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神宮葉月の命令を聞けっ!  作者: 幽々
俺と彼女の関係とは
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葉山歌音奮闘記 【4】

『ごめん。 調子乗った』


電話口から聞こえてくるのは、そんな神宮じんぐうさんの声。 自覚があったのなら良しとしてやろう。 特別だ、特別。


「んで、何よこんな時間に。 明日学校あるの分かってんの?」


現在の時刻は日付を跨いで30分ほど経過したくらい。 ただでさえ遅刻常習犯だというのに、こんな時間まで起きているだなんて。


『大丈夫。 2時からアニメ』


「いやそれ全然大丈夫じゃないから」


この子、進級する気があるのだろうか。 もしかして延々高校1年生を続ける気じゃないよね? 可能性がありそうで怖い。


『実は、葉山はやまにお願いがある』


「私に? 珍しいわね、神宮さんから頼みだなんて」


無いわけでは無いが、珍しい。 大抵のことなら、それこそ八乙女やおとめ君の存在のおかげで、解決して貰っているし。


あー、ってことは、そういうことか? それなら確かに、八乙女君では無く私に頼んできたのにも納得が出来る。


『……裕哉ゆうやのこと。 実は、少し悩んでる』


「ああ、八乙女君と気まずくてどうしようって話?」


私が言うと、通話が切れる。 図星だと通話が切られるとかどれだけよ。 面倒臭すぎて何だか面白くなってきたんだけど。


そして、私はリダイヤル。 先程1回掛け直してるので。


『もしもし』


「あんたいきなり電話切るとか舐めてんの? 先に掛けてきたのそっちでしょーが」


『でも、掛け直したのは葉山』


「いやそうだけど」


『私の勝ち』


「ああそう、じゃあ寝るわ。 おやすみ」


『待って、ごめんなさい』


「……はいはい」


八乙女君の気分が少し、分かるなぁ。 こうやって素直になられた一瞬のあれが、物凄くグッと来る物がある。 普段がクソ生意気なだけに、余計にね。 これがギャップ萌えって奴なのかな?


『さっき、葉山が言ったこと。 当たってる』


「でしょうね。 で、私にそれを言ってどうするのよ」


『葉山なら詳しいと思った。 葉山は美人』


「ん……んむ」


『葉山は頭が良い』


「……ふんむ」


『それにビッチ』


「もうそんな褒めないで……って何でそうなんのよッ!! あんたマジで明日会ったら覚えときなさいよ!?」


ヘッドロックしてやろう。 泣くまで絶対に止めない。 むしろ気を失うまで止めない。 頭にきたッ!!


『そんな葉山に、お願い』


「聞くだけね。 何?」


『好かれる方法が知りたい』


……これはまた、随分なストレートを放ってきた物だ。 八乙女君がこの話を聞いたら、一体どんな顔をするのかに興味が湧いてくる……けど、抑えないと。 さすがにこれは、黙って置かなければいけないこと。 それくらいは、いくら私でも分かる。


しっかし、好かれる方法ねぇ。 そんなの自分で考えろって言いたくなるけど、まぁ実践して駄目だったから、私のところへと相談が飛んできたのだろう。


何だか、最近相談されまくりな私だが、もういっそのこと、もうひと肌くらいなら脱いでやっても良いか。 ここまで来たら、逆にどれだけやってやれるか試したくなるって物だ。


「よし、分かったわ。 なら明日、放課後は予定を開けておきなさい。 近くのファミレスで作戦会議よ」


『了解』


そして、今日のところは通話は終わりだ。 明日も学校があるしね。


そう思って、神宮さんに「それじゃあおやすみ」と言い、電話を切ろうとした時だ。


『……葉山』


「ん? まだなんかあんの?」


『ありがとう』


「……別に、お礼なんて良いっての」


やっぱり、神宮さんは強力なギャップ萌えという物を持っている。 私も気を付けなければ、惚れてしまいそうだ。 恐るべき、神宮葉月はづき




「よーし、しっかり約束は忘れていなかったみたいね。 八乙女君は?」


「裕哉には、今日は用事があるって言っておいた」


次の日。 私と神宮さんは予定通り、放課後に近くのファミレスで落ち合った。 神宮さんが八乙女君にした言い方ならば、万が一この場面を見られても問題は無いだろう。 ただ、私と一緒にお喋りをしていただけということにしてしまえば、完璧。


一つだけ危惧があった私だけど、こうして神宮さんが来てくれたことによって、それも消える。 私が唯一危惧していたことは、神宮さんが約束を忘れてファミレスにやって来ない、ということ。


