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第二幕 魔石の守護者


 第二幕 魔石の守護者ガーディアン


 ……どこ……だ……。これは……。


 我は……第一の我のある場所を知る……。刻の一点、時間の移り変わりにあっても……それは不滅ともいえるだろう……。そんな天への途路(ばしょ)を知る者でもある。……だが……然し……冷たく凍えそうだ……。これにある場所は……どこなんだ……。


 凍る世界。

 凡ては暗黒に凍る。

 暗闇の光の彩色いろ

 そんなようにある地の閉ざされた場所のなか……。


 その者は地上からも更に奥深き場所。爆熱に溶けた大地の灼熱の河よりも深き地下。それにあるよりも底の深き場所からも奥下にいた。然しているその地面は、凡ての光をも吸収するような漆黒に湿潤うるんだ薄汚れた黒。そんな彩色いろをしていて、然してどこか手足も絡みつくようにも粘りつき暗黒の暗闇に光も身体も沈み込んでいくようにもある。


 何か…そんなようにある場所にそび建柱っている氷柱があり。それに思えば……そらにも続いていて届きそうでもあるようにも見えた。思えば……そう……その者。それにある永久とわにも溶け崩れる事にもないだろう氷柱に天の投げくだした光輝な一本の光の鎖のような物で……そこに繋がれていた。


 天において……第一天…使徒の我が……何故……うう……ん……何故だ。分からぬ。天は我を……かような凍る暗黒の幽閉の場所に……。


 天より生まれし定められた永久にある刻の命を持つ。美貌天…使徒ミカエル。


 第一天…使徒。それは人間でもなく……動物でもない。その者……美しき肉体的な造形にあり、どこか人間という姿形に思うようにもある。何かそんな地上の王者気取りのいつかの刻の人間という存在の者に……その姿形は似てもいた。


 然し……その者……麗しき造形に美しき風貌。然してその後背せなかには天より授かりし光の翼羽はねを持ち……どこまでも暗く妖美うつくしい瞳に宿した光もある相貌とその光輝に包まれたような姿形をしている。


 そうか……あの刻から……。我は……地上よりも深き場所……。地も爆熱に溶けては灼熱の河のように流れる場所。暗闇の世界……暗黒の地。それよりも地下。そこからも……もっと奥底の下にある凍りに閉ざされた場所に……。幽閉された……。


 第一天…使徒ミカエル。


 いつかの姿形を持った人間のいた世界では……様々な称号があるようでもいる。


 天より堕ち……地の底にまで追放された者としてという事にも。


 堕天使……。


 そんなようにもある者と……地上という場所にいつか存在していた刻にいたその人間たちは……確か……そう呼称んでいた。


 地上からも深き場所……。それよりも底奥……。そこには爆熱にうねりながらもそこにゆっくりと流れている灼熱の河がある。然し……それからも……もっと奥底になる地下の不思議の凍りに包まれた世界……。そんなようにある場所に一本のどこまでも遠く高い。渇いて凍りつく氷柱が建柱たっている。


 我は……それにある。天より堕ちた場所に……。


 浮屠ふと……たぶんそこで数千年のとき睡眠ねむり……そうして経過すぎていたときの一点、時間の移り変わり……。それは天の生まれたときよりもはるか旧きとき。それというようにもある刻から凍りに閉ざされているその場所は存在してもいた。


 天が生まれた刻。

 それよりも遥か旧き刻よりある。

 地上でもそれまでは誰もが知る事に少ない……不思議の場所……。


 そこに空は泥々とした灼熱の河の流れる爆熱の世界。それにあるよりも下の地は……凍りに閉ざされている。その奥底よりも……更に下……。いつよりと生まれた……。不思議にある天と異なる暗闇の幽玄と永久とわに地上からも遠く閉ざされた場所……。


 そこは……いつかに……。それも何かからの形に残された存在が睡眠ねむり続けさせられている幽閉の世界がある。


 そこより響く。麗しきように……。どこかそれに思うようにも聞こえた……。美しき声……。


 然し今はもうすでに……それは美しき声と微かに残る光輝の余韻は消失きえつつ……その者の後背せなかに残された光の翼羽はねも片方が壊失うしなわれ……折壊(こわ)れている。


