1オブザデッド
「あ、いたいた、てれんさん」
ひとりの作家は立ち止まる。振り返ると、人並みをかき分けて130センチほどの幼い女の子がうんしょうんしょとこちらにやってきていた。笑うとえくぼがかわいい、金髪の美幼女だ。
胸につけた名札にはぴかぴかと『鹿角フェフ』と書いてある。
「フェフさんもお呼ばれしていたんだね」
「うん! 知り合いが見つかってよかったよー」
ここは神山荘。披露宴やパーティーでおなじみの大きな会場だ。
本日はヒナプロジェクトが主催で『小説家になろうXmasパーティー』が行われているのであった。
「すごいたくさんの人が参加しているよねー」
「受付で名簿を配っていたよ。281人だって」
そういえばその紙はもらったままポケットに折りたたんでいたのだった。あとであとがきにでも書いておこうと作家は思った。なんのことかわからないが。
「なんかてれんさんもいっぱいいたよ」
「どういうことなの」
「コスプレ、かな……。他にも猫とかペンギンとか大根とかハンバーグとかいたよ」
「マジでどういうことなの」
見渡せば、まともな格好をしている人は全体の三分の一ぐらいだ。残りはコスプレイヤーだろうか。作家はテーブルの上に置いてあった桜餅に『桜餅』と名札がかかっているのを見て、複雑そうな顔をした。深く考えたら負けだと思った。
「まあクリスマスイブだし、いいんじゃないかな、こういうのもー」
「そうだね」
フェフの言葉に作家はうなずく。ハロウィンの仮装パーティーのようなものだ。サンタの格好をした人や、ゾンビの格好をした人に紛れて、どう見ても本物にしか思えないゴリラが前を通り過ぎてゆく。仮装……? 仮装とは。まあいいか。作家は考えることを放棄した。
「こんな風にみんなでワイワイガヤガヤとするクリスマスも楽しいね、フェフさん」
「うんっ」
作家は穏やかに微笑む。いつも締め切りに追われている日常だが、きょうばかりはなにもしなくてもいいんだ。不幸なんてひとつも起こらない。そんな日があっても構わないだろう。
フェフがそれじゃあちょっと聖女を燃やしてくるねと言って場を離れていったので、作家はその場にぽつんと佇んでいた。ライトアップされたパーティー会場で賑やかな人々を眺めていると、心の中がぽかぽかとしてくる。小説家になろうもこんなパーティーを開けるほどに有名になったという事実は、作家にとって少し感慨深いものだった。
マスク姿のレスラーが身長3メートルの巨体をもつ男を、レスラー界に勧誘する声が熱心な聞こえてくる。きょうはお祭り騒ぎだ。作家はすべてを忘れて楽しむことにした。
そのときである。
ぴんぽんぱんぽん、とアナウンスが鳴った。
ヒナプロジェクト運営の声だ。本日来れなかった方を悼む言葉であった。
『超天才策士系腹黒美少女アリスちゃんはあまりにも筋力がなさすぎて、招待状を受け取った途端に腕が肩から千切れて落ちてそのまま大量出血と心身性ショックでお亡くなりました』
ホラーかよ。
『スジオモテ カリユキはあまりにも運がなさすぎて、一才の時点で全身が自然発火してそのままお亡くなりになりました』
こわい。
『もょもとは知能が低すぎて呼吸する方法がわからず、へその緒が切られた時点でお亡くなりなられていました』
どうやって招待状を送ったのだろう。
『ているはあまりにも運がなさすぎて、家庭実習の時間に誤ってクラス全員から包丁で串刺しにされてお亡くなりになりました』
いったいなにが。
作家はその時点でなんとなくピンと来た。そうかこれは人間未満の能力値を与えられた者がたどり着いた哀れな運命なのだ、と。
日常的に人間らしい生活をするためには最低限の能力で0が必要だったのだろう。いったいどういうことかはわからないが。
『じゃすてぃすは微妙に運が足りなかったために、普通に車に轢かれて会場にたどり着くことができませんでした』
微妙に。
『俺は頭が悪すぎて服を着ることができず、冬の日に凍死をしていました』
していました。
『ぺぺぺは頭が悪くひどく虚弱で運もなかったために、気がついたらお亡くなりになっていました』
気がついたら……?