一番ありそうで、一番やられたらウザいことだ。 だってこの寒い中、ファミレスの前で延々と待たされるなんて、我慢ならないし。


「それで、葉山」


「わーかってるわよ。 私に任せなさい、神宮さん」


「うん」


それから私達はファミレスの中へと入る。 二人共席に付き、私も神宮さんもとりあえずは飲み物を注文した。 私はホットコーヒーで、神宮さんはアイスティー。


まずは、今日するべきこと。 私と神宮さんが始めに話し合うべき内容だ。 それはズバリ、どうやって八乙女君の好感度を高めるか。


「やり方は色々あるわ。 神宮さん的には、どんな風な関係が良いの? まずはそれを確認したいんだけど」


「えっと。 とりあえず、話したい」


「うんじゃあお話すれば?」


「出来ない」


……ですよね。 それが出来ないから、今こうやって私のところに相談が来ているわけだしね。


それにしても、神宮さんも随分素直になったなぁ。 それほどまでに、八乙女君のことが好きってことなんだろうけど。


「なら、こうしましょ。 今の時期と、神宮さんと八乙女君の関係を考えるの。 んで、その時すべき方法を考えて。 良い? 今は12月よ、12月。 何が思い浮かぶ?」


「えっと、時期? 今は12月だから……何?」


「いやいや、さすがに分かってよ。 12月と言ったら、カップルが一年で一番楽しみにするべき時でしょ? 何と言っても、クリスマスが控えているんだからっ!!」


「クリスマス。 そう」


うわぁ、興味無さそうな顔だなぁ。 そういうのには普通「あっ!! そう言えば!!」だとか「さすが歌音うたね様!!」ってなる物でしょうが。


「はいじゃあ神宮さん、クリスマスと言えば?」


「私の誕生日」


「ああそうだったんだ……おめでとう」


「ありがとう」


って、そうじゃないそうじゃない。 もっと違う超大事なことがあるでしょうが!!


「はいハズレ。 もっと良く考えてよ。 他にもあるでしょ?」


「知ってる。 クリスマスプレゼント」


お、何だ何だ。 分かってるじゃん。 それをもっと早く言えって。 面倒臭い奴だなぁ。 そりゃ神宮さんの誕生日も大切だけどね。 でも、今はそういう話では無いでしょ。


「そ。 んで、それをクリスマスにあげるのよ、サプライズ的にね。 そうすれば大抵の男子なんてイチコロよ。 いつもみたいに首をすこーし傾げながら「プレゼントあげる」とでも言って渡せば良いのよ。 オーケー?」


「葉山、プレゼントあげる」


神宮さんは言いながら、首を傾げながら、私にさっきテーブルを拭いて丸めて置いてある紙ナプキンを手渡す。


「やった、ありがとう……って何でよ!? いらないわよこんなもん!!」


「いたっ」


私が投げつけたそれは、見事に神宮さんの額へと命中。 ナイスコントロール。


仰け反ったのに合わせるように、長い黒髪がふわっと宙を舞う。 良いなぁ、そんな綺麗な髪で。 ツヤツヤでサラッサラじゃない……めちゃくちゃ触ってみたいんですけどそれ。


「けど、大抵じゃなくて良い」


「ん?」


ええっと、何だ急に。 考えろ考えろ……ああ無理。 分からない。


「裕哉だけで良い。 イチコロにするのは」


「……ふうん」


なるほどね、さっきの私の発言に対してだったか。 にしても惚気てくれちゃって。 でもその言葉を聞いて、それが分かった今なら、何だかやる気に満ち溢れてきてしまう。 良いじゃん良いじゃん、八乙女君が喜びそうなプレゼントを考えてやろう。


「あ、そう言えばさ。 八乙女君が貰ったら嬉しくなる物ってなんなの?」


「それが分かれば苦労しない」


予想していた答えだけど、改めて言われると、お互いに何も知らない関係なんだなと実感。 八乙女君も八乙女君で、神宮さんのことをあまり理解していなかったし……。


本当にこの二人の将来が心配だ。 今は良いかもしれないが、この先ずっとこうは行かないだろう。


それは多分、二人の為にもならないはずだ。 二人とも譲り合っちゃう部分があるから、尚更だ。 そうやってずっと、二人は仲が良さそうに見えて、一線を引き続けていたのかもしれない。


今は12月の中旬辺り。 クリスマスまでは、まだ2週間ほどの時間がある。 作戦を練る時間は充分。 ええっと、八乙女君に頼まれている件もあるし……神宮さんに今日頼まれた件もあるから……なんかやること盛り沢山だな!! でもよし、私を舐めるな。 これでも一応、長年の間、優等生と言われてきた私だ。 こういうお悩み相談だって、今回が初めてというわけでも無い。 まぁここまでのバカップルの相手は初めてだが。


「んじゃ、とりあえず今からデパートいこっか。 何かしら分かるかもしれないしね」


「今から?」


「そうよ、善は急げって言うでしょ?」


「了解」


目的地は近くのデパート。 まずはそこに行き、二人で話し合って目星を付ける。 最終的にそのプレゼントを決めるのは神宮さんだけど、それに協力してあげようってこと。


この時の私は知らなかったのだ。 八乙女裕哉と神宮葉月。 この二人がどれだけ気が合うのかを全く以て。


神宮さんのプレゼントをなんとか決めて、何故かいつの間にかそれに加わっていた天羽さんと、三人で喜びを分かち合った丁度次の日。 八乙女君が私の元を訪ねて「なぁ、葉月の喜びそうなプレゼントって何か分かるか?」と言ってきたのだ。


まぁ、その相談にも乗ってあげた優しい私の話は、一旦ここらで終わりにしよう。 もしも機会があれば、その時に私がどれだけ苦労をしたのか聞いて貰うとして。


私、葉山歌音の奮闘記はこれにて終了だ。

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