 皮肉にもそれは地上の凡ての生命体も……人間も同じくして……然しそれも肉体とそれに宿っている魄の分離……言うなれば地上にある人間も含めたという生命体の存在は……姿形を持たない魄というだけの存在でしか今はもうすでにない。


 いつかの刻……その一点、時間の移り変わりにもあった日の事。突然に地上が揺れた。


 それは天の怒り。唸り響いた。然してミカエルに向けて発した怒号のような天の音の声が原因だった。するとその事に地上にも大きな地震が起こり………その蒼空そら仄暗ほのぐらい積乱雲に包渦つつまれた。然していつもある蒼空そらついなしたようにもある海も……そこに長き姿形をした精獣が解き放たれていた。それは幾つものくびに何本かの手足の鉤爪のある指を持ち、翼牙のある腕に何色にもつかない彩色いろした蓬玉ぎょくがその手の鉤爪のなかに見える。


 そんないつかにからもいたというような精獣なる存在は……海のなか……天に時間の止まった暗黒の場所……。秘密の虚空より解き放たれた天に飼われ囚われし獣……。それは時折に腕にある翼牙を広げ何かに身動みじろぎをした動きをしては……その姿の下の方にある焔炎ほむらに包まれたように燃えているの部分を淀んだ仄暗い曇天どんてんの空に向け高く持ち上げるようにすると、地上の海の暗灰の彩色いろに澄んだ海の水面にそれを勢いよく叩きつけては……荒れた海の暴波なみを造り出していた。


 然して天はそれにある事にも地上の楽園……その凡てを押し流す水の揺れを繰り返し起こしては……蒼空そらも曇天に仄暗い彩色いろのなか……鳴り止まぬ雷の一閃に煌めく怒号の音を幾つも地上に向けて響かせ揺らせて続けていては……魄という存在であるだけの人間をも怯えさせた……。


 天より堕ちたミカエル。


 肉体という入れ物から分離わけさせられた。生命体。地上にある。ただ……魄という存在にだけに変えられていた人間という者たちは……自然的脅威と……それを天に想う事をおそれ……そこになげいた。


 それまでは遠く時空間をも超越えた場所…天の楽園にいた第一天…使徒ミカエルの持つ魔石の力が守護する存在でもあった種族は…その事に永久に終わる事になかった祈りの意味を……暗空に照らされている地上にあってそれを忘れようとした。


 地上の楽園よりも地下に向かって遠い地のなか……それよりも奥底から更に深き場所……見上げた空も爆熱に地が溶け流れる灼熱の河の天。それが空にあるそんな凍りに閉ざされた地下に……。そんなようにある場所にミカエルは堕とされていた事に気がつく。


 いつしかその意味をもなさなくなった。今……そうしていつかの安寧の祈りを忘れようとした人間という魄だけの造形は……心のない祈りは……天にまでは届かない……。そんな思いになっていく事は……天の存在……存続していくその意味を危ぶむようになってもいくようにある。


 然し……我が……あの場所。天にありながらも見続けてきた人間という……魄でしかない存在は……。今の我と同じくして……あの日から天への懐疑を持った。我が守護する魔石……。安寧の魄を慰めていた不思議の力。それを失った今……魄という存在に変えられた人間という存在ですら……。


 天に二つの魔石があり……。


 それは透き通った緋い彩色いろをしていて……その内側に謎を秘めた魔石……紅玉石。


 それは何か……蒼空そらにある行き場を忘れたような細長く巻く雲に包まれたようにあり、そらに不思議に浮きながら凡ての刻の移り変わりと異なる動きにあっては不思議と縦に回転していてはゆっくりと揺れている。


 時空間を超越えた場所……そんなひとどこにあり、いつかの天にあった第一天…使徒ミカエル……その者以外は触れる事も出来なかった。緋き彩色いろをした石。それは絶えず魄の滅生と再生を繰り返している火炎を噴き起こす彩色いろのよう。


