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蜂蜜製造機弐号  作者: 酒田青
高校二年生 一学期
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渚と篠原

 わたしは篠原と一緒に購買部前で話をしていた。岸と渚を待っているのだ。わたしたちは遊園地での気分を表に出さないようにしていた。わたしはべたべたしたい気持ちを抑え、総一郎に何でもない話をした。

「遅いねえ」

 わたしが言うと、篠原はにっと笑った。

「二人でしゃべってたからほっといてやったんだ。もう少しかかるかも」

「そうなんだ。岸は渚のこと好きだもんね」

「あ、気づいてた?」

「気づくよ。渚のこと初めから知ってたし、渚に対してはでれでれじゃん」

 篠原は軽く声を出して笑った。わたしも笑う。

「渚、岸のこと好きになると思う?」

「どうかな? そういうのは町田のほうがわかるんじゃないか?」

「どうかな。渚とはそういう話しないからな」

「そう」

 篠原は微笑んだ。わたしは急に照れくさい気分になって、二組のほうに身を乗り出した。すると、渚が二組から飛び出してきた。続いて岸。二人ともお弁当の包みを持っている。「お待たせ」と言いながら、渚はにっこり笑って椅子に座った。岸も続く。

「岸と話してたら面白くてさー」

「何の話してたの?」

「剣道部の裏話とか、岸の失敗談だとか」

「聞きたいな」

 篠原が身を乗り出した。岸がそうはいくものかと不敵な笑みを作る。そこに渚が「あのね」と話し出し、岸が慌てて遮った。わたしたちは笑う。

「模試、篠原は県で二位だったんだって」

 渚が唇を尖らせてわたしに言った。そういえば、わたしのクラスでも昼休みの最初に田中先生が結果の用紙を配っていたのだ。わたしはやはり少し成績が下がっていた。篠原が羨ましい。渚は無念そうだ。

「あたしは理系科目ではいくつか一位取ったけど、文系科目で足を引っ張られて総合が酷いよ」

「だからちゃんと勉強しろって言ったのに」

 篠原は飄々としたものだ。これが県二位の余裕だろうか。

「おれも教えてあげてもいいんだけど」

 岸がおずおずと言う。渚はにっこり笑って、

「じゃあ、今度土日の午後辺りに教えて。午後は部活ないでしょ」

 と言った。岸の表情がみるみる輝き出す。わかりやすいなあ、と思う。渚は握り拳を作り、篠原を見る。

「成績を上げて、篠原を超えてやるんだから」

「え、おれ?」

 篠原がびっくりしたように烏龍茶のパックのストローから口を離した。渚は、そうだよ、と胸を張る。

「じゃあ、やってみなよ」

 篠原は笑った。渚が、うわ、ムカつく、と声を上げた。

「絶対いつか超えるからね」

「うん。待ってる」

 篠原は余裕しゃくしゃくの顔だ。渚は怒ったふりをしたあと、篠原と白熱したやりとりを始めた。わたしと岸は顔を見合わせ、また二人を見た。

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