる事も赦されたのは不思議と宙に浮きながらも廻り続ける緋き魔石。然しそれは我が地上より奪い去った刻より始まった緋き魔石の意識から伝えられし永久の贖罪。
いつしか我は……緋き魔石に不思議と伝えられ、千年の果実……全知なる智慧の果実を見守り続ける使徒を造り出す事になる。
……それは後の刻になり超時空間の天によって月に追いやられし淑天ノクターナルであった……。
ふふっ。何もこのような刻に……我はまるで回顧しそれに想う。どこかまだあの凍る幽閉の地にあり睡眠り続けている。ふふっ。戯れ言よ。
然し……そんな事に不思議と思うルシファーの意識は……。
超時空間にある天の楽園に這う蔦。それに唯一つだけ生る千年の果実……凡てを知る事が出来る秘密の全知なる智慧の果実。
サタンは天の楽園の守護者でもありながらもそれを喰らい……醜形い姿形に変わった。あの美しき容貌……麗しの声……妖艶しくも何もかも魅了し続けた緋き彩色の瞳。その風貌も黒檀の耀きに煌めく孔雀羽で飾られた戦鎧にあり、然して腰に帯びた聖剣の抜刀の速さを見た存在は何者もなかった。
緋き魔石。それに繋がるまでの途は天の楽園から更に奥深き秘密の場所。他の何者すら近づく事は出来ない秘密の闔を守護していたのも……楽園の守護者……サタンだった。
我は……緋き魔石の守護者でもある。地上での解放戦はきっと我だけが守護するようだった緋き魔石により導かれたのだろう。あの……緋き魔石を……我は……地上へと遷し再び返還さなければならない。
何もない空宙に不思議と揺れながら細く長い渦雲に巻かれ浮いている緋き魔石。遥か遠き旧き刻に、地上の楽園より超時空間に生まれた天により奪い去られてしまった。生命の根源なる緋き魔石。
凍る幽閉の地……地獄と生まれ変わった場所……光の森に包まれては躍り出た煉獄のようだった地上。然して……故海……地上……天空……そこにいたのは超時空間の天より造られし聖なる獣。
リバイアサン……ビヒモス……ゼズ。
どれだけの刻に果たしてそれは……そこに封じ込めるようにも睡眠らせた。超時空間の天に飼われている精獣……その守護獣。
天雷の乱撃していた地上の楽園……天雷か撃落ていた暗闇に一閃する煌めきも見えた地上。その暗い宙は幾つかに割れながらも離れ流れてゆく彗星も不思議な彩色にあった。
凡ての生命体……いつかに地上で肉体と魄の二つに分離られた祈りの魄は、超時空間の天より降り続く天雷に撃浴れて砂塩と変わってゆく。それは地獄の誕生より凍壁から解放され姿形を持った人間魔者も……いつかの刻に超時空間の天から堕天させられた使徒なる存在をも……粧青い魔石に秘められていた破壊の力……天雷も煌めくと瞬きに燃え上がる塵芥と変わってゆくようにもあったりした。
我も……あの刻……地獄に射した光の森。……そっと触れては……超えた刻にあり、然して躍り出た地上から挑んだ戦闘い。凡ては本当の存在の手に地上を取り戻さんがゆえ……。
然し……偶然だったのだろうか……。あの刻にサタンは待っていたと言った。地上へと通ずる路が出来るのだと。
だが……それは……ノクターナルですら……我に……。
永き刻に千年の智慧の果実に関わり続けていた……サタン……ノクターナル。どこかそれは……これからの先に訪れる刻を待っているのであろう。そこに続いてゆく刻の流れのその凡てを知っているようでもあったりした。
我の物語……これより後に続く……然して始まる我の物語はまだ序章にあるのだという話をした。
超時空間の天へ挑闘んでゆく。
我の……そう……我も含めた堕天使が存在した物語がこれより先に待っているのだという事に続く刻は……我らをどこかの刻の狭間で見続けてもいる。
それにあるのも不思議となる意識のなか。何かに忘却しているような遥か遠き旧き我の記憶のように……何故かそれは解っていたりしたような……そんな気がしていた。
ルシファー回顧録。
最終序章~闇の皇子の記憶より。
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