第三幕 サタン復活
第三幕 サタン復活
天雷は堕ちてきた。
超時空間の天より解き放たれた硫黄の火球。それは粧青い彩色……瑠璃金石。天の持つ秘法より不思議と産生られし魔石によって……。地上にあり続けているだけでしかない人間といった存在の姿形なき魄の消失。祈りの魄の集まる場所。たぶん……どこかそれもいつかにある文明を持っていた人間たちの姿形なき街といったようにもある場所に……。
祈り……。
それは一体何だったのか……。
超時空間の天。それにあるのは天の存在し続けるだけの糧。
姿形なき魄の存在。その祈りの力。
天は無慈悲である。
祈りなき魄の存在。
祈りを捧げ続けている魄の存在。
然して超時空間の天は……地上よりも深き場所。それよりも更に奥深き凍る地にあった力の波動を感じ取った刻……。永久にその魄の彷徨い続いている。超時空間の天にしては糧となる魄の存在がある地上という場所に向かって……。粧青い彩色をした魔石。超時空間の秘法により不思議に産生られし魔石……瑠璃金石に封じ込めていた力を何の躊躇いもなく……。それにある力を無慈悲にも解放した。
然し……それにより起こる何かに超時空間の天はある誤算をしたが、そこにある事にまだ気がつく刻にもなかった。
静謐なる祈りの存在。超時空間の天への糧となっていた地上の魄。地上に向かって天雷起こり、それは安寧の祈りを捧げ続けていた地上にありし姿形なき魄の存在は砂塩に変わった。
然し……それがきっかけとなり、それまで姿形なき魄だった。超時空間の天への糧となっていた祈りの存在は、いつかの刻……人間たちが構築した文明にあった刻の人間という姿形がそれによって現れたように……。祈りを捧げていた姿形なき魄の存在を……いつかの文明にあった人間たちの持っていたその姿形を取り戻したかのようにある。姿形ある人間といった存在とした塩の塊に変化させてしまっていたようだった。
然して……何かの皮肉のようにも……。超時空間より解き放たれた粧青い魔石からの天雷。燃え盛る硫黄の火球。それは地上を裂割るようにして突き抜けてゆくと、爆熱に地も溶けている。凍る地の天を閉ざしていた灼熱の河に到達した刻……。超時空間の天に飼われていたような、爆熱の地をその吐息で溶かし灼熱の河を作り出していた番獣が吐いていた吐息を更に熱く強くした。
「ふふん。思った通りだ。やはり天は動いた。いいか……オマエがこの凍る地に堕ちてきた刻。その乾いた氷柱……ふふん。そうだ……ミカエル……。オマエが焔炎に包まれた侭に睡夢を見ていた睡眠り……今より数千年より以前に天より堕ちてきた刻の事だ……。オレもいつかにいた。超時空間の天……? ふふん。そんな存在より投げくだされた光輝なる光の鎖に巻かれ繋がれた侭でな……ミカエル。オマエが天より堕ちてきた刻を思い出すよ」
「どういう……意味……だ」
暗闇のなか……そこに暗黒に凍る地で燃え続けている。凍る幽閉の地。それの天にある灼熱の河の彩色。それが少しだけ明るくなった気がした。
「あの刻も……確かにさっきのような地響きがあった。こんな凍る幽閉の地の底にまで聞こえてはそれに感じる地響きがな」
「我は……何も思い出す事が出来ない。その刻の我に何が起こったのか……それすら今は……」
微かにその表情を横に揺らした。
そんなようにいるミカエルがいた。
確かにさっきのような、それにあった地響きはきっと、地上に向かって堕ちた超時空間の天より解き放たれた粧青い魔石からの力にあるのだと思った。
「汝……んん。何を我に言いたいというのだ」
然して見ればミカエルの目の前。
いつの間にか何者かがいた。
それにさっきまで天に向かって聳えていた黒檀の耀きのような黒くある彩色の氷柱は跡形もない。
超時空間の天。第一天…使徒ミカエル。
残り火の如く幽かに天の光を宿し壊折れながらでもあった片方の翼羽の力により破砕された。黒檀の耀きを放っていた氷柱。その代わりのような事に何者かがミカエルの目の前にいる。
然し……ミカエルの問いかけた暗闇からの声の者は……いつの間にか黒く鈍くある光を漂わせているような黒檀の耀きにある鎧兜にその身を包まれていた。
それはサタン。黒く耀く氷柱のなかに睡眠っていた姿形。然して超時空間の天の楽園にいた刻の艶黒に輝く翼羽を後背に持つ麗美なる姿形を取り戻していた。
黒檀のように耀く鎧……それも孔雀羽に飾られた兜。まだ幽かに燃えている戦靴。然して腰に帯びた聖剣。天の使徒ですら……それは何者も切り裂く剣刃を持っていた。
「さて……どうするか。オレの剣は……超時空間の天で鍛え上げられている。ミカエル……オマエが巻かれ繋がれている。天より投げくだされたその光輝なる光の鎖を断ち切るぐらい。そんなような事は容易く出来るだろう。然し……さて……どうするか……」
「やはりそうか……汝は……サタン。だが、あの刻からも……超時空間の天の楽園にあったそれよりからも……汝は何も変わってはいないようだな」
乾いた氷柱に繋がれているミカエルの目の前。
そこにいたのは……サタン。
「ふふん。ミカエルよ……今更に……何故? という。そんな懐疑がオマエはないか? オレもだが……ミカエル。オマエが見続けてきた地上という場所。そこにいた生命体。超時空間の天からしてみればほんの一瞬の瞬き……刹那なる刻だったが……。でも確かに僅かな刻だとしても……地上の楽園。それより始まった人間といった存在の事。その行きついた世界。それを見ているうちに思うようになったよ。オレは超時空間の天の楽園にいた守護者。それにある事より、更に奥深き場所にあったオマエ……緋き魔石の守護者。ミカエルよ……何故……オマエが近づく事が出来た。然して緋き魔石を守護する事にあった。然し……超時空間の天はそれにある緋き魔石に近づく事は出来なかった。どんな使徒を生み出してもだ。緋き魔石が……まるで意思でもあるが如く。それを拒絶んだ。オレもオマエも……超時空間の天。緋き魔石が近づく事を拒絶む。そんなようにある天の未知なる何かの秘法から生まれたのだぞ? 何故だ? オレとオマエが僅かな刻だとしても地上にある生命体を見続けてきたからなのか? いいか……ミカエル。それにしても……何故……オレとオマエだけがそこにいる事が出来たのだ? 然して千年に一度だけ生る不思議の果実。それにある場所もオレの剣が守護していた天の楽園だ。そこに這い延びる蔦の果実にすら……超時空間の天は触れる事も出来なかったではないか。刻は果実の生る千年になれば……超時空間の天は新たな使徒を遣わしてきては、それに生る果実を欲していた。いつかにオレが緋き魔石より不思議に伝えられてもいた。その天の楽園の蔦に生る果実に近づく超時空間より遣わされる使徒ですら……オレはこの剣で打ち払い切り刻んできた」
どこか懐かしき声。
然して何か寂しい風が通り抜けたような感覚。
「天の楽園。千年に一度だけ生る果実……か。それも我は緋き魔石からは離れる事は出来るようでもなく、汝も天の楽園を守護る者だった。誰にも触れる事が出来ない千年の果実は……緋き魔石より伝えられて……我は造り出した。移し身なる我。もう一つの我……。その力を持った使徒なる者は……千年に一度だけ生る果実に近づく事が出来た」
「……ふふん。それは……ノクターナルの事か? 憐れな話よ」
「憐れ? 憐れみがいるのは……サタン。汝のほうではないか……」
「それはどうした事にいう話の事だ」
「汝は……あの刻。我の造り出した使徒なる者を誘惑し、千年に生るその果実を……この凡ての世界をも知り得る智慧の力を持った果実を……どこかへ隠した。それにより……美貌天…淑天としては赦されず。ノクターナルは超時空間にある天の楽園から追放された。たぶん今でも汝の事を恋慕し続けているだろう。その美しさで溢れていた双眸に秘め想いながらもいる。月という暗闇の海に棲んでいては……いつかに我と双並ぶようにいた美貌天だと称されし汝。それにある姿形も変わってしまった。まだ、姿形もあった人間のいた地上に堕とされた汝の変わり果てた醜形いようだというような姿形を太陽からの返景で照らしてしまわないようにと……月の陰影を何故……ノクターナルは然して満ち欠けさせてもいるのか……。それが……サタン……汝に解るのか……」
それに話しているミカエル。
然し……サタンはどこかそんな話に不敵な微笑を浮かべていた。
「……もし……? いいやそんな事にあるはずは……」
「あぁ……そうだ。いいとこに気がついたじゃないか。あの刻……。千年に一度だけ生るあの果実を喰らったのはオレだよ。だが……然し……超時空間の天にいる。あの天の慰みでしかない土塊の魄の者……。形状も持たない天がいつかに憧れ続けた人間の美しき造形の姿形をオレとミカエル……オマエに与えたように……でも、それは麗しき翼羽を後背に持たない。あの人間らしくある姿形に造られた天の慰みの者の事ではない。あれは……憐れだ。然し……話も天の楽園にあった果実に近づく事が出来た唯一の使徒。美貌天とある事に相応しい麗美なる者。匂い発つ美しさ際立つ使徒。美貌天…第一天…使徒ミカエルによって造り出されし者。天の土塊のそれよりも……憐れだ。千年に一度だけ生る果実をどこかへ隠した? ふふん。何と言ったって話では……そんなようにある話にした。オレの身代わりになったようだよ」
それは何か……ミカエルの意識を不意に過った。それと思った話の想像が現実的だったという事になる。
「サタン……汝……そんな事に……ノクターナルを……」
ミカエルの問いかけたようにもある話しに、サタンは答える事もなく話しを続けた。
「超時空間の天の楽園。それにある緋き魔石への場所を伝えるようでもある事にそれを守護ってもいるが如く。その場所への路の時空の扉を包み込むようにあった楽園の蔦。それに生る果実。千年の刻……。緋き魔石。楽園の果実。それに近づく事も出来ない超時空間の天。オレはいつからかそんな超時空間の天に懐疑を持ったんだよ。それはもしかすると……ふふん。千年の果実を喰らった刻からその答えは知る事になったが……。人間といった存在に興味深い思いを感じるようにいたのか……。然してオレは待っていたんだよ。超時空間の天にある楽園の蔦に生る果実……千年に一度だけ生る……果実を……」
超時空間を越えた場所に……。
地上の楽園はある。
超時空間の天が生まれるより遥か旧き刻より雲に巻かれるように宙に浮き廻り続けている緋き魔石。それを幾万年という刻に見守り続けていた。地上にある魄の循環。滅生と再生にある魄の邂逅を司りし緋き魔石の守護者。何故か超時空間の天によって地上より深き地……それよりも更に奥深き場所。凍る地に幽閉されていた。
超時空間にある天の楽園の守護者。……その存在は……とある事から地上に堕とされると何よりも美しき姿形を醜形のように変えられ……然して堕ちたはずの地上から不思議といつしか凍る幽閉の地に不思議と秘密に隠されていた。
美貌天…第一天…使徒ミカエルより造り出された麗美なる淑天。超時空間の天にある楽園に這う蔦に生る果実……千年に一度だけ生る不思議の果実に近づく事を不思議と唯一人だけ赦されていた使徒。然し……ある想いを抱いた事から……異美なる者。そんなようにある者とされ永久に超時空間の天より中天に浮かんでいる月の暗い海に追放された。
凡ては……それら超時空間の天にある不思議な力と地上にある魄の安寧にあっての祈りを知る。然し……それは天の存在……超時空間の天が存続するだけの糧でもある。そんなように何か地上にも超時空間の天にもある楽園の力を守護していた者にも……今ではどれだけの刻が流れ過ぎていたのか。それに持った懐疑はあるようだった。
ーーーーーーー--