19オブザデッド
いよいよ残り五話だ。しかしなんとあと81人ぐらい残っている。三話前には〆にいきたいので、今回二十人ぐらい殺さなければならない。人を殺すのってなんて疲れるんだ!!!
さて、まずは松永久秀チームを探しにいったキー坊チームだ。洋館の二階を探索していた彼らは、兜の鍵を見つけ鎧の鍵を見つけ絵の順番をそろえて次の扉を開き銅像を動かしてその目から青い宝石と赤い宝石をゲットし三枚のレリーフを集めてそれをはめて剣の鍵を見つけワシの像の両目に宝石をはめて手に入れた盾の鍵でのみ入れる最後の部屋に立ち入っていた。
そこではげに悲しき物語があった。この洋館を作った偏屈な老人が遊びに来た娘夫婦をそのトラップで殺害してしまったことにまつわるエトセトラ。さらにそれ以降、洋館は誰も足を踏み入れないように厳重に閉じられていたことなどなど……。
あまりにも悲しき物語にあざらしのたままはぽたぽたと涙を流した。触手の生えたジャガイモであるえくぼも、わさわさしていた。
「いや、でもこれを探しに来たわけじゃないよね!?」
ハッと正気に戻って叫んだのはキー坊だった。彼は日記を叩きつけて、皆に振り返った。そうだった。松永久秀チームを探しているうちに謎を見つけて、あれよあれよという間に解いてしまったのだ。
「いったんホールに戻りますか」と普通すぎて何故か浮くほどの普通さのりゅうぞうじーが進言した。今はその普通さがなによりも温かい。
アフロのさわやかなイケメンである餅巾着も「それがいいと思うよっ」と白い歯を光らせて賛同した。
こうして一同はホールへと戻ってゆこうとするのだが、その前を見慣れないなにかが通過した。とうてい人には見えないものだ。丸っこい手足に無骨な両手両足がつけられている。一見デフォルメな二等身にも見えるが、その手には巨大な斧を握りしめていた。
「なんだあれ、処刑人みたいだな……」とぞんびだいすきがつぶやいた。もう変換すらしない。
「ちょっと様子を窺いましょう」とタンクトップに短パン。ヒョロガリ。あばらが浮き出ているサクゴは言う。さすが謎を解き明かしたチームだけあって、もはやコンビネーションはばっちりだった。タウコウトカと模歩 模斧雄が左右を確認しつつ、処刑人が行ってくれるのを待っていた。
だが、ぎょろりとした処刑人の目がこちらを捕らえた。やばい、逃げなければ。11人は駆け出す。ホールに戻ればたくさんの仲間がいるはずだ。あと少しで逃げ切れる。あと少しで!
ばたんとホールに続くドアを開く。するとそこに生者は残っていなかった。大量のゾンビがキー坊チームの面々を見上げる。「うそでしょ」とゆぞはつぶやいた。三多さんは頭を抱えて泣き崩れた。えくぼはわさわさしていた。
処刑人とゾンビに挟まれた11人は奮闘したものの、その命を無残に切り落とされた。もう11人の帰る場所はどこにも残っていなかったのである。
さらに洋館の虐殺は続く。
その20人は大きなグループだった。彼らは狭い部屋に身を寄せ合い、暑さに頭がどうにかなってしまいそうなのを我慢していた。だが、いくら待ったところで助けはやってこない。徐々に熱に浮かされて考えがやばみを増していった。
うぃんこす、だるます、ぶりゃ、ブリキノ・バケツ、ぬきつねこ、教授、三太、火喰 烏、ヌイグル、キョド子、七海 奈々、ぼっちゃり、ATM、アキラ、てぃっぴー、ghjgf、うすしお、るりっち、一郎、大西Kenjiの20人のうち、誰か一人が発端だった。
「裏切り者って誰なんだよ……」
そうつぶやいたひとりの言葉が20人に疑心暗鬼をもたらした。まず最初に着ぐるみのヌイグルが「お前が裏切り者なんだグル!」と近くのピエロを指さした。ghigfは「フフフ、ボクじゃないよー! あっちの子じゃないかなー!」とさらに隣を指す。怒ったぬきつねこは「なんだと!?」とghigfの胸ぐらを掴む。
「だったらお前なんて最初から怪しいじゃないか!」とダルマに手足が生えた姿のだるますがやり玉にあがった。確かにめちゃくちゃ怪しかった。怪しいと言えばブリキのバケツをかぶったブーメランパンツ姿の偉丈夫、ブリキノ・バケツも死ぬほど怪しい。ていうかあやしくないやつなんていなかった。
キョド子が「もう殺してやるっ!」と言い出して急にその場にあったナイフを隣の、ファーや羽飾りがついたジャケット、青いメッシュの入った髪、普通の顔、普通の顔である火喰鳥の胸に突き刺した。血が吹き出る。ついにやってしまった。人が人を殺したのだ。
だがもうその場の20人に倫理観など存在していなかった。彼らは人の形をしたゾンビを思う存分殺してここまでたどり着いたのだ。ならば生き残るためにはどんな手も尽くすだろう。
「そうかわかった、裏切り者はお前だな!」
強面、細マッチョ、女のアキラがキョド子を殴り倒した。それとともにあちこちで乱闘が起こる。ATMとてぃっぴーがつかみかかり、うすしおがるりっちに刺される。三太と教授が髭を引っ張り合う。七海奈々はアイアンクローでぶりゃの顔を粉砕し、うぃんこすもまたバールのようなものでぼっちゃりの頭部をお見せできない状態にした。一郎と大西kenjiは互いのファッションについて褒め合っていた。優しい空間だった。
そしてしばらく経ってから、一匹のゾンビが部屋のドアを覗き込む。すると中にはぐっちゃぐっちゃになった20人の死体が転がっていた。だが恨むことなかれ。20人は死んでこそようやく液体となってひとつになれたのだ。ゾンビモノには定番の仲間割れのあとに、熱い血潮を混ざり合わせる仲直りの時間も確かに存在していた。来世ではまた仲良くやろうぜ!




