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蜂蜜製造機弐号  作者: 酒田青
高校二年生 三学期
109/156

片桐さんと王先輩とレイカ

 拓人と片桐さんは、よく一緒に歩いている。廊下で話し込んでいるときもあれば、片桐さんが拓人の肩を叩いて大笑いしているときもある。とても仲がいい。片桐さんは、以前より自信を持っているように思える。わたしに対しても、以前のようにとげとげしくない。

「片桐さん、おはよう」

 教室に片桐さんがいたので挨拶をすると、笑って「おはよう」と返してくれた。それから拓人のほうを見て、

「町田さんに話していい?」

 とくすくす笑う。拓人が「いいよ」と笑うと、彼女は、

「あのね、拓人がね」

 と話し出す。彼女と拓人の距離が近づいたことを喜びながら、わたしは聞いた。陽気な拓人が話した内容を楽しそうに語る彼女は、とても生き生きしていた。

「町田さん、アドレス交換しない?」

 話を終えてから、片桐さんが突然こう言った。わたしは驚きながらもうなずく。アドレスを交換しながら、わたしは彼女の上品で透き通った声や顔に垂れた髪をかきあげる仕草のかわいらしさは、天性の魅力だなと思っていた。

「町田さんとは友達になりたいって思ったの」

「本当?」

 嬉しく思いながら訊くと、彼女はうなずいた。

「ふわふわしてて、悪意がないところがいいと思うんだ」

 悪意がない、か。以前は恐らくそう感じていなかったのだろう。それに、正体不明の悪意の主にメールを送りつけられた身としては、悪意がないことは友達の最重要条件なのだろうと思う。携帯電話がバイブレーションで鳴ったので、画面に触れてメールを見た。片桐さんからのもので、「またあのメールが来たよ。でも大丈夫!」と書いてあった。わたしは彼女を頼もしく思いながら、複雑な気分になる。あのメールの主を、知っていると思うからだ。

 どうすればいいのだろう。考えながら歩いていると、窓の向こうの棟に王先輩の姿が見えた。相変わらず自信満々に友達と話をしていた。どきりとしながらそちらを凝視していると、レイカにぶつかった。レイカは「気をつけろよ」と悪態をついて、自分の席に座った。

「あの態度、ないよね」

 光がわたしを慰める。わたしは色々なことで頭を悩ませていたので、レイカのことだけが問題なのではなかったのだけれど。

 わたしは、またお節介をするのかどうか、悩んだ。

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