『クトゥルフは知能が低く運もなかったため、患部をひっかきすぎて肉をえぐり取ってしまってお亡くなりになりました』
邪神っぽい名前なのに。
『ヒラタは全キャラクター中ダントツでもっとも運がなかったので、ふいの事故でアカシックレコードから存在を抹消されて未来永劫誰もその名を覚えていられることはできないでしょう』
さらばヒラタ。
『経験値は運がなく死にました』
『へんじがないただのしかばねは運がなく死んでいました』
『以上、11名の末路にお悔やみ申し上げます』
すると皆が黙祷を捧げる。作家もそれに習った。とてつもなくシュールな空間だった。
すぐに喧噪が戻る。11名が死んだというのに少しも暗くならない辺り、さすがクリスマスイブといったところか。とんでもねえ話だ。
とりあえず作家はせっかくのクリスマスだしチキンとケーキを食べようと思い、お皿をもってふらふらと料理が並んでいるテーブルへとやってきた。するとテーブルの上に『アンダーヘア』と書かれた名札とそれっぽいものがあったので、作家は給仕の人を呼んでそれを処分してもらった。
チキンとケーキをゲットして席でもぐもぐしているそのときだった。
バーンッ! と会場のドアが開け放たれる。そこにはひとりの男が頭から血を流しながら、息を荒げて立っていた。一瞬だけ会場の声が途切れる。男は叫んだ。
「──大変だ! ゾンビ! 外に、大量のゾンビがいる! みんな早く逃げるんだ!」
……。
しばしの間のあと、会場はどっと笑いに包まれた。クリスマスイブの趣向としてはなかなか面白いハプニングである。
作家もその男をぼーっと眺めながら、演技がリアルだなあ、と思っていたのだった。
だがしかし男の言葉は嘘ではなかったと、皆はすぐに知ることになる。
惨劇は聖夜に音もなく忍び寄っていたのだった……。
参加者一覧(敬称略)
ツーダ
よるつき
大西Kenji
アシヤー
だるます
エーク
きごう
カンナ
あかとな
けもりあ
ハルナ
一一
ハブ
ギルバート
+ -
夢幻聖眼
和菓子
シャット
ナナミネ
ウニみちなが
サクゴ
中吉
ゾンビJ
マイカ
カリオス
アカツキ
ロボトミー
しろてん
にごりの旨み
タマ
鯉
sho
へいほー
ATM
麻呂
アキバコ
サーボ
ゆま
ヒレ
ルルシィール
鮪
エドヴァルド
一郎
ブリキノ・バケツ
目抜き通り
さち子
たけし
なる夫
暗黒騎士
超天才策士系腹黒美少女アリスちゃん
黒井
山田さん
お兄ちゃん
ファンキー
女騎士
ふんたー
カーネル
てぃっぴー
竹パンダ
もすげん
じじい
スジオモテ カリユキ
木原ゆう
久限
ハンバーグ
クリソン
メリーさん
湊
闇夜
うぃんこす
ガーネット
トリ
りゅうぞうじー
永瀬
りょうご
ゾンビ
ひよの(偽名)
たんぽぽ
笹食ってる場合っしょ!
左慈
マッド・コーモン
ペンギンレイム
ゴルゴンゾーラ三世
マリシャス
ぶりゃ
ベネディクト・カンバーバッチ
名無し
トレイさん
クリストファー・ネイビス
のすおのすのす
ぼっちゃり
ごもちゃん
忠犬
久山修二
レンナ
クリス
めがあるせうす
じょぉじ
もかちゃん
さっちゃん
阿倍野 金蔵
雨乃 時雨
うすしお
存媚 堕胃吸欺 (ぞんび だいすき)
ローミオー
酔っぱらい
死亡不乱君
うどん
乾 巧
みかみてれん
サンタ
あかり
ノーヘル
うどん
ダイスケ
グリーン・カイザー
なるみ
ブルー
ヌイグル
マルヤキーナ=ターキー
現実 充
あゆきさ
あしぇ
三多さん
るりっち
レルブ
黒くて硬い脳筋マン
城嶋孝宏
望月さん
あんじゅ
デス・ノボリ
スノウ
イリスちゃん
ミーーナ
ミルドレッド
ヒナー
とっと小太郎
ミナギ
無色
七海 奈々
ユラハ
ことちゃん
熊野
ヒルデンブルグ
たまま
一羽の兎
やったね!
ぷりん
あき
教授
とーよ
黒男
アベックトースト
マッシブーン
ふうとくん
駒澤真一
さつまあげ
さとうゆきこ(仮名 2歳11ヶ月)
佐竹義重
さとし
もょもと
怒裏流
模歩 模斧雄
あっつぁん
荻久保倉巳
もやし
太もやし
すみれ
火喰 烏
ている
ミツネ
クロノ
ぎん
じゃすてぃすかめん
不破 真一
カンテラ
アンダーヘア
皐月晴
ゴリラ
佐藤
ゆかち
俺
ひかり
キョド子
ラルル
ブヒブヒと餌を貪るだけの豚
晩飯はキーマカレー
タウコウトカ
餅巾着
から
茶瓶
さすらいの登山家
佐藤悟
白兎
篠ノ井 糸菓
柴生 富良具
雛君332号
ぽこ西
なん
心之硝子
えくぼ
ゆか
金星
イリス
犬山犬太郎
とかげ
ゴゴルナ
アレン
じいちゃん
三太
鳥頭
色白大根
もち
ぬでぬで
ぺぺぺ
シャーリー
メリー
ジロウちゃん
模部 伽羅
ASHIO
松坂 牛男
クトゥルフ
あしあ
仏陀
球磨さん
マキラ
藤井ヒナ
タウコウトカ
ルノー
にわとり
メアリー
マール
数多の雪
桜餅
壮士
ナイト
ラグナ
ゆうの
怠惰なるもの
チョココロネ
ヒラタ
ポチ
赤浦兎 (あかうらうさぎ)
まけぐみ
おばちゃん
松永久秀
ゴリラ・ゴリラ・ゴゴリラ
鷺 千糸
田奈 奏多
アキラ
経験値
三田 十字
へんじがないただのしかばね
RAIN
あすか
ティー
千堂
みかみ ででん!
ぺぺ
JIRO
マスティ
キー坊
ghjgf
相沢
ゆぞ
ゴオマ
ぬきつねこ
るーね
魔王
鯖
並木塩
ティカ
紫苑
グリコ
早生
さっちん
はずれ
桂林怜夜
モニブド
ヒダカ
カイト