 永久の刻。不変不滅の生命の滅生とその再生をただそこで繰返し……地上にある凡ての生命の魄という存在の終焉おわりの刻の訪れに……。それにある緋き石…魔石…紅玉石はそれを吸収しては魄という存在にある祈りの者たち。その滅生の再生をいつからか起こしていた。


 天の知る。そのずっと以前よりそれは永久にも思う。

 それにより存在していた魔石。


 しかし……それとは対反はんするような性質にある魔石……蒼空あお彩色いろをそこに不思議に閉じ込めた。金光輝色から銀煤色に流れてゆく……混煌と混ざり合う彩色いろは夜空に一閃いっせんに煌めく空雷をも一緒に取り込み包んだ彩色いろをした物だという。粧青あおに何かそんな彩色いろにも飾ったような魔石……瑠璃金石。


 旧くは地上という場所にあった生命体……人間という存在がいた頃……。それは自然界での脅威とされた事がその魔石のなかに封じてある。


 それは生命体が地上での存在は姿形ある生命体としていた。人間という生命体も地上に魄と肉体が同時に揃って存在していた刻の頃より続く。自然界での脅威への畏怖。様々な多様化した文明や人間の造り出していた天。それに繋がる祈りの形態かたち。然し肉体という入れ物から魄を分離はなされた刻。人間という存在の者たちは……魄という存在だけになった刻から地上の楽園……既に涸れてしまっていた楽園で……ただ一つだけの意味にある天への祈りを始めたが、それという祈りの意味にいつしか不思議な懐疑を持ち始める。


 そんな刻……。その刻の一点の時間の移り変わりからも天が生まれたとき。それまで文明を持っていた人間という存在を脅威と感じた天はそれを創造し産成した。


 天の秘法。

 粧青あおい石。

 魔石……瑠璃金石。


 天は……それも……ミカエルなどの…天においての使徒にしてみては……ほんのわずかな一瞬……。言うなれば地上の生命体からは永き悠久の刻でもあるが……瞬きすら永くある刹那の刻でもあった。


 然しそれは人間といった。いつかの地上にあったそんな存在の者たちは想うだけでもある。超時空間を超越えた天。それを知らぬがゆえに……。


 天が生まれた刻の一点、そんな時間の移り変わりにって……地上の凡ての生命体は魄の存在……。その入れ物のような肉体と魄という……二つに分離わけられた。


 そんな刻の一点、時間の移り変わりにあった二つの魔石。


 ただそれにある。何物でもない精なる二つの魔石……。


 天が生まれたときより……第一天…使徒ミカエルが守護する使命を魔石から不思議と伝えられた。


 それは……言うにもなく……二つの魔石……。そのうちの一つ……だった。


 緋き石…紅玉石は魄の滅生と再生を起こす力を持つ。


 魔石からの不思議な言霊に説かれたミカエル。

 然して緋き石は天にある使徒…第一天…使徒ミカエル以外が近寄る事も許さず、それに異なる天の使徒ですら無謀に近づこうとすれば……そこに無惨に遺されたような……そっと触れると消失きえてしまう儚い光輝の翼羽はねも枯れたようになる亡骸なきがら変貌かわった。


 それにより対なした相反する性質。

 天の秘法により造られし産成された不思議なる粧青あおい石。


 魔石……瑠璃金石。


 然して産成された粧青あおい魔石。

 それに地上の楽園の自然的脅威を不思議に封じてある。


 あかき魔石。

 粧青あおい魔石……。


 その力は……魔石の持つある意味を対反はんしていては、それにある力も互いが離れ向かい合う刻があれば天に争乱あらそいは起き……天の楽園……その存続すら危ぶまれる事態にすらなりかねる。そうならないようにと……緋き石からある意思に導かれし者……。魔石の守護をする事を使命づけられ許されていた者……天にあって……それは第一天…使徒ミカエル。


 その者に……然してミカエルとはまた別の者に性質は相反する二つの魔石の守護する使命をそれぞれに持たせた。


 天が生まれた刻。

 地上にあった人間という存在……。


 それよりも自然的な生命体の動植物。それは天が生まれし刻から……その存在というような事も地上にあった生命体の凡ては……姿形を持たない魄の想いという形の存在にだけになった……。


