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4オブザデッド


 さて、残るは232人である。


 けっこうハイペースでがっつり殺したつもりなのだが、ぜんぜん減った気がしないのはなぜだろうか。


 それはともかく、安全な道を抜けて外に出た一同は、神山荘の前にあるバスターミナルでいったん休憩をしていた。辺りにゾンビの姿はない。


 ほとんど運動もしないので体力の全然ない作家がへばっていると、「大丈夫ですか? みかみてれんさん」と藤井ヒナのコスプレをした人と、ルルシィールのコスプレをした人が気遣ってくれた。優しいので思わず惚れそうになってしまう。


「やはり武器が必要だな」と佐竹義重がつぶやいた。甲冑を身にまとった、ゴリマッチョのツインテールだ。「ショッピングモールにいこう。あそこなら私の日本刀も置いているはずだ」


 えっ、置いているかな!? と作家は驚く。だがあまりにも自信満々に言うので、置いてそうな気がしてきた。


 すると口々に「そういえばガンランスも!」「ミッキーマウスも!」「バカな男どもも!」「リヴァイブストーンも!」「ゾンビに襲われなくなる錠剤も!」と言う声がした。絶対にないだろうと思いつつも、皆の希望の光を消すのは申し訳ないので、作家は曖昧に笑うことにした。


 作家の肩にぽんと誰かが手を置いた。それはスティールアーマーのコスプレを着たレルブであった。彼なのか彼女なのかわからない人は、諭すようにうなずきながら言った。


「つまりあるのだよ、ショッピングモールには我々の──希望が」

「お、おう」


 そんなにタメて言われても、と作家は思った。


 一同はまだ無事なバスをジャックし、一路ショッピングモールに向かう。それぞれのバスは40程度しか乗れないので、6台での出発であった。スケール感が普通のゾンビものとはまったく違っていた。


 ちなみに名無しはモヤがかかったような感じでうまく認識できなかったので、バスに乗れず置いてけぼりにされた後、集まってきたゾンビに食われて死んだ。





 ショッピングモールにバスで向かっていると、しかし大通りは車が横転して通行止めとなってしまっていた。仕方ないので一同はバスを降り、路地を通ってショッピングモールに向かう。危険な旅であった。


「それにしてもなんかめちゃくちゃ着ぐるみが多い気がする」


 作家は改めて気づいたようにつぶやいた。参加者のうち、着ぐるみを着た人が9人ぐらいいる。もはやクリスマス着ぐるみパーティーだ。


 まあそれがどうということはない。路地はひっそりと静まりかえっていて、今にもどこからかゾンビが現れそうだ。


 231名は足音を殺しながら、周囲を警戒しつつショッピングモールへと向かう。(さらっと書いたがとんでもない地の文である)


 だがそんな移動中も、思わぬ落とし穴があった。


 そう、なんと231名の中に一台の戦車が紛れていたのだ。どうやってバスに乗っていたのかはともかく、キャタピラがコンクリートの上を走る音は非常に大きい。その音に引き寄せられて数多のゾンビが現れた。南無三!


「──」

「ああっ、戦車が!」


 一台の戦車マスティは自らの罪を償うために、ゾンビの群れへと突っ込んでゆく。だがそこにもうひとり、加わる影があった。あなただけに良い格好はさせませんわ、という態度で前に進み出てきたのは、全長216メートル、金剛型戦艦の三番艦、ハルナであった。


「──」


 ハルナがどうやってバスに乗っていたのかは(以下略)、ともあれハルナはすべての砲塔をゾンビに向けた。ドォンと強烈な音が響き、正面のゾンビは吹っ飛ばされた。だが、その音は市街のすべてのゾンビを引き寄せるほどだった。


 それはすなわち、ハルナとマスティがふたり(二台?)でゾンビを引きつけるというものだった。229名の命を守るために、犠牲になると言うのだ。それが人を守るために造り出された兵器というモノのサガであり、喜びであった。


 やがて彼らの姿はゾンビに埋め尽くされて、見えなくなってゆく。


 彼らの犠牲を見送った参加者たちは、自然とひとつのポーズを取っていた。無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった。涙は流さなかったが、無言の男のうたがあった。奇妙な友情があった──。



 そして残るメンバーは無事、ショッピングモールにたどり着いた。


 ゾンビモノではド定番のショッピングモール。しかしそこも、安住の地ではなかったのだ──。


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