表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜂蜜製造機弐号  作者: 酒田青
高校二年生 一学期
49/156

模試の日

 今日は日曜日だけれど、模試があるのでまた学校だ。県で実施される簡単な模試なので、わたしは割と気楽に受けることができた。まだ二年生の初めだからか、わたしは模試に対して警戒心がない。

 昼になり、模試の前半が終わった。わたしはいつものように居心地のよくない教室を飛び出し、購買部の前に行く。案の定三人はそこでわたしを待っていた。早速テーブルに着いてお弁当を広げる。外は曇っていて、気分が晴れるような空ではない。

「模試、どんな感じ?」

 わたしが篠原に訊くと、「まあまあ」と返ってきた。篠原は気がかりそうに尋ねる。

「町田たちの勉強はどうなの? 進んでる?」

 わたしと渚は顔を見合わせた。あれから渚は毎日家に来るが、勉強する素振りさえ見せない。

「やってない。だって渚が漫画ばっかり読んでるんだもん」

「ほんとに?」

「うん」

「わかった!」

 渚が慌てたように声を上げた。三人で彼女に注目する。彼女は名案があると言わんばかりに人差し指を立てていた。

「四人で勉強しようよ。そしたら頑張る」

「四人? どこで?」

 と岸が訊く。わたしが岸に答える。

「うちでやろうよ。近いし」

「町田の家?」

 篠原が驚いたように言う。そういえば篠原は家に来たことがない。でも、岸や渚と一緒なら両親に咎められることはないだろうし、いいと思う。

「明日、うちで勉強しようよ。渚とわたしの成績のためにさ」

「明日は部活あるし、無理だな」

 と岸。そういえば、岸は放課後忙しかった。わたしは篠原に向き直る。

「じゃあ、篠原だけでもおいでよ」

「えーっと」

「おいでよ」

「……わかった。行く」

 決まった。わたしはにっこり笑い、おにぎりをぱくっと食べた。遠慮がちな篠原がうちに来るなんてことは全然なかったので、とても楽しみだ。


     *


 次の日の放課後になると、わたしは篠原たちの教室に向かった。中に入ると、岸とばったり会った。彼はにやにや笑い、

「篠原、めちゃくちゃ緊張してる」

 とささやいた。篠原のほうを見ると、緊張したときに見せる強ばった顔でわたしたちのほうを向き、立ち上がろうとしていた。岸はそれを見て楽しそうに笑い、

「今日行ってみたかったなあ。篠原が町田の家でがちがちに固まってるところを見たかった」

 と言った。わたしは声を上げて笑う。篠原が近づいてきた。岸は慌てて、じゃね、部活だから、と言い残して去っていった。

「あいつ、また何か余計なこと言っただろ」

 篠原が気がかりそうに岸の行った方向を見て言った。わたしは首を振り、篠原と一緒に渚を待った。彼女は担任と話をしていて、どうやら叱られている様子だ。しゅんとしている。

「町田の家って、すごくかわいいんだって?」

 篠原が訊く。わたしはにっこり笑い、

「渚が言ってた? 普通の家だよ」

 と答える。篠原は考え込み、

「町田って、大事に育てられてきたんだろうなあって感じがするよ。おれなんかが家に行ったら、ご両親は気にしないかな」

 とつぶやく。わたしはけらけら笑う。

「気にしすぎ! 渚がいるから大丈夫だって。一応友達ってことにするから話合わせてね」

「友達かあ」

 篠原がちょっと寂しそうな目をする。わたしだって彼のことを恋人だと言いたいけれど、両親、特に父の様子を見ると、まだまだ言えないと思う。

 渚が話を終えてわたしたちのところに来た。疲れきった顔だ。

「課題、最近出してないから怒られちゃったよ」

「漫画ばっかり読むからだよ」

 篠原が呆れたように言うと、渚は唇を突き出し、まあそうなんだけど、とつぶやいて、どうやら図星のようだ。

「じゃあ、行こっか」

 渚がわたしの背中を廊下に向かって押した。わたしたち三人は階段を降り、岸の話をしたり先生たちの批評をしたりながら学校を出て、わたしの家に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