女王様とお姫様
思いつきと勢いだけで書きました(笑)
どうか付き合ってやってくださいm(__)m
あるところに、とても仲の良い姉妹がいました。
姉の美華は大学3年生、妹の優理は大学1年生です。
美華は真っ直ぐな黒髪を綺麗に伸ばしている涼やかな女性。
優理は栗色のふわふわとした髪のお人形みたいな愛らしい女性。
この二人は近隣ではその美しさでとても有名でした。
そして、その二人は優理の家の玄関先でいわゆる修羅場というものを演じていました。
優理の彼氏だったはずのヒロ君が、美華と並んで頭を下げています。
「ごめん、優理。でも俺、美華さんのことが好きなんだ!」
「……そう。お姉ちゃんなら仕方ないな。だってお姉ちゃん、とても素敵だもの」
「優理ごめんね。ちゃんとヒロキのこと、幸せにするから」
「約束だよ?お姉ちゃん」
「ええ、絶対」
このやりとり何度目だろう、と美華は思いました。
また姉の下僕が増えるのか、と優理は思いました。
そう。姉の美華には下僕や召使という言葉がしっくりくるような愛人が世界中にたくさんいるのです。
その愛人たちも、その状況を知りつつも姉を愛しているのだから尚更たちが悪い。
優理もやろうと思えばできるのですがするつもりはありません。
優理が欲しいのはたくさんの従順な下僕ではなく、たった一人の王子様なのですから。
「ヒロキ、優理と二人きりで話したいから今日は帰ってもらってもいいかしら」
「ああ、分かった」
「いいこね」
もう優理にとっては姉が命令口調なのも上から目線なのも当たり前です。
きっと反抗すればすぐに捨てられてしまうことをヒロ君は分かっているのでしょう。とても従順です。
だって美華は『女王様』ですから。
そして優理は唯一の王子様を待つ『お姫様』なのです。
「優理、そんなに落ち込まないの」
「…だって、また違ったんだもの」
「仕方がないじゃない。ほら、優理の好きなケーキ買ってきたから一緒に食べましょう?」
「ありがと、お姉ちゃん」
私の王子様はどこにいるんだろう、と優理はまた落ち込みます。
美華はまた一人増えたわ、と喜ぶと同時に、優理に笑ってほしいと焦ります。
そうです。美華は優理の王子様を探すのを手伝っているのです。
自分の誘惑に1か月ともたなかった軟弱男に妹を渡す気はさらさらありません。
2人の約束はこうです。
「優理の彼氏が3か月間美華に落ちなければ、その男こそ優理だけを想ってくれる王子様だ」と。
そして、
「その3か月間は、優理からは何もしてはいけない」とも。
当たり前です。己の意志だけで美華の誘惑を跳ね除けることができなければ意味がないのですから。
美華の名誉のために言っておきますと、これは優理からもちかけたものです。
だって美華は優理から取らなくても下僕などいくらでも増やせるのですからね。
だから、これはれっきとした優理のための優理による試練なのです。
もちろん、その試練を乗り越えた男はいないのですけれど。
「ん~おいしい!!お姉ちゃんありがとう!」
「どういたしまして。元気出た?」
「うん!また手伝ってね!!」
そしてまた、優理の王子様候補が品定めされるのです。
その男の行く末は、優理の王子様か美華の下僕か…どちらにせよ男にとっては幸せなのですから、選ばれることは幸運かもしれませんね。