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16オブザデッド


 さて、ホールに残っている人物は、残り約90名だ。ここまで名前が出てこないと心配している読者の皆様は安心してほしい。そのうちの80名はまだたぶん名前が出ていない。


 ここにひとり、クリストファー・ネイビスというヒステリックなBBAがいる。持ち物に愛犬のコギー、四つ葉のクローバーの栞、家内安全のお守り、白蛇の脱け殻という四つも指定した欲張りなおばあさまだ。


 実は筆者が参加メンバー表を作りながら「ああこの人はこういう場面で使おう」と役割を決めていたうちのひとりなのだが、なんやかんやあって今まで出番がなかった。ぶっちゃけ忘れていた。Excelシートに赤線で記入までしていたのに、だ。


 寛大な読者の皆様には多めに見てほしい。なにせ1円にもならないことをしかも徹夜で、当日の何日も前からコツコツと準備をしてまでやっている企画だ。その上、読者の皆様からお叱りを受けてしまっては、今生き残っている110名ほどの命がどうなるかわからない。手が滑ってコピペで殺してしまいそうだ。(人質)


 それはそうとして、クリストファー・ネイビスだ。彼女は愛犬のコギーが手元からこぼれてしまったことに動揺し、ゆっくりと起き上がってコギーを追いかけてゆく。「ワンちゃん待って、ワンちゃん待って」 行く先のドアはなんと洋館の外へと続くドアだった。


「あ、あれ、ちょっと!?」


 青い髪に金の目のビスクドールであるマキラが思わずクリストファー・ネイビスを指さす。誰もがその老女の行動をやばいと思いつつも、止められなかった。そして、クリストファー・ネイビスはコギーが外が出たがっていることを知ってドアを開いた。


 大量のゾンビが、ホールになだれ込んできた。


「────ッ」


 クリストファー・ネイビスは真っ先にゾンビに噛まれて息絶えた。残る一同ももう大富豪をやっている暇などない。慌てて蜘蛛の子を散らすように洋館の各地へ散らばっていった。


 完全にデッドライジングのオープニングそのものなのだが、読者の皆様のご指定なのだから仕方ない。筆者は別に110名全員生き残ってくれてもよかったのに! ああ仕方ない! 残念だなあ!


 こうして均衡は破られた。いよいよこの話を終えたら残り8話。〆の三分の一が始まろうとしている──。




 一同は洋館に多く散らばった。ここはその一室、一階のキッチンである。


 あちこちにゾンビの気配がある中、小太りの怒裏流(読めない。いや、ドリルか!)とふわふわ系女子のユラハは同じ冷蔵庫に入って隠れていた。はぁ、はぁ、と吐く息が白い。このままでは凍えてしまうが、外に出ればすぐにゾンビに見つかって死んでしまうだろう。


 ふたりはせめて身を寄せ合いながら、暖を取っている。そこにがちゃりと冷蔵庫が開いた。


「──」


 と、そこにいたのは金髪のチャラそうなアメリカ人、アレンだった。スマホの充電器を片手に「HEY! 俺も入れてよ!」と頼み込んでくる。いやいや、ここはふたりで限界だし!」


「ちょ、早く閉めて、閉めて!」

「入れてくれたら閉めるよ!」

「無理ですってば!」


 三人は押し合いへし合い、そのままなんとか扉を閉めようと頑張るが、結局三人入るのは無理だったので、三人仲良くゾンビに食われて死んでしまった。死こそが平等に降り注ぐのであった。




 17歳の坊主の野球少年である中吉と、村人Gの田奈たな 奏多かなたは背中合わせに戦っていた。彼らの周りにはゾンビの死体(ゾンビの死体ってなんだ……?)が七体転がっており、ふたりの奮闘の証を証明していた。だが、いい加減に息も切れる。体力の高いふたりも限界だった。


「オッサン、もうへばったのか」

「へん、若造がナマ言うんじゃねぇよ。俺ぁまだまだやれるぜ」

「無理すんじゃねえよオッサン、どうせ腰にきてんだろ」

「若造こそ、減らず口叩いている暇があったら周りを見ろ。視野がせめえんだよ」


 そんなことを言い合いながらふたりは向かってくるゾンビをにらみつける。こんな土壇場でこそ生まれる友情もある。それはあるいは年齢もはぐくまれた時間も超えて、真の友情と呼ぶにふさわしいものだったのかもしれない──。


 中吉と田奈たな 奏多かなたは力尽きるその瞬間もまったく同じだった。これからもゾンビとして仲良くやっていくのだろう。ふたりの友情に、カンパーイ!


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