 天への祈り。

 それは永久に彷徨さまよい続ける刻。

 凡てはその刻の一点、時間の移り変わりにあった。


 いつかの人間といった。地上でもその自由なようにある姿形を持っていた。見えない何かを追い越そうとする進化とある概念に想うだけの種族はいつからか……知っていた。それからも多様化したようにもあった文明は……刻も同じくして存在していたが……。その文明にある一部の限られた人間の者たちが着く世界。人間の世界の構築。地上に飽き足りない人間たち。破壊こわし続く地上の世界。そんな事からも伝わるようでもある。


 そんな地上の楽園。


 ミカエルは緋き石と見守り続けていた。


 然し憂いし思いは……人間たちの想うは天の虚空……我が……このミカエルが気づかせた事だったと……。


 それは天は生まれし刻になり、祈りの魄の力が必要になった刻の事でもある。


 然し人間といった。いつかの地上にあった生命体の存在は……その魄を包んでいた肉体という姿形を持っていた事に……高度な技術的革新を続けていては……水瑞の宝石のような自然的世界を造り変えていくと争乱あらそい。然して凡てを独占するが事のように……この惑星ほし破壊こわしていった。


 そんな事も……でも天の刻からしてもそれは僅かな一瞬の刹那の永さ。


 我は……思う……。


 天より堕とされし刻。然して天に置いてきてしまった魔石を……それは我の……底なる力。この惑星ほしその根源でもあった。


 人間という魄の存在は知らぬ……。我の持つ根源の力によって……永久に終焉おわる事がない睡夢ゆめの流れるときにいる。それにあっての安寧の世界。その刻の一点は……地上の楽園を破壊こわしていった人間の刻。そんな刹那の刻にもある時間の移り変わりよりも永き事を……。


 然していつからか……刻、その一点、時間の移り変わりに天も生まれたとき……。瞬きに消在する人間という者たちの存在。然して終焉おわる事にない……。我が守護していた緋き魔石に秘められた精なる力を……。緋き魔石。粧青あおい魔石。二つの魔石の力により……その終焉おわりのない睡眠ねむりにいる事を……ただ……睡夢ゆめに想うだけでしかない存在……。その種族にある事だと。


 天は生まれた刻。その刹那の刻に……既に滅んでしまった周落しゅうらくの存在だという事を……。


 我も……今……。それも知らず天より堕ちては凍りに閉ざされた地で睡眠ねむりから醒め、然して幾千と知る刻の流れが経過すぎていったのかは分からぬが……。でも……魄となった人間という存在の者たちは……我の在りかがない天を……我が守護する。天にある二つの魔石の均衡による安寧の力を感じない人間という魄の存在は……天の生命力となる祈りというそれを捧げる事を忘れていく事になる……。


 超時空間の天の生まれた刻から……その天に帰した石。


 緋き精なる魔石……滅生とその再生を司る。


 それを言うならば……我もいた天が生まれた刻の事より遥か旧き刻から……地上の楽園……人間という存在の者たちですら……その地上の楽園にいた姿形ある何物も……誰もが知る事にもない場所に秘密にまわり続けていた魔石。


 その緋き石の持つ不思議の力は……天の存続に繋がってもいた。


 だから……天はそれにある精なる緋き石を人間のいる地上から奪い去り……然して天に置いたが……。その緋き石は……天の者たちですらそれに触れる事を不思議の力により自ら拒絶こばんだ。


 だからなのだろうか……。

 後に……我が守護する事になる。

 不思議の力……。

 魄の緋き魔石……紅玉石。


 天はそれにある事に……。


 魔石……瑠璃金石。その不思議の魔力を持つ事となる。


 その粧青あおい魔石は……地上の蒼空そらも……月に棲む女天に想い……。それによりうねりし満ち引きを繰り返す海も……その魔石に閉じ込めた力……。特にそれに込められた天雷いかずちの力……。天は祈りを忘れた人間という魄の存在を……きっとその力によって安寧でもある事だったと思う。その魄の睡眠ねむり続けている地上という場所に……。我の……いた。いつかにいた天で我が守護する緋き石に返景ひかりを移していた。我がその天に置いてきてしまった安穏の情景を移していた想いも……きっと……その粧青あおい魔石……瑠璃金石の持つ力と司る意味……。精霊なる煌めく一閃を守って破壊こわし尽くすつもりだろう……。


