女王様の話
今日は私の可愛い可愛い妹の優理についてお話するわね。
優理の事をご存知かしら?
私の妹でとてもふわふわした、これぞ女の子って感じの可愛い子よ。
もちろん可愛いのは見た目だけじゃない。
天然で素直で純粋な子よ。どう?興味はもってくれたかしら。ぜひお近づきになりたいんじゃない?
どうぞアプローチしてみなさいな。きっと上手くいくわよ。
…止めないのか、ですって?もちろん、そんなことはしないわよ。
むしろ応援してるわ。
だってあの子、いまだに決まった相手がいないのよ?少し心配になるわ。
大丈夫。あなたくらいの容姿なら、きっと優理をおとせるに違いないから。
アドバイス?そうね…あの子はロマンチックな子だから、王子様みたいに接してあげたら?
優しくて、穏やかな王子様を演じてごらんなさい。
そうすれば、ぐっと確率は高くなるわよ。ええ、きっと。
…そう、もう行くのね。頑張って。何か悩みがあれば遠慮なく相談してね。
でも気をつけて。あの子は純粋であるがゆえの残酷さももっているから。
どういう意味かは実際にあの子を見て、自分で考えて。
それじゃあ、またね。
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「良いのかい?あの男をあんなに焚き付けて」
「構わないわ。きっと優理はあれに惚れる」
「あれとは酷いな。あの男がかわいそうだ」
「あら。あなたに比べたら他の男なんてみーんなあれで十分よ。ねえ、クリス?」
「おや、これは嬉しいことを言ってくれるな」
美華と話していた男が立ち去った後現れたのは、白人の美丈夫だった。
草食系より肉食系、背は高く、体も程よく鍛えられている。
何よりも、十人中十人が振り返るような美形だ。もちろんその点に関して言えば、隣にいる美華も負けてはいないが。
その男…クリスは美華をエスコートしながら更に会話を続ける。
「しかし、あれで何人目だい?妹のためとはいえ、君自ら他の男に近づくのはあまり褒められないな」
「しょうがないじゃない。可愛い妹の頼みだもの」
「本当にそれだけ?あんな男を焚き付けたところで結局君の虜になるだけじゃないか」
「私の虜になってもらわなきゃ困るのよ」
「…それは、どういう意味?ねえ美華」
剣呑な表情になったクリスは迎えに来させた車に美華を乗せる。
それに対して美華は余裕そうな顔だ。
そもそも何故クリスが美華の下僕を認めているのかというと、それなりの事情があるのである。
クリスは非常に多忙で、いつも世界中を飛び回っている。
もちろん毎日連絡はとっているが、今日だって実際に会うのは10ヶ月ぶりだ。
クリスは自分が離れている間に美華が不自由しないよう、危険な目に合わないよう、下僕たちを従えることを認めているのである。
金持ちなら誰かを雇えばいいって?それではダメなのだ。
仕事上の関係なら何か間違いが起こってしまうかもしれない。
それならば、美華に惚れ込んでいる男の方が、美華が嫌がるようなことをしないのは明白だ。
それ故、クリスは認めざるを得ないのである。
「ふふ、嫉妬?安心して。私はクリスしか見ていないから」
「…じゃあ、さっきのはどういう意味なんだい?」
「実はね、優理の王子様はもういるのよ。本人が気づいていないだけで」
「つまり、次々男をけしかけるのは…自覚させるため?」
「正解!王子様っていうのは優理の幼馴染のことなんだけどね、すごくアプローチしてるのに全然気づいてもらえないの」
「それはかわいそうに」
「でしょう?小さい頃から一緒にいるせいで、優理はその子の事を異性だと意識してないみたい」
「なるほど。美華が焚き付けていたのはあの男ではなくて優理の幼馴染なんだね」
「そういうこと。誤解は解けたかしら?」
「もちろん」
そのあとは、美華がクリスに甘えクリスがこれでもかというほど甘やかす、いつもの空間に車内は戻っていた。
「ねえクリス、今日は泊まってもいいでしょう?」
「ああ、もちろんだとも。しばらくは帰さないから覚悟して」
「うん。ありがと」