第一話 深夜一時、既読なし
はじめまして。
夜になると少しだけ本音が言える人たちの話です。
返信を待ってしまう夜とか、
送ろうとして消したメッセージとか、
そういう静かな恋愛をかけたらいいなと思います。
よろしくお願いします。
深夜一時。
部屋の電気を消してから三十分が経っても、
眠気は来なかった。
スマホの白い光だけが、暗い部屋に浮いている。
通知はない。
クラスのグループLINEも、とっくに止まっていた。
湊はベッドに寝転んだまま、小さく息を吐く。
「......寝れねぇ」
呟いて、いつもの匿名SNSを開いた。
誰でもいいか、少しだけ誰かの声を
見たかった。
タイムラインを流し見ていると、一つの投稿
が目に止まる。
『学校って、なんでこんなに疲れるんだろ』
短い文章。
でも妙に目に残った。
湊は少し迷ってから、返信欄を開く。
こういうのに反応するのは、なんとなく
気まずい。
けれど、指は勝手に動いていた。
『分かる』
送信。
たった三文字。
なのに送ったあと、少しだけ緊張した。
数秒後。
『だよね』
返信が来る。
早い。
その瞬間、少しだけ嬉しいと思ってしまった。
『学校嫌い?』
『嫌いっていうか、疲れる』
『それは分かる』
『通知とかもしんどい』
その一文に、湊の指が止まる。
自分と同じだと思った。
通知音が鳴るだけで、心臓が少し重くなる。
既読をつけるタイミングを考えてしまう。
返信が遅いと嫌われる気がする。
そんなことを考えている自分が、たまに面倒
だった。
『通知が怖いのは分かる』
送ると、相手は少しだけ返信を止めた。
画面には「入力中...」が浮かんでは消える。
しばらくして。
『初めて言われた、それ』
湊は少しだけ笑った。
顔を知らない相手なのに、変な感じだった。
『同類かもね』
『かもね』
相手の名前は、”雨”。
アイコンは、夜のコンビニみたいな写真だった。
それから二人は、少しずつ話した。
好きな音楽。
夜更かし。
コンビニのレモン炭酸。
学校が苦手なこと。
気づけば、一時間経っていた。
『もう二時じゃん』
『ほんとだ』
『寝ないとまずい』
『でも眠くない』
『それな』
湊は暗い天井を見る。
誰かとこんなに話したの、いつぶりだろうと
思った。
『じゃあ、おやすみ』
送ろうとして、指が止まる。
少しだけ終わってほしくなかった。
すると先に、
『また明日』
と、”雨”から送られてきた。
その文字を見た瞬間。
少しだけ、明日がマシになる気がした。
翌日。
教室はいつも通りうるさかった。
朝の空気は苦手だ。
誰かの笑い声が、やけに頭に響く。
湊は自分の席に座りながら、眠そうに目を擦る。
「湊、昨日絶対夜更かししただろ」
「......まぁ」
「またゲーム?」
「違う」
適当に返してスマホを見る。
通知は来ていない。
少しだけ気になってしまう自分が嫌いだった。
その時。
教室の前の扉が開く。
「......おはよう」
小さな声。
朝比奈 雫だった。
長い黒髪。
眠そう目。
クラスでもあまり喋らない女子。
雫は静かに席へ向かう。
その途中。
スマホを開いて、小さく画面を見た。
次の瞬間。
湊のスマホが震える。
『眠い』
”雨”からの通知。
湊は一瞬だけ顔を上げた。
前の席に座った雫が、ちょうどスマホを閉じる。
ただ、それだけ。
偶然。
そんなの、偶然に決まってる。
なのに。
なぜか少しだけ、心臓がうるさかった。
読んでくださってありがとうございます。
たぶんこの二人、かなり遠回りします。
でも少しずつ、
夜だけ近づいていく話をかけたらと思います。
感想もらえたらめちゃくちゃ嬉しいです。