 然し……凍えるような……。そんな魄の造形を造り出したのは…我をかような地の底にまで堕ちさせては、尚且なおかつまだ……永久に終焉おわる事はない刻……。そこに……我も含めたその幾万年より以前よりある。地上よりどこまでも深遠なる場所。凍る暗黒の幽閉の地だと…旧き刻より存在する場所に堕とした……天。その偽りは……いつか……。


 然し……いくら我がその天の…その光の力を喪失うしなっていたとしても……何故……? この光輝に冷たい鎖は……何故……けぬのだ……。


 そこに暗く暗黒にある場所に吸収されてしまう。天より堕とされた第一天…使徒ミカエルの呟く声のような思いそれは……何もその答えを……それの意味をも冥失うしなわせてゆく。


 でも……ふふっ……然し……天も……あれだけは……。あの緋き魔石だけは……ふふっ。きっと飾っただけのようにどんな使徒でも触れる事すら出来ないだろう。


 緋き石は地上に残された生命体……。それは我が幾千年という刻の一点、時間の移り変わりに見続けていた。我も天にしても人間という魄の存在……。それにあかき魔石からしたたり堕ちた一滴ひとしずくの根源。それから溢れ地上に向かい落ちている。然して生まれ落ちては祈りの邂逅かいこうをただ繰り返し……永久とわにそこで繰り返すだけの魄の存在……人間。


 刻に……それは天の生命力ともなれるだけにそこに存在をゆるされた者。


 ……祈り……。


 天にあるその存在の刻を支え続けているだけのかて

 人間という魄の存在。


 始まりは既に天の生まれた刻から滅んでしまった種族……。


 でも……我は……我だけは……その不思議の祈りの力を持っている。魄であるだけの生命体。姿形ある刹那の刻に存在していた人間という者たちを見続けてきた。緋き魔石と見守り続けていた。


 そんな思いは地の底。永久に溶け崩れる事はないだろう氷柱に繋がれているミカエルに何かを呟かせた。


「然し……何故だ……。我は何故……。ううん……よく思い出せぬ。天は我を……」


 緋き石。天にある。それはいつかのミカエルだけが触れる事が出来た。超時空間の天が生まれし刻よりも遥か旧き刻では地上の生命いのちの滅生の循環の力を持つ石……魔石ともいった物。然しいつしか魄の祈りの意味だけにあるようになった。


 雲に隠された浮いたそらにただ廻り続けているだけの緋き石。その石の持つ力のゆえに……それは魔石。そう……いつしか魔石というようになった緋い石は、魄の造形……天への生命力を発しているだけの形を持たない存在。人間という者。その魄の安寧と滅生なる再生。天の生まれた刻……。凡ては超自然というにも相応しい。そこにただ誰にも知られる事もなく……その生命いのちの滅生に魄の再生を持って存在していた物だった。


 それと同じくして……でも……それは異なる性質にある粧蒼あお彩色いろをした石。蒼空そらもそれの下にある紺碧にうねる海と美しくもある闇空あんくうに煌めく破壊の力……天雷いかづちをもその内側に封じ込めた……魔石。言うならば…それにある力を不思議に秘めた粧蒼あおい石。瑠璃金石。それの方が……魔石と呼称よぶに相応しいように思う。


 天は……生まれた刻に……その世界にある破壊の力を……我しか触れる事が許されなかった緋き彩色いろの石に対反はんした不思議な物を産成した。


 粧蒼あおに天にはしる一閃に煌めく美しくも儚く消える光輝。


 爆熱の火の玉。


 それにある力を持つ石。


 天の造りし不思議の造形……魔石……瑠璃金石。


 天の秘法……とでもいうような……偶然の刻を司る使徒が産成した……。その刻に不思議に出来た……魔石。


 それは精なる獣なのか。天と地上の楽園の間にあるその空を支配した者。地上の楽園も空に浮く雲間からも翼羽を広げ飛翔とんでいては……己のその存在する威厳を誇示ほこうやうやしくもあるようにしては地上の楽園に降り立つ。その者。双翼の腕を持つ精獣……ラルフ。


