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理Ⅲ①~東大受験

中高6年一貫進学校から最難関・理Ⅲ(医学部)を受験する。


祖父・父と医者ではあるが"非東大"である


孫の代で東大医学部が誕生をするのは医系家族悲願成就でもあった。

キィーンコォーン~


「さて皆さん時間が来ました。解答をやめてください」


試験官が答案用紙を裏返すよう指示を出す。


受験生らは書き上げた答案を眺めてホッとする。


"東大に理Ⅲ(医学部)に合格するぞっ"中高一貫6年を振り返った。


その東大合格への"意気込みは凄かった。


ふぅ~一息つく。


"合格だ。ケアレスミスがない限り晴れて東大生になれる"


ざわざわ


「(答案は完璧だ)東大に合格したぞ」


受験生は心地よい脱力を感じる。長い長い中高6年の受験生活とおさらばである。


試験官は張のある声で伝えた。


「ハイッお待たせしました。答案はすべて回収しました。退席されて結構です」

受験生はサアッ~と移動する。


「(入試)終わった~」


中高6年一貫校のすべてを東大受験にだけ費やした受験生。


「ケアレスミスで(理Ⅲを落ちた)また来年なんてことは金輪際ごめんなさいだぜ」


理Ⅲ(医学部医学科)受験の名が印字される教室を再度眺めた。


「東大数学は解き方さえマスターすればあっけないっものさ。理Ⅲだから特別な難問題揃いとも思えない」

受験生は得意な数学を終え顔を赤らめた。口では安心を言うも答案は"あやふやさ"があった。


苦手な東大英語(英作文)は不安感ばかり。長文読解は校内模試の方が難しく感じた。


英文法など細かい設問の至るところ受験生の落とし穴"トラップ"が仕掛け四苦八苦。


「得意な物理は"得点源"だ」


まずまずの出来栄え大票田な数学を思い返す。


「(他の)受験生と得点差がつくことを祈ります」


理Ⅲ特有"難解東大物理"は引っ掛けもなんのその。満点に近い得点。


東大化学は学校の教材のおかげ。


理Ⅲの合否(分岐点)は6.5割~7割じゃあないか


いかな大学も5割余の正解で合格する。東大で6割も取れば安全に合格圏内となる。


同級生同士は互いの手応えから合格ボーダーラインを予測してみる。他の理系や文系は5割ちょっとで合否ラインと予備校は判断している。


「慶大医や慈恵医より数学は難しい。70点もいらない」


理Ⅲ受験は優等生。併願で"滑り止め医大"はたいてい合格している。


最悪は"滑り止め医学部"にいける身分ゆえ余裕綽々である。


東大受験が終われば中高一貫校の6年の労をねぎらいたい。


「あとは喜びの合格発表を待つだけ。今から遊ぶだろうなあっ」


定員100人(理Ⅲ)に毎年5~10人前後合格を輩出する進学校。


受験競争真っ只中の進学校が覇を競い理Ⅲという狭き門に狙いを定める。


ひとつの高校からの合格者。毎年コンスタントに10~15人合格を理Ⅲに輩出は受験競争の勝者として脅威的な数字である。


いずれの進学校合格者は中1入学からトップ(学年の1割キープ)を保ち一度たりともトップクラスを落ちることなく一貫6年を走っている。


「我が校というと」


東大合格実績は当然である。


「理Ⅲトップ合格数がステータス。この線だけは譲れない」


学内で最難関な理Ⅲ(医)の合格ラインに到達しない生徒には進学指導は問答無用である。


理工学部や農学部に志願変更を余儀なくされていく。

医(理Ⅲ)受験から見たら大変な都落ち。


ともすれば…


劣等感に苛まれてしまう。

また生徒の父兄の大半は医師である。


医師以外には大学教授や弁護士・税理士・経営コンサルタント。


知的職オンパレードの父兄がこの進学校のPTAだった。


成り上がり政治家や苦節成功の社長と社会的地位が鈴なりである。


中高一貫6年は学費と学習塾にエンゼル係数が高められている。


我が家の大切なお坊っちゃんは勉強に次ぐお勉強。


これでもかっと机に向かいめきめきと医学部合格の学力をつけていく。


日本最高峰(最難関)たる理Ⅲへ現役合格!


または


有名大(医)へ進学せんである。


「明日から家族と欧州旅行です。理Ⅲの合格発表までロンドンとパリで過ごします」


理Ⅲ受験生は私大医学部合格し入学手続きは済ます。

ゆえに…


受験者の父親や祖父と同じ医師への道は開けている。

担当教師は羨ましいなあっと口を開けた。


「合格のご褒美は欧州かあっ~」


世界史のハプスブルク家やローマ帝国の遺跡を訪ねてくる。


「うんうん海外ならよいだろ。日本で破目を外さなければ高校生の悪いニュースにはならないだろう」


医者にさえなってしまえば

…海外旅行だろうが


…長期バカンスだろうが


裕福な人生になるであろう

「しがないサラリーマン高校教師から見たら医者の稼ぎとは"雲泥の差"だけどなあ」


中年教師が薄給な身分の愚痴を溢しても埒はあかない。


進学校のトップクラスに在籍した"医者の大切なお坊っちゃん"たち


合格発表日までが楽しみである。2週間後に理Ⅲの発表が待つのである。



長く辛い受験生活の集大成が理Ⅲ受験だった。


校内や予備校の模試は常に理Ⅲは合格A判定


合格を確信し本郷の会場をあとにする。

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