7オブザデッド
どぐしゃあと血しぶきが舞った。ゴルゴンゾーラと暗黒騎士は奮闘したが、数の暴力には勝てなかった。タンクが突破された以上、炊事班に打つ手はない。なんといっても彼が持っているのは、穢れなき翼、バケツ、ボディソープ、育毛剤、ツナ缶、ビー玉、生魚、ほっぺにためたヒマワリ、とんがり帽子などなのだから……。
雪だるまのスノウは溶け、全裸のけもりあとメイド服を着たクイズ王ナナミネは喉笛を食い破られた。お経を読めないエセ坊主であるなる夫は「アーメン」と言い残して足を噛まれゾンビになった。狐のお面をかぶっているミツネは、ボディソープで体をしっとりとすべすべに保湿したのちに噛まれた。さらばである。
並木塩はモッズコートにブーツと冬のナイスなコーディネートをしていたが、それらは真っ赤に染まってしまった。しろてんの四本の腕は食い破られて二本になった。ペンギンのへいほーはゾンビペンギンとして蘇った。とっと小太郎もまたゾンビハムスターに。ゆかちはゾンビ人間である。
さらにモール組のリーダー、ヒルデンブルグもまた食い殺された。彼女の手にあったしっとりとふやけたゼクシィやたまごクラブひよこクラブは、己の血によってどっちゃりとふやけてしまった。
そこにタイミング悪く巡回班と防衛班がやってきてしまったのだから、さあ大変。ゾンビとして蘇ってゆく仲間を見て、彼らは青ざめた。
「なんじゃこりゃあ!」
「どうしてこんなにゾンビがいっぱい!?」
彼らは誰かの手によって裏口が開け放たれていただなんて、知る由もない。
「ここは私が!」
「俺に任せろ!」
そこでチェーンソーをもったおさげエルフ女子のティカと、日本刀を構えた佐竹義重が前に飛び出た。日本刀は本当にモールにあったようだ。だがそれは最初の一太刀でペキンと折れる。模造刀であった。
「馬鹿な……、俺の、魂が……!?」
佐竹義重はそのまま噛まれて死ぬ。「えええっ!?」と隣を守る人間がゾンビになったことによって周囲を囲まれたティカも食われて死んでしまった。
「やばいやばい、ここにバリケードを張ろうよ!」
残念ななろう作家である木原ゆうの提案に、他のみんなも賛同した。もはや敵を討つとかいう次元ではない。このままでは物量で圧倒されてしまう。
「でも、みんなの敵を取らないと!」と主張したのは、SANチェックが入るほど超絶かわいい女の子であるヒダカだ。そのきらきらした瞳に男たちは我を忘れてうなずいた。「うおおおお!」と特攻してゆく。
小学生の男の子であるローミオーはまたたびをもって果敢に挑みかかったが、それがなんの役に立つのかまったくわからなかったし、わからないまま殺されてしまった。
大型の獣人である犬山犬太郎(茶髪、麻呂眉、巨漢)はチワワを引き連れてゾンビに挑んだが、チワワが噛まれたあまりのショックで戦うことを放棄し、虚無っている間に噛まれた。二匹仲良くゾンビ犬になった。
こうなってはもう手がつけられない。バックヤードからゾンビが一気に二階になだれ込んでくる。天然っぽい感じがするきごうは、ゾンビに噛まれて「でもわたしよく人から天然って言われてぇ」と言われながら死んでいった。
まっとうな主張をしたはずの木原ゆうも、所詮は体力が1なのでゾンビを振り切ることができずにゾンビに噛まれてゾンビとなった、ゾンビ作家である。
首から下は普通に白のポロシャツと青のズボン着た青年であるカンテラは、首から上は何故かハロウィンカボチャを被っているので頭への攻撃はまったく効かなかった。「ざまーみろ!」と何故か目の辺りが赤く光るが、第二のゾンビが腰に噛みついてきてカンテラも死亡した。
あんまりインド人っぽくはない晩飯はキーマカレーはフライパンとおたまを持ってきょうの晩飯を考えている間にかみ殺された。なんだよ晩飯はキーマカレーっていうその名前……。知らないよ……。
重力にまけてるぺぺは地球の1Gという重力に勝てず、這いつくばったままゾンビに噛まれて死んだ。2016年になっても、人は重力を克服することができずにいるのだ。
そして柔道着を着てフランスパンを持っている和菓子もまた、大量のゾンビに押しつぶされるようにして死んでしまった。かくして防衛班は全滅である。
「こりゃあ、参ったな。モールは捨てるしかないようだ」
防衛班班長であるサーボを除いて。
一方、モール組がそんな騒ぎになっていると知らない一同は、道を歩いている最中、あまりにも幸運がないみかみてれんが蓋の開いたマンホールに落下して死亡した。「みかみてれんー!」という誰かの叫び声が聞こえて作家はビクッとしたが、それが自分じゃなかったのですごいホッとした。でも嫌な気持ちになったのだった。
(同じ名前の人が死ぬのすごい嫌な気分だわ……)