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2オブザデッド

 ゾンビが出たって言っても、会場にもゾンビいるしなぁ、と作家はのんびり思う。


 そのときだ。男はゆっくりと前のめりに倒れていった。いくらなんでもリアクションがオーバーだ。心配した何人かが彼に近寄ってゆく。作家は白ワインを片手にのんびりと見ていた。


「あの、大丈夫ですか?」


 量産型大学生のよるつきが声をかけると、男はびくりと震えた。よるつきはさらに彼をさする。そのときよるつきの幸運がファンブルした。男がゆっくりと頭をさげる。その目はすでに光を発していなかった。


「え?」


 ぶちゃあと男が量産型大学生に噛みついた。鮮血が飛び散る。


「出し物にしてはちょっと派手すぎない!?」

「なんなの!?」

「シュゴー、シュゴー」

「ひいいいいいいいいい!」


 よるつきは後ろにばったりと倒れてゆく。辺りに悲鳴が響き渡った。

 バケモノと化した男の背後からは、いくつもの人影が現れた。それらすべてが足を引きずっており、くぼんだ眼下に光がない。


 ゾンビ、明らかにゾンビである。


「ゾンビだ!」


 先ほど噛まれたよるつきもまた立ち上がり、ゆらゆらとこちらに向かってきている。べちゃりと顔から肉がただれて落ちた。そのおぞましい姿を目撃した人は皆、すくみ上がる。


 間違いない。これは本物のゾンビだ。


「みんな、早く逃げるんだ!」と叫んだ者がいた。それは一同の中でもっとも知力の高い、ハブとガーネット、それにC3-POみたいなロボットと、テーブルの上の桜餅だった。その声に弾かれたように、一同は会場を逃げ出そうとする。だが、逃げ出すためにはあのゾンビの群れをかいくぐらなければならない!


 さあ一同諸君は腕力、知力、体力、幸運のうち、もっとも得意なもので窮地を切り抜けるのだ!



【 判定 → 失敗25名 】



「ニャー!」と最初に飛びかかったのは黒猫のタマだった。タマは活路を開くためにゾンビののど元に食らいつく。だが腕力がさほどではないのでダメージを与えることができず、そのまま噛まれてしまった。ゾンビはどうやら動物も食うようだ。


 続いて、黒髪のポリバケツをかぶったエドヴァルドが殴りかかった。勇気ある者であった。道を切り開こうとした彼のあとに、何人も続いてゆく。エドヴァルドは噛まれてゾンビになった。


「ぐっ、や、やめろ!」


 メタボ原のおっさん、もすげんがゾンビに足を捕まれる。げしげしと何度もゾンビの頭を踏みつけるが、体力がないのですぐに息を切らしてしまう。動きが止まった辺りで、彼は三匹のゾンビにたかられて見えなくなった。叫び声が響く。


 再び「ニャー!」と悲鳴が響いた。また猫がいたようだ。久限というネームプレートを下げたにゃんこは、猫ぱんちで必死に応戦するがゾンビに噛まれて息絶えた。そしてゾンビにゃんことして復活するのである。


 ジャンパーにジーンズ姿の闇夜は、そんな風にゾンビとして復活した二匹の猫にクロスアタックを食らって会場に沈んだ。げに恐ろしきゾンビにゃんこである。


「ヒャッハー! 逃げろ逃げろォ!」


 世紀末モヒカンスタイルの男、死亡不乱君は割ったビール瓶を即席の武器としてゾンビ相手に奮闘をした。会場を出たフロントにも大量のゾンビがいる。もしかしたら、血の臭いや音に反応して集まってきているのかもしれない。死亡不乱君はひときわ大きな声で「ヒャッハー!!!」と叫んだ。その声に集まってきたゾンビに噛みつかれ、死亡不乱君は死亡した。


「うう、なんてひどいんだ」


 作家はそんな彼らの死を悼みながらも、口元に手を当てて駆けてゆく。自分の身を守るので精一杯だ。己は無力だと作家は強く感じた。せめてなにか武器があれば……。


 ゾンビどもは動きが遅い古典的ゾンビだが、しかし狭い館内で密集しているとなると、逃げ場がない。その力で捕まえられて、引きずり倒されたら終わりだ。


 逃げ出す人々の前に、ゾンビが立ちはだかる。もうだめだ、この状態で逃げ切ることなんて……! そう諦めかけたそのとき、ゾンビどもはまるで人々から興味を失ったかのように、行く先を変えた。


「いったいなにが……?」


 誰かがつぶやく。ゾンビはもはや誰もいなくなったはずのパーティー会場内に足を踏み入れてゆく。


「な、なんでもいい! とにかく今は逃げよう!」と三多さんが言った。誰もがその言葉に従い、ゾンビであふれるパーティー会場をあとにした。



 逃げ遅れたにごりの旨み、桜餅、ハンバーグ、はずれ(スコップ)、色白大根、マルヤキーナ=ターキー、うどん、は全員ゾンビにおいしくいただかれるか、砕かれた。彼らは自力で移動できないのだ。


 また、ゾンビっぽい見た目、あるいはゾンビそのものである、あしぇ、ゾンビ、ゾンビJ、りょうご、佐藤、もやしは、あまりにも間が悪い格好をしていたために、逃げる最中他の参加者によって撲殺された。仕方のないことであった。



 残る参加者はなんとかパーティー会場を脱出した。しかしまだ神山荘の中にはゾンビがひしめいている! 果たしてこの建物を脱出することができるのか!




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