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9オブザデッド


「じゃあ墓場を越えましょうかー」と黒髪和服ロリのうぃんこすが、やる気なさそうにバールのようなものを掲げながらうめいた。


「しかし墓場といっても、日本はすべて火葬だろ?」

「だよねー。地面の中にゾンビが埋まっている海外とは、文化が違うんだよね-」


 マッチョの松坂牛男と女子小学生のミーーナがのんきに話をしながら歩いている。その話を後ろから聞きながら、確かにそうだ、と作家はうなずいた。もっとも土葬の風習が続いているところはそこまで多くない。


 だが、そんな話をしていた松坂牛男とミーーナがずぼっと地面に引きずり込まれた。どちらともなく「え?」とつぶやいた後、悲鳴が響き渡った。土の中にゾンビなんかいないはずなのに、なぜ!


 いや、ゾンビはいた! この墓場はなんと日本にはあるはずのない土葬墓場だったのだ! 驚き!


 引きずり込まれたふたりはとっくにゾンビに変わってしまった。埋まっていたゾンビも這いずりだしてきて、一同に次々と牙を剥く。


 きしゃー!タイムである。


 今回犠牲になったのはすごく動物だらけだ。まず柴犬の忠犬がかみ殺された。忠犬は口に徳川埋蔵金と書かれた本を咥えていたが、噛まれたショックで落としてしまった。


 次に名古屋コーチンのにわとり。クリスマスの夜にぴったりのにわとりは、ゾンビに噛まれておいしくいただかれてしまった。心なしかにわとりに噛みついたゾンビは嬉しそうだ。身も締まっておいしいだろう。


 さらに1メートルくらいのクマのぬいぐるみであるマイカが噛まれた。本体がぬいぐるみなので、あちこちに綿が飛び散った。バラッバラである。バラッバラ。


 足だけムキムキの鳥頭も、鳥のようなものだ。下半身がマッチョすぎてゾンビが噛んだものの歯が立たなかった。鳥頭はドヤ顔をしたのだが、その顔を噛まれてひっくり返る。さらば鳥頭。


 学ランを着た男、相沢はスクールバッグを振り回しながら応戦する。バッグに入った水筒がちょうどいい感じでゾンビの頭に当たって、ゾンビはふらついたがしかしそれだけだ。頭皮を噛み付かれて、相沢は倒れた。


 金髪 ショート 碧眼と翠瞳のオッドアイ エルフ ロリババァ 釣り目 かんざし リボン 猫耳 巫女装束 肌白め 身長低め 少し痩せ気味 草履(原文ママ)のなんだかもうよくわからないみかみででんという人物が、ゾンビに噛まれて死んだ。外見を描写するときには上から順番か、遠くから近づいていくのがセオリーなのに、オッドアイのあとに少し離れて釣り目と書いてあるのが、なんとももやっとする外見描写であった。頭部も頭部でまとめよう。


 ぐるぐるメガネをかけた二十代の男、ハブは手に持った広辞苑でゾンビの横っ面を張っ倒す。しかしそれで倒れるほどゾンビはやわじゃなかった。返す右ストレートでハブの頭は吹っ飛ばされた。腕力が高めのとても豪快なゾンビだった。


 一気に九人も死んだが、今回はもう少し死ぬ。


 一同が慌てて逃げているので、鯖の入った水槽をもっていた作家の手が滑って鯖が地面に落ちた。「は! ご、ごめん!」 しばらくびちびちと跳ねていたが、鯖はゾンビに踏まれて死んだ。第9話目まで鯖が生きていることがむしろ奇跡だったのではないだろうか。


 墓場は異様に長い。まだ道は半分もいっていないだろう。


 かわいいこっくさんのあすかが、ふいにゾンビに組み付かれた。一度目は転んでかわし、二度目は屈んでかわし、三度目はつまずきかけたことによってゾンビの攻撃をかわしたものの、その驚異的な幸運は四度目まで持たなかった。ガッと噛み付かれてバクッとされた。手に持っていたフライパンがからんからんと地面を転がった。


 全身黒タイツ(胸のところに〝悪玉コレステロール〟って書いてある)を着たロボトミーは、得意のマーシャルアーツで飛びかかってくるゾンビをはじき返していたが、その体力も尽きたところを狙われた。がぶっとやられたロボトミーにもはや感情はない。まるでロボトミー手術をされた人物のように。


 とてもおいしいメロンを抱えたふうとくんも、がぶりとやられてしまった。ふうとくんは風に吹かれながら灰になってゆく。墓場にはいい風が吹かなかったが、仲間が死ぬよりも先に自分が犠牲になったことに、ふうとくんは少しホッとしているかのような死に様であった。


 白いYシャツに赤のネクタイ、赤のスーツの好青年(白髪) 相棒のルドルフ(銃)と共に、夜を駆ける(原文ママ)の三田十字は、ルドルフmk2のモデルガンをパラララララと鳴らしながらゾンビを牽制する。しかし、大量のゾンビを引きつけてしまってゾンビにたかられて亡き者にされてしまった。


 ぬで~~としたのっぺらぼうのぬでぬでも犠牲になった。そもそも一同の中に正真正銘の妖怪が紛れ込んでいたのがすごいと思いつつも、ゾンビからは仲間だと見なされなかったようだ。そのつるつるてんの頭部はおいしそうに見えたのか、ゾンビたちはがぶがぶとぬでぬでを食い尽くした。果たして妖怪もゾンビになるのだろうか。それは誰にもわからない。


 最後に、黒髪ロング、セーラー服を着た藤井ヒナと、RAINという喋る三毛猫が犠牲になった。当然、彼女が本物の藤井ヒナであればゾンビごとき文字通り一蹴なのだが、所詮はコスプレイヤーなのでがぶりとやられて藤井ヒナゾンビになってしまった。『恋をしたら死ぬとか、つらたんです』は全103話です。よろしくお願いいたします!


 さらにRAINは喋る三毛猫である。「ぎゃー!」やら「マジでー!」やら素っ頓狂な悲鳴をあげながら噛まれて死んでゆく。犬、にわとり、クマのぬいぐるみ、鯖、そんな風にたくさんの動物ばかりが死んでゆくターンであった。



(そもそも、なぜわたしはずっと鯖の水槽をもっていたんだろうか……)


 作家は首をひねっていたが、よくわからなかった。鯖は食べるとおいしいからだったのかもしれない。



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