表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

1:レイジス・ギルイット―Laygis―

 その国が滅んだのは必然であったのだろうか。それとも理不尽という名の偶然であったのだろうか。少年は暗闇で長年考え続けてきた。

 少年の世界は輝かしいものであった。決して全てが善であるような世界ではなかったが、彼はその国に満足していた。全てと繋がる光の国、貿易国センチェス。彼はその国の第四皇子。不幸がなければ王になれないという境遇ながら、彼はその国の在り方に満足し、そして自分の手でもっと繋がろうと夢を見ていた。

 しかし夢は霧散する。突如、貿易国として繋がり、同盟を組んでいた四国からの襲撃が開始されたのだ。理由は解らない。突如襲われ、地獄のような世界の中、生き残った少年達はその理由を求め続けた。静まり崩れた廃墟となった国を想い、少年は冷静な思考で襲撃された理由を探る。

 四国にとってセンチェスは必要な国であった。何故なら、対となる国と貿易をするにはセンチェスのような中継国が必要不可欠だからだ。それをみすみすと犠牲にしてまでもセンチェスを滅ぼす理由は何であろうか。しかもあまり仲が良くないとされるはずの四国が同時に行ったのだ。

 センチェスが原因であるのは迷うことなく理解できる。しかし、その理由へ手を伸ばすにはあまりにも無謀ではないか。文献を探ろうとも、当時のそのような文献は少年達の手にはなかった。あるのは、センチェスが生まれる前に存在した旧国家、闇の国ディーツの一部資料のみだ。

 そう、闇の国ディーツはセンチェスの地下に存在していた。どうしてなのかは不明だが、その名前の由縁が物語っている。センチェスが誕生する前に存在した国なのであろう。少年がセンチェスにいた頃には知らなかったディーツという国。その謎も気にはなるが、今はそうは言ってられなかった。


「兄様。起きてますか?」

「ん、イルニスか」


 少年は覚醒する。ベッドの上に跨るように、もしくは馬乗りするように自分を見つめている少女は少年の妹――というよりは異父妹のイルニスであった。暗闇でもその黒髪は美しく、短く整えられた髪型は可愛さに加え、良からぬ妖しさも感じられる。加えて、清楚であり知性を感じられるが、身から溢れる淫靡な雰囲気が、背徳感を覚えさせられる。

 イルニスは淫魔と天使の娘である。父親譲りのその美貌と母親譲りの可憐さ、加えて淫魔特有の色気が混ざり合っており、ディーツに在住している者たちの中ではトップクラスの人気を誇る。ファンクラブもあるらしく、兄としては複雑な心境であるが可愛いのは事実なので了承していた。


「起きてましたか。寝ていたら襲っていましたのに」

「……寝起きで襲われると、さすがに俺でも厳しいな」


 その姿こそ清楚であるが、中身は淫魔そのものであるイルニスの言葉に少年は肩をすくめた。彼女とは過去に何度もキスなどをさせられていたが、最近はそうすることを控えている。何せ、イルニスも年頃。自分以外の男を作ってもおかしくない時期だからだ。そこに兄である自分が介入しては、相手に悪い。

 イルニスを押しのけ、ベッドからゆっくりと腰を上げた。ディーツは日の光が入らない。そのため、頼れるのは元北の国の住人である、クレインが量産させた機械時計である。壁にかけてあるそれを見て、正午前であることが理解できた。


「昨日は遅かったのですか?」

「あぁ。バロローグの爺さんが酒盛りをしてな。まったく。一番潰れるのが早いのは爺さんだというのに」


 剣の師匠である快活な爺の酒好きに悪態をつきながら少年は立ち上がった。自制したので頭に痛みは残っていない。気怠さが残っているが、一日を過ごすには丁度いい気怠さだ。


「なるほど。道理で騎士の皆さんが少ないわけです」

「まぁ、訓練後だったからな。それで、敬愛するべき兄を起こしてどうしたんだ?」


 少年が茶化しながらイルニスに問いかける。イルニスが起こしに来るのは多くはない。あるとしたらレイジスに従者への愚痴を言いに来るか、それとも何か異常があるからか。今、このディーツに在住する住民のリーダーはレイジスであるのだから、イルニスは報告しにくるわけだ。

 イルニスは先程までのじゃれ付く猫のような惚けた表情を潜め、このディーツを率いる少年の秘書の表情をした。


「朝方、ディーツ探検隊がある部屋を見つけたそうです」

「これまでにもよくあることだったろう? それとも何かあったのか?」

「あった、というよりはいた、というべきでしょうか。えぇ、いました。一人の少女が」


 それは少年の目を細めるには十分な事であった。何故なら、ディーツを探検する部隊を送り出してこれまで成果を出すことは少なかったからだ。ディーツは謎が深い。だから調査を七年前からしていたのだが、得られたのは僅かな文献だけであった。あれから十年経つため、引き上げ時と感じていた少年だったが、ここにきて大きな異常に出会ったのだ。


「来てください、レイジス兄様。彼女はまだあの部屋にいるのです」

「解った。外で待て。すぐ着替える」


 レイジスと呼ばれた少年はそう言ってイルニスを部屋から出す。そして来ている服を脱ぎ捨て、レイジスが皆の前で立つ普段着に着替える。羽織る黒いローブは、彼の父が残した死神のローブで、特殊な魔法を宿している。

 くすんだ金髪を整えるため、鏡を見る。眠気は覚めていた。水で顔を洗い、そしてよし、と意気込む。酒気も消え去っていた。

 外に出て、待っていたイルニスに従い、彼はその異常の元へ赴くのだった。

【ゲーム的ユニットデータ】

ユニット名:レイジス・ギルイット

属性:闇、光

職業:新センチェス軍隊長、全体指揮官、小隊長、ストライカー(攻撃担当)

種族:天使、死神

武器:フェルヴェス(長剣)、ガエスタ(鎧)

基本性能(基準を100とする)

体力:120 攻撃力:125

防御力:75 機動力:130

知力:115 魔力:100


説明:理想を求める死神の剣士。天性の統制力と磨かれた剣術、新たに得た力を武器に世界へ復讐を目論む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