 天に飼われ囚われの精獣より誇り高き翼羽を持つ種族。


 粧青あおい魔石の力。もしそれにある瑠璃金石の魔石の力を解き放ち……その空を征する精なる翼羽を広げた種族にもその力を浴びせたとしたら……粧青あおい魔石は……それに不思議に封じてある天雷いかづちの煌めく光の一閃は……その誇り高き精獣ですら一撃いちげきに討ち果たす力を持っている。


 ……それを思えば……。


「ふふっ……我と……何ら変わらぬ事。それも今の我と同じくして何かに想い……身動みじろぎをしていては……天という楽園に……。それまでも……いつかの我の気がつかなかった。それは今に思う事にあるような……そんな天への懐疑をたぶん……誇り高き翼羽の種族は持っていた事だったろう……」


 凍りに閉ざされた場所。それにある場所の天は泥々に溶けた地が流れている爆熱の地の灼熱の河がある。


 然して…それよりも深き……更に奥底にある地下の場所……。地は暗く粘りつくように沈んでいくようにいつもある。そこに天より堕とされしミカエルはいた。


 気がつけばそれは不思議に秘密粧いた幽閉の地。


「これにある場所からでは……我の移しき者……。それも我が……天より遣わした使徒……。月という惑星ほしの大地……。その暗く……いつも暗くある場所……。月の海。そこにいる。然し……天よ……それにある天よりからすれば……それは異美なるその使徒だと……。いいや……そんな事はない……。宵闇よいやみにある事にその存在を隠された美麗な月の者。玲瓏れいろうの音にある竪琴を奏でる者。いつかの我がその力を鏡のように移したりし者……。それは……もう一つの我……。何故にそれはあかつきもそれと訪れる暗空の暗闇から反景ひかりを移し地上への反景ひかりを満ち欠けさせてもいるのか……。その事に天はたぶん……それにある事も解るはずもないだろう……。最初は……我も解らずにいた。でもあの者は……女天……などという出鱈目な称名よびなを……天に……。……いいや……天にしかいられなくなった土塊つちくれの人間らしく創られた天のなぐさみの女の姿形をした者よりは……幾分……それもいい。思い出せば幾千年となるが……我と同じくして天にいた……。いつかの我と同じ……美貌天…使徒。汝は楽園を守護する者にありながら……それは地につたと同じように……。麗しき後背せなかにあった光輝なる翼羽はね破壊こわされ……天の楽園に生る果実のつたのように……地をうだけに醜く見るも無惨な姿形に変えられた。それはいつかにある幾千年より以前に地上にまで堕とされし者よ……何故に月はその日その時……永久に思うようにあるその刻に……それにある存在かたちを光の翳りにあって満ち欠けさせているのか……それが汝に解るのか……」


 漆黒の幽閉の地。暗黒の暗闇のなか……。

 ミカエルはそれに何も答える事にない凍りに閉ざされた地で……然して呟く。


 そこは何もかもが凍りに閉ざされた地にある。それに呟くようなミカエルも……永久に溶け崩れる事にない。超時空間の天の生まれた刻。それよりも旧き刻より存在していた場所……。それにある地に建柱っている。天よりも遥か遠くまで続いているようにも思えた。そんな渇いた氷柱に天の投げくだした光輝の鎖で繋がれている。


 そんなようにある事にミカエルはまだ気がつかない。


 然して永き刻。天より堕とされし美貌天…使徒ミカエルが睡眠ねむり続けていたその場所は……地上といういつかの楽園に存在していた人間という者たちの肉体と魄が分離わけられさせられた……。それは天の生まれた刻からも数千年の後になる刻でもあるが、地上に姿形のあるように存在していた人間という者たちの……魄の脱け殻のようなその肉体という造形が……。そんな永久に溶けない凍りに閉ざされた地に……幽閉の場所にある氷壁のなか静かにかれ睡眠ねむってもいたようだった。


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