箸休め 色々な色 ⑤紫が高貴な理由
番外編です。
前回に引き続き、紫の雑学を語っています。
本当は1回で終わる予定でしたが、予想に反して前後編になってしまいました。
さすがキュアソードの色!(しつこい)
今回は紫の語源を紹介したりしています。
色に纏わる蘊蓄を垂れている今回のシリーズ。
前回に引き続き、今回は紫が権威の象徴となった理由を解説します。
古来、紫の染料は、作るのが非常に難しい代物でした。
古代ギリシアの時代、紫の染料は地中海の巻き貝から作り出されていました。
「アッキガイ」と言うグループに含まれるこの貝には、分泌液を吐き出す性質があります。この分泌液は白い色をしていますが、日の光に晒すことで紫に変化する特徴を持っていました。
とは言え、一匹から採れる量は極めて少なく、1㌘の染料を得るには数千匹から数万匹の貝が必要でした。そのため、非常に高価で、身分の高い人にしか使えませんでした。
ちなみに当時、この貝は「purpura」と呼ばれていました。何となく想像は付きますが、紫を意味する「Purple」はこれに由来する言葉です。
稀少かつ美しい紫は、多くの権力者に愛されました。
歴代のローマ皇帝に至っては、自分以外が紫を纏うのを禁じていたと言います。
現在でも英語には「born in the puple」なる表現があり、「王家に生まれる」と言った意味で使われています。また貝で染めた紫色は、「ロイヤルパープル」と呼ばれています。
一方、日本では紫の染料を作るのに、「ムラサキ」の根を使っていました。
ムラサキはシソ目ムラサキ科に属する植物で、日本全土の日当たりがよい場所に自生しています。長さは50㌢前後で、夏になると白く小さな花を咲かせます。「パープル」が「プルプラ」に由来するように、「紫」は「ムラサキ」から名付けられました。
根は染料だけではなく、漢方薬としても珍重されてきました。
乾燥させた根は「紫根」と呼ばれ、皮膚病や解毒、解熱などに効果を発揮します。
紫根を使った軟膏「紫雲膏」は、現代でもドラッグストアで販売されています。皮膚炎やヤケド、痔などに効果があり、有名なクラシエや小林製薬からも販売されています。
生地を染める際には、紫根を粉末状にし、お湯に溶かします。
後は生地をそこに浸せばいいのですが、一回では染まりません。美しい紫色を出すためには、何回も染める必要があります。しかも一回染めるごとに、色を定着させる工程を行わなければなりません。
「媒染」と呼ばれるこの工程には、水に溶かした灰が使われます。灰にはツバキが用いられており、使う量によって発色が変わるそうです。
ムラサキは弱い植物で、現在でも栽培は難しいとされています。
また染色自体にも手間が掛かるため、昔の人々がおいそれと使える色ではありませんでした。必然的に用いるのは身分の高い人々になり、紫=高貴と言うイメージが定着していったのではないでしょうか。
実は日本にも、アカニシやイボニシと言ったアッキガイの仲間が棲息しています。彼等にも分泌液を吐く性質があり、紫の染め物に使うことが可能です。
事実、佐賀県の吉野ヶ(が)里遺跡からは、貝で染めた布が発見されています。この布は弥生時代のもので、遺跡からはアカニシの貝殻も出土しているそうです。
長くなったので、今回はここまで。
次回は、作者が愛するあのキャラの色を取り上げたいと思います。
参考資料:色彩心理のすべてがわかる本
山脇恵子著 ナツメ社刊
色の知識 ――名画の色・歴史の色・国の色――
城一夫著 青幻舎刊
吉野ヶ里歴史公園ホームページ
http://www.yoshinogari.jp/




