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さよなら!?

行く場所が無い、何もすることが無い。

太郎は今、学校で楽しく過ごしているだろう。宮城とも仲直りしているだろう。

俺は雨に打たれながらいつもの河川敷へと向かっていた。さて、俺はこれから死ぬわけだが、どうやって死のう?これから川は台風によって増水してくる。それに飲まれてみようか。一人の俺が死んで、一人の俺は生きている。それでいいんだ、何もかも。


いよいよ雨は強くなってきた。川の流れが強くなってきて、飲まれたらもう戻っては来れないという程だった。さて、俺はゆっくりと腰を上げ、堤防に足をかけた。


「雨がひどくなってきたね」


俺は足を止めた。太郎か?


「こんな所で何やってんの?早く帰ろう」


太郎は学校の鞄を背負っていなかった。家には一旦帰ったと伺える。そうだとすれば、おそらくパソコンを開き遺書の内容を確認できただろう。だからこの河川敷に来れたのか。


「いや、先に帰っててくれ」


俺にはもう覚悟ができている。今更太郎が来たからといって、計画を変えるつもりはない。雷が鳴ってきた。台風もいよいよ本番だなと思った。


「準太郎に会ってからいろいろあって楽しかったなぁ〜」


太郎は陽気に話しているが、内容はまるで俺が死ぬことに対して言ってないか?


その時だった。轟音が鳴り響く。となりにあった大木に雷が落ちた。とてつもない音と共に大木は炎を巻き上げ、丁度俺と太郎のいる場所へと倒れ込んできた。俺はその轟音と目の前で起きている出来事に驚き、気を失った。辺りは、まばゆい光で俺と太郎を包み込んだ。







——————どれくらい経っただろうか。

しばらく気を失っていた俺は目を覚ました。周りを見渡すと雨で炎が消された大木と、土で汚れた太郎がぐったりしているのが見えた。その瞬間、俺はある事を思い出した。大木が倒れてきた時に太郎は俺を突き飛ばしたんだ。太郎のおかげで俺はかすり傷程度だったが、・・・俺は太郎の元へといそいで駆け寄った。


「おい!太郎!目ぇ開けろよ」


太郎はまだぐったりして動かなかった。俺は心の中で、生きていてくれと叫んでいた。


「うっ・・・」


太郎が目を覚ました。


「大丈夫かよ!?何でかばった!俺は死のうとしていた人間なのに」


「はは・・・、死のうとしてたのに何で泣いてんの?」


俺は気づくと太郎が生きててくれたという喜びに目が涙で溢れていた。太郎はそこら中傷だらけだった。そして太郎の周りは光っていて、今にも消えそうになっていた。


「どうやら僕は、準太郎の命を救う事ができたみたいだ。恩返しができて向こうの世界に帰る事ができる」


「やめろよ!まだ帰んないでくれ!!」


「死ぬ訳じゃないんだ。心配しないで。僕は向こうの世界で生きている」


光は辺りを包み、太郎は光の粒になって浮かび上がっていた。


「ありがとう。今まで楽しかった・・・」


俺はさよならをしたい訳じゃなかったけれど、言った。


「俺も楽しかった!!お前のおかげで変われたよ、俺。ありがとう!」


そして、太郎は空に消えてなくなった。

台風は過ぎ、空にはきれいな夜空が広がっていた。


俺は太郎が救ったこの命を捨てはしない。これから強く生きていく——————。

次回、最終回です!